米最高裁判事の妻 、州議員らに「選挙結果覆し」働きかけ

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クラレンス・トーマス最高裁判所判事の妻で、議事堂襲撃事件にとつながった1月6日の「ストップ・ザ・スティール」に参加していたバージニア・“ジニ”・トーマス氏が、接戦州のアリゾナに加えてウィスコンシン州の議員らにも選挙結果を覆すよう、働きかけていたことがわかった。夫トーマス判事に対して、議事堂襲撃事件に関する訴訟の審理参加の辞退を求める声が高まりそうだ。

バージニア氏をめぐっては、大統領選の投票が終わった2020年11月以降、各州が選挙人による公式投票準備を進めていた12月にかけ、アリゾナ州の州議会議員ら計29人にメールを送り、バイデン氏勝利の結果を差し置いて同州代表の選挙人を独自に“選出”するよう要求したとが報じられていた。

今月1日のワシントンポスト紙の報道によると、バージニア氏はウィスコンシン州議会の共和党議員少なくとも2人にも、大統領選結果を“否認”する取り組みを促すメールを送っていたことが新たに判明した。

メールは、主要メディアがバイデン氏勝利の確定を伝えた2日後の2020年11月9日、上院で選挙管理委員長を務めるキャシー・ベルニエ議員と、同下院のゲリー・トーチェン議員に送られており、この中で「メディアと政治的圧圧力に強く立ち向かってください」「憲法によって与えられたすばらしい権限について、よく考え、州のためにクリーンな選挙人団が選ばれることを確かなものとしてほしい」と、アリゾナ同様の呼びかけをしていた。

米大統領選は、仕組み上は、国民が投票によって選んでいるのは、各党の指名を受け、あらかじめその候補者を選ぶと約束した選挙人団で、選ばれた選挙人らが12月に自分の州に集まり、大統領を選出する。この結果は連邦議会に送られ、1月に承認手続きが行われるが、トランプ支持者らは、この手続きを阻止しようとして議事堂に押し入った。バージニア氏の提案は、議会が選挙人を独自に選出する権限を有すると示唆したものだが、アリゾナでもウィスコンシンでも、一般投票結果を無視した選挙人を選ぶことは違法とされている。

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Qアノンに心酔?

バージニア氏の関与はこれに止まらない。今年3月、2020年11月から12月にかけて、当時大統領主席補佐官だったマーク・メドウズ氏に20件を超えるテキストメッセージを送っていたことが判明。この中で、選挙結果を覆す取り組みを支持し、戦略を助言するなどしていたほか、Qアノン信奉者らの主張そのものと一致する内容もあった。

また、議事堂襲撃事件をめぐり、司法省や下院の特別委員会の調査対象となっている弁護士ジョン・イーストマン氏とも、選挙後に連絡を取り合っており、草の根活動グループと称する「フロントライナーズ・フォー・リバティ」と呼ぶ団体にスピーカーとして招いていたことも判明している。会合の内容は明らかにされていないが、下院特別委員会は「メディアが確定したバイデン勝利を覆す立法措置」が議題にあったとしている。

特別委員会は6月、バージニア氏に任意で証言を求めたが、代理人のマーク・パオレッタ氏は、証言に応じる「十分な根拠」がないとして、拒否したという。ポスト紙が入手した書簡によると、パオレッタ氏は、メドウズ首席補佐官に送ったメッセージはまったく注目に値せず、議事堂襲撃事件への関与を示すものではないとしたほか、イーストマン氏の招待は、考えに支持を表明したり、仕事上の繋がりを示すものではないと主張しているという。

バージニア氏の一連の活動は、夫トーマス判事の非難に発展している。特別委員会の調査が、トランプ氏の刑事責任追及に発展する可能性もあるなか、民主党からは辞任論や、議事堂襲撃事件関連の審理から身を引くべきといった声が上がっている。

なお、トランプ氏が、特別委員会への資料提出の阻止を求めて起こした訴訟で、最高裁は今年1月、トランプ氏側の訴えを退けたが、唯一トーマス判事だけがトランプ氏の主張を支持したと伝えられている。