地球の内核は逆回転しているかもしれない

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Nature Geoscience」のオンライン版に、1月23日付で、北京大学の研究チームの興味深い研究成果が公開された。地球の内核のマントルと異なる独自の回転が停止し、逆回転している可能性もあるというのだ。これまで、内核はマントルよりも少し早く独自に回転していると考えられてきた。

地球の内部は4つの層に分かれている。地殻、マントル、外核、内核だ。

地殻は、薄いところでは厚さ6kmほど、厚いところでも厚さ40kmほどしかない。地球の半径が6400kmほどだから、まさに薄い殻といった感じだ。

地殻の下には、マントルがあり、地下2900kmほどまで続いている。マントルは、固体で、岩石でできている。

マントルの下には、外核があり、地下5100kmほどまで続いている。外核は、鉄やニッケルを主成分する金属でできているが、溶けて液体の状態になっている。この溶けた外核が対流を起こすことで地磁気が発生すると考えられている。

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そして、外核の下、地球の中心には内核がある。内核は、鉄とニッケルを主成分とする金属でできているが、すでに冷えて固まっている。

この内核ももちろん自転しているが、その回転は、外核やマントルの回転に、外核の磁気やマントルの引力を通じて、影響されている。外核の磁気を通じた影響は内核の回転を加速させ、マントルの引力を通じた影響は内核の回転を減速させる。

ところで、固体の内核と固体のマントルの間には溶けて液体の状態になった外核が挟まっている。そのため、2つの力のバランスの加減によっては、内核がマントルと異なる独自の回転をすることがありうる。

研究チームは、1990年代の初頭に遡って地震波を詳しく分析した。地震波は、内核を通り抜けてくるために、これを分析することで、内核の回転について、推測することができる。

もし、内核がマントルと同期して一緒に回転しているのならば、震源が同じならば、地震波は、いつも内核の同じ場所を通り抜けてくるために、内核を通り抜けるために、いつも同じ時間がかかるはずだ。

しかし、これまでの実際の観測結果では、数年から数十年の単位で、震源が同じでも、地震波が内核を通り抜けるためにかかる時間は変化してきた。これは、内核がマントルと異なる独自の回転しているために、地震波が通り抜ける内核の場所が変わるためだ。

しかし、研究チームの分析の結果、ここ10年間、地震波が内核を通り抜けるためにかかる時間はほとんど変化していないという。

このことから、研究チームは、ここ10年間、内核のマントルと異なる独自の回転が停止し、逆回転している可能性もあると結論付けた。

ただ、内核のマントルと異なる独自の回転が停止しているといってもそう心配する必要はない。

南カリフォルニア大学の地球物理学者ジョン・ヴィデール氏は、ワシントンポスト紙に「おそらく問題は起きないでしょう。もちろん地球の奥深いところで私達の理解を超えたことが起こっていることは嫌ですが」と、コメントしている。

(翻訳・執筆/飯銅重幸)