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アンドゥリル、原潜の部品製造に参入 66億ドルの新工場、米海軍は「成果払い」

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トランプ大統領は10月6日、米メリーランド州ボルチモア郡スパローズポイントで、防衛テック企業Anduril Industries(アンドゥリル・インダストリーズ)による潜水艦部品の製造拠点「Arsenal-2」の建設を発表した。

Andurilは37億ドル(約5,800億円、1ドル157円換算)の民間資本を投じて生産能力を構築する。米海軍は、実証された生産成果に応じて最大29億ドル(約4,550億円)を支払う。民間資本と政府資金を合わせると、潜水艦産業基盤への投資規模は最大66億ドル(約1兆400億円)となる。

Andurilは、自律型兵器、ドローン、軍事用ソフトウェアで知られる新興の防衛テック企業だ。今回の大型投資は、同社が防衛テックの枠を超え、政府の調達方針の転換を追い風に、これまで大手プライム企業が中心だった防衛製造の中核領域へ進出していることを示す。

契約の内容

Arsenal-2が製造するのは、バージニア級攻撃型原子力潜水艦の構成部品と大型ブロックだ。製品はジェネラル・ダイナミクス(NYSE: GD)傘下のElectric Boatと、ハンティントン・インガルズ・インダストリーズ(NYSE: HII)傘下のNewport News Shipbuildingに納められ、両社が最終組立を担う。

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延床面積は200万平方フィート超、敷地は187エーカー。直接雇用は3,100人を見込み、2030年に稼働を始める予定だ。

稼働までの間は、カリフォルニア州オレンジ郡に新設する拠点で魚雷発射管などを先行して生産し、製造工程と人材を育てる。

Andurilは声明で、政府による最大29億ドルの支払いは「実際の生産実績に直接連動する」と説明した。

変わる政府の防衛調達・資金の流れ

従来の大型防衛プログラムでは、政府が開発や生産に必要な費用を負担し、企業側のコスト超過リスクの一部を政府が負う契約も多かった。

Arsenal-2はそれとは異なる。

Andurilが民間資本を先に投じて工場と生産体制を築き、海軍は実際の生産成果に対して支払う。生産性、品質、納期、コスト管理といった実行リスクは、まずAnduril側に生じる。政府にとっては、工場が計画どおりに機能するか分からない段階で、巨額の資金を投入する必要がない。

先行例が、3月に発表されたHadrian(ハドリアン)の案件だ。

同社はアラバマ州に潜水艦部品の工場「Factory 4」を開設した。Hadrianが15億ドル超の民間資本を先に投じ、海軍は実証された生産実績を前提に、工場の能力拡大へ9億ドルを拠出する。

ジョン・C・フェラン海軍長官(当時)は、この取引について、海軍に「下振れの保護と上振れへの参加」をもたらす新たな取引だと説明した。「Hadrianの15億ドル超の資本が先に入る。海軍はその後、実証された実績に基づき、工場拡大のために9億ドルを拠出する。われわれは約束ではなく、成果に投資する」と述べている。

つまり海軍は、工場が機能しなかった場合の初期負担を抑えながら、成果が確認されれば追加投資や調達につなげられる。ただし、「上振れへの参加」が株式取得や利益分配を意味するのかなど、具体的な仕組みは公表されていない。

トランプ大統領は今回の演説で、「納税者は新造船所の40%の持分を受け取る」とも述べた。

この「40%」が株式、収益分配権、将来の調達に関する権利のどれを指すのか、あるいは別の概念なのかは確認されていない。英ガーディアン紙も、発言の意味は不明だと報じている。また、執筆時点では、契約そのものも国防総省の契約公示に掲載されていない。仮に文字どおりの持分であれば、政府は資金の出し手にとどまらず、施設の共同所有者にもなりうる。トランプ政権はすでに約30社について、株式の保有や取得を進めている。

「分散型造船」の柱になる

海軍はこうした取り組みを「分散型造船(distributed shipbuilding)」と位置付けている。

潜水艦の建造は従来、コネチカット州、ロードアイランド州、バージニア州などの既存造船所に集中してきた。今回の構想は、部品や大型ブロックの製造を州外の新工場に分散させ、既存のプライム造船所を最終組立に集中させるものだ。

これまでは、最終組立を担うGDやHIIといったプライム企業が中心だった。今後は、外部の新興製造企業が自ら工場を建設し、部品やモジュールを供給する形へと広がる可能性がある。Arsenal-2は、その代表例となる。

なぜ潜水艦か

海軍は7月、GDのElectric Boatにバージニア級9隻分として421億ドル(約6.6兆円)、コロンビア級5隻分として295億ドル(約4.6兆円)を発注した。それでも、建造ペースを引き上げるには生産能力が足りていない。海軍は2031会計年度までに、バージニア級を年2隻のペースで建造することを目指しており、部品の供給源を増やすことが急務になっている。Arsenal-2は、このボトルネックを既存造船所の増強だけで解決するのではなく、外部に新たな製造能力を加えることで和らげる狙いがある。

Andurilの台頭

Andurilは、自社資金で開発した製品を売る「防衛プロダクト企業」を掲げてきた。ラッキー氏は以前のインタビューで、「当社は防衛請負企業というより防衛プロダクト企業だ。契約を引き延ばして稼ぐのではなく、速く動くことで稼ぐ」と語っている。この路線で、同社は契約実績を伸ばしてきた。

今年3月には、陸軍から最大200億ドルの契約を獲得した。CNNによれば、第2次トランプ政権の最初の500日間に同社が獲得した連邦資金は約12億5,000万ドルで、バイデン政権末期の同じ期間の約7億6,000万ドルを大きく上回った。

民間資本の側でも、a16zが共同主導した5月の資金調達で50億ドルを集め、企業価値は610億ドル(約9.6兆円)に達した。

同社が防衛テック企業から大規模な防衛メーカーへと変わりつつある背景には、民間資本の厚みと、政府調達の変化がある。

その方針は、ヘグセス国防長官が2025年11月に打ち出した調達改革とも重なる。同氏は国防調達制度を「戦闘調達システム」へと改め、商業製品を調達の基本とする「商業優先」を掲げた。あわせて、モジュール型オープンシステムを最大限に活用して特定企業への依存(ベンダーロック)を断ち、期限内の納入を評価して遅延には不利益を課すなど、成果に連動したインセンティブを打ち出している。

政治的な近さも無視できない。

Andurilの共同創業者パルマー・ラッキー氏は9月30日、国防総省の将来戦研究「Project Meridian」の共同リーダーに、イーロン・マスク氏らとともに任命された。今回の発表はその約1週間後であり、トランプ大統領はラッキー氏を「友人」と呼んだ。

政権との関係は、短期的には政策支援や受注の追い風になりうる。一方、政権が交代すれば、調達の優先順位や政治的な支持が変わる可能性もある。

今後の注目点

Andurilには、有人潜水艦の製造実績が知られていない。支払いが生産成果に連動する以上、計画どおりに「作れる」かどうかが事業の成否を左右する。

プライム企業(GD・HII)への影響も注目される。両社の潜水艦の受注残は、2030年代まで積み上がっている。外部からの部品供給が増えれば、部品不足や納期遅れのリスクは和らぐ可能性がある。

一方、Andurilの社長兼最高戦略責任者クリス・ブローズ氏は、いずれ船体の非常に大きなセクションまで手がけたいとの考えを示している。長期的には、Andurilは供給業者であると同時に、プライム企業が担ってきた製造工程の一部で競合相手にもなりうる。

Andurilがどこまで製造工程を取り込めるかは、米国の防衛産業がプライム企業中心の構造から、複数の企業が工程を分担する「分散型」へ移行できるかを占う試金石になりそうだ。