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「最高裁は止めない」米弁護士が描くトランプ3期目のシナリオ

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ドナルド・トランプ
©MashupReporter

トランプ大統領が2028年大統領選に出馬し、共和党の候補者に選ばれたら、誰がその立候補を止めるのか――。

民主党系の弁護士・ストラテジストであるドミトリ・メルホーン氏は、トランプ氏が3期目を目指した場合、「止めるのは難しい」との見方を示した。9月29日に配信された米政治番組「デビッド・パクマン・ショー(The David Pakman Show)」に出演し、次のように語った。

「トランプ時代に学んだことの一つは、法は自ら執行されないということだ」

合衆国憲法修正第22条は、「何人も、大統領職に2回を超えて選出されてはならない」と定めている。一般には、この規定がトランプ氏の3期目を阻むと考えられている。 しかし、メルホーン氏が問題視しているのは、条文の存在そのものではない。トランプ氏が共和党の候補者に選ばれた場合、誰が、どの段階で、どのような手続きによって修正第22条を執行するのかという点だ。

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メルホーン氏は、Bloomberg BNAの社長などを経て、LinkedIn共同創業者のリード・ホフマン氏とともに政治投資団体「Investing in US」を共同設立した。現在は「アトール・ソサエティ(Atoll Society)」の共同創設者として、2028年大統領選後の混乱を想定したシミュレーションにも取り組んでいる。

なお、現時点でトランプ氏の3期目出馬が実現する具体的な計画が確認されているわけではない。今回の発言は、あくまでもトランプ氏に批判的な立場を取る一人の弁護士による、政治的・法的な見立てである。

共和党も最高裁も止めない

メルホーン氏が示したシナリオは、次のようなものだ。 2028年の初め、トランプ氏が「この国のために考えた結果、J・D・バンス副大統領やマルコ・ルビオ国務長官では力不足だ。自分が出馬する必要がある」と言い出す。「1期目はロシア疑惑のでっち上げによって本来の任期として数えるべきではない」など適当な理屈をつければ、共和党がトランプ氏の要求を拒否する可能性はほぼないという。

トランプ氏に法的な異議を申し立てることは可能だが、手続きには時間がかかる。メルホーン氏は、共和党の予備選でトランプ氏を打ち負かし、さらに多くの代議員を獲得できる候補者は現れないとみる。

そのため、2028年6月から7月ごろには、トランプ氏が共和党の候補者として確定している可能性がある。

この時点でトランプ氏を不適格と判断すれば、最高裁は結果的に「次の大統領は民主党候補になる」と宣言することになる。メルホーン氏は、現在の最高裁がそのような判断を下すとは考えていない。

同氏の見方では、最高裁は「政治問題だ」「判断は有権者に委ねられている」と主張するだろう。つまり、憲法修正第22条の適用を、裁判所ではなく有権者の判断に委ねるということだ。

さらにメルホーン氏は、政治的に許容される意見の範囲を示す「オーバートンの窓」が急速に動く可能性にも言及した。ニューヨーク・タイムズの記者まで、「修正第22条を執行するのは有権者だ」と論じ始めるような状況を想定している。

もっとも、司会のデビッド・パクマン氏はこのシナリオに懐疑的だ。共和党がトランプ氏の要求にそのまま従うとは考えにくく、最高裁もトランプ氏を不適格と判断する可能性が高いと反論している。

なぜ3期目の議論が続くのか

トランプ氏の3期目をめぐる議論が繰り返し浮上するのは、本人や周辺人物がこの可能性に言及してきたからだ。

元首席戦略官のスティーブ・バノン氏は2025年10月、英エコノミスト誌に対し、「彼は3期目を手にする」と語った。さらに、2026年4月16日に米メディアのSemaforが開催したイベントでも、バンス氏がMAGAの後継者かと問われ、「私はトランプ大統領の3期目を強く支持している」と答えた。

トランプ氏本人も、2025年3月にNBCの取材で、3期目について「冗談ではない」と発言している。今年7月の夕食会には、「Trump 2028」と書かれた帽子をかぶって登場した。 その一方で、8月11日には記者団に対し、「出馬したいが、法律は非常に強い」と述べた。出馬への意欲を示しながら、法的な障壁も認めるという、揺れ動く発言だ。

これらの発言が本格的な出馬計画を示しているのか、それとも支持者を鼓舞するための政治的メッセージなのかは分からない。ただ、トランプ氏が3期目という話題を完全には否定していないことは確かだ。

トランプ氏が退任を望まない理由

メルホーン氏は、トランプ氏が3期目を望む理由として、在任中に政府の力を利用して自身や周囲の人物を刑事責任から守り、同時に大きな利益を得られる点を挙げる。 2029年に退任すれば、その政治的影響力と保護を失うことになる。メルホーン氏は、そこにトランプ氏が政権にとどまり続けようとする動機があるとみている。

トランプ氏の2期目が始まって以降、利益相反をめぐる疑惑も相次いでいる。

米政府倫理局(OGE)が6月に公開した2025年分の資産公開報告書をもとに、ロイターやNYTは、トランプ氏の暗号資産事業からの収入が約14億ドル(約2240億円)に上ると報じた。その中核が、トランプ一家が関わるWorld Liberty Financial(WLF)だ。WSJによれば、2期目就任直前の2025年1月、UAEのタフヌーン国家安全保障顧問が支援する投資会社が、WLFの株式49%を5億ドル(約800億円)で取得した。政権はその後、UAEへの先端AIチップ輸出を承認しており、上院民主党の議員らが公聴会の開催を求めている。一方、ホワイトハウスとWLFは、政策との関連を否定している。

株式取引も問題視されている。ブルームバーグの集計では、トランプ氏の口座は2期目の就任以降、約2万9000件の取引を行い、件数は連邦議会の全議員の合計を上回った。CNNは、トランプ氏が株式を購入した後、20社超についてTruth Socialで好意的に言及していたと報じた。トランプ氏側は、投資判断には関与していないとしている。

トランプ氏は1月、NYTの取材で利益相反について問われ、「誰も気にしていないと分かった。それに、私には許されている」と答えた。

市場はトランプ氏をどう見るか

ただし、予測市場の評価は冷静だ。 予測市場Polymarketでは、10月4日時点で、2028年の共和党大統領候補にトランプ氏が選ばれる確率は約2%にとどまっている。首位はバンス氏の約50%で、ルビオ氏が約15%で続く。 この数字は、トランプ氏が法的に出馬できる確率を示すものではない。あくまで、トランプ氏が共和党の指名候補になると市場参加者が見ている確率だ。市場は現時点で3期目を本命シナリオとは見ていないが、本人の発言や中間選挙の結果次第で、この数字は動きうる。

当面の焦点は、11月3日に予定されている中間選挙だ。 選挙後に共和党の後継者争いが本格化すれば、トランプ氏の3期目をめぐる議論が再び持ち出される場面も出てくるだろう。トランプ氏が自らの影響力を維持するために後継候補を支持するのか、それとも自分自身の再登板を示唆するのかも注目される。