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トランプ関税の成績表 物価は上昇、貿易赤字は拡大、支持率は低下

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トランプ大統領
@MashupReporter

トランプ政権は関税を、国内産業の保護や貿易赤字の削減、米国経済の立て直しにつながる政策として位置づけてきた。

では、2025年から2026年にかけて導入された関税は、物価や貿易収支、そして有権者の評価にどのような変化をもたらしたのか。

1. 物価:関税が対象消費財のインフレを2.9ポイント押し上げた

ニューヨーク連銀は10月6日、2025~26年の関税が消費財価格に与えた影響を分析した研究結果を公表した。研究を行ったのは、NY連銀のメアリー・アミティ、セバスチャン・ハイゼ、デビッド・ワインスタインの3氏。関税の影響を強く受けた品目と、あまり受けなかった品目の値動きを比べ、関税の寄与を取り出した。対象は石油製品を除く67の消費財カテゴリーだ。

結論は「平均関税率が1ポイント上がると、1年後に消費財価格は約0.25%上がる」というもの。関税の引き上げ幅のおよそ4分の1が、最終的に店頭価格に反映される計算になる。

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影響の経路は2つある。

直接効果(全体の約3分の2):輸入品そのものの値上がり。外国の輸出企業は値下げでほとんど吸収せず、関税の約9割が輸入価格に転嫁された。

間接効果(約3分の1):米国製品の値上がり。輸入部品や素材が高くなってコストが増えた分に加え、競合する輸入品が高くなったことで国内メーカーも値上げしやすくなった。前者のコスト増の効果のほうが大きい。

関税の対象ではない米国製品まで値上がりした点が、この研究の重要な指摘だ。

効果の出方には時間差がある。輸入品の値上がりは3カ月で約半分、6カ月ですべてが店頭価格に反映される。一方、米国製品は6~12カ月かけて値上がりが進み、物価への影響が出そろうのは約1年後になる。

ただし、2.9ポイントという数字は消費者物価指数(CPI)全体への影響を示しているわけではない。分析対象は財に限られ、サービスは含まれていない。サービスは米国の消費バスケットの約3分の2を占めるため、2.9ポイントをCPI全体への押し上げ効果と読むことはできない。

なお、ホワイトハウスのテイラー・ロジャーズ報道官はCNBCに宛てた声明で、関税のコストは最終的に米国市場を必要とする外国の輸出企業が負担する、というのが政権の一貫した立場だと述べている。

2. 物価の今後:インフレ率への寄与は消えるが、物価水準は戻らない

NY連銀の推計では、関税による物価水準の押し上げ効果は2026年2月に約3%でピークを付けた。その後、2026年初めの最高裁判決で緊急権限に基づく関税が終わり、より低い10%の上乗せ関税に置き換わったため、押し上げ効果は8月に約2%まで縮小したとみられる。

インフレ率(前年比)への寄与はさらに早く縮む。2月の2.9ポイントをピークに8月ごろにはほぼゼロとなり、その後はマイナスに転じる見通しだ。2025年の大幅な関税引き上げが、前年比の比較対象から外れていくためである。

ただし、物価の水準そのものは関税前より高いまま残る。8月以降は、2026年8月に発動されたカナダ製品への関税と、2027年1月に予定されるカナダ産の自動車・トラック・部品への関税引き上げが効いて、押し上げ効果は再びじわりと増える。前年比の寄与も2027年半ばには小幅なプラスに戻る見込みだ。

要するに、関税が物価上昇率に与える影響は薄れる一方、家計が感じる「モノが高い」という実感は消えない。研究チームも、関税は物価水準を押し上げたまま残し、インフレ率への影響だけが薄れていくとまとめている。

3. 貿易赤字:関税前より大きくなった

米商務省が10月6日に発表した8月の貿易統計では、財・サービスを合わせた貿易赤字は1,056億ドルと、前月から127億ドル拡大した。財の赤字は1,366億ドル。輸入額は4,208億ドルで過去最高を更新し、資本財(機械・設備など)の輸入も1,464億ドルで過去最高だった。

年初からの累計では赤字は前年同期比で約2割縮んでいる。ただしこれは、2025年前半に関税発動前の駆け込み輸入で赤字が膨らんでいた反動の面が大きい。

物価変動の影響を除いた実質ベースでみると、8月の財の貿易赤字は1,147億ドルと、2025年3月以来の高水準となった。値動きの大きい石油製品を除くと1,226億ドルに達する。この水準は2024年のどの月(最大は12月の1,130億ドル)も上回っており、ケイトー研究所のリンシコム氏らは、関税導入前の2022~24年のどの月よりも大きいと指摘している。イランとの戦争に伴う石油輸出の急増で春に一時縮んだ赤字は、すでに元の水準に戻ったという。

同研究所の見解はこうだ。貿易収支は国内外の貯蓄と投資のバランスで決まり、関税で輸入を減らしても、ドル高や報復関税、部材コストの上昇を通じて輸出も減る。そのため、関税だけで赤字を持続的に解消するのは難しいと論じている。

注目すべきは赤字拡大の中身だ。8月は資本財の輸入が前月から62億ドル増え、うち24億ドルが半導体だった。年初からの累計では、半導体の輸入は905億ドルと前年同期の約1.8倍、コンピューターの輸入は2,550億ドルと約2倍に膨らんでいる。国・地域別では、半導体の一大供給地である台湾への赤字が183億ドルと中国(164億ドル)を上回り、メキシコ、ベトナムに次ぐ3番目の大きさとなった。ケイトー研究所は、こうしたAIインフラ向けの輸入拡大を、米国経済の拡大と海外からの投資資金流入の表れとして、むしろ前向きに評価している。

なお、ケイトー研究所は自由貿易を支持する立場のシンクタンクであり、関税政策には一貫して批判的である。

4. 支持率:2期目最低の30%、関税への評価も悪化

米調査機関ピュー・リサーチ・センターが10月8日に公表した世論調査(9月28日~10月4日、成人5,062人)で、トランプ大統領の支持率は30%と2期目の最低を記録した。不支持は68%。1期目の退任直前、2021年1月の29%とほぼ同じ水準だ。

目立つのは足元の支持層の離反である。2024年にトランプ氏に投票した人の支持率は67%で、任期初めの95%から大きく下がった。

経済の評価も厳しい。

  • 景気が「非常に良い・良い」と答えた人は21%(年初は28%)
  • トランプ氏の経済政策で景気が「悪くなった」は65%、「良くなった」は19%
  • 共和党支持層でも「良くなった」39%に対し「悪くなった」35%と拮抗

関税そのものへの評価も下がっている。今後の米国への影響が「おおむねマイナス」と答えた人は56%で、「おおむねプラス」の20%を大きく上回った。共和党支持層で「プラス」と答えた人は40%と、2025年8月の52%から低下している。

経済への不満は関税だけによるものではない。同じ調査では、ガソリン・エネルギー価格を「非常に心配」とする人が74%に達し、イランとの軍事衝突前の1月の43%から急増した。食品・日用品の価格を心配する人も73%にのぼる。関税による物価高に、戦争による燃料高が重なった形だ。

11月の中間選挙を前に、登録有権者の下院投票先は民主党44%、共和党36%と、民主党が8ポイントリードしている。登録有権者の84%が、経済を投票で「非常に重要」な争点に挙げた。

まとめ:関税が残した「戻らない物価」

関税政策の成果を、物価、貿易収支、世論の3つの面から見ると、少なくとも現時点では、政権が掲げた目標の達成は確認しにくい。物価については、NY連銀の研究が、関税によって対象消費財のインフレが2026年2月に2.9ポイント押し上げられたと推計した。貿易赤字も8月には再び拡大し、輸入額と資本財輸入は過去最高を更新した。世論調査では、トランプ氏の支持率が2期目最低となり、関税政策への評価も悪化している。

関税によるインフレ率への寄与は、今後いったん薄れていく。しかし、それは上がった物価水準が元に戻ることを意味しない。2027年1月にはカナダ産自動車などへの関税引き上げも控える。11月の中間選挙で、有権者が物価高を含む経済の現状をどう評価するか。そこに、関税政策の次の成績表が表れる。