米国防総省が新たに組織した助言機関の構成メンバーが注目を集めている。
組織名は国防政策委員会(DPB)と呼ばれ、国防長官、副長官、政策担当次官に対し、戦略、戦力構成、地域防衛政策などについて独立した助言を行う機関と位置付けられる。
政策を決定する権限は持たない諮問委員会であるが、その構成メンバーによって政策は左右されうる。2003年のイラク侵攻前、当時のリチャード・パール委員長のもとで、DPBは開戦論の推進役として機能したとされる。同年の調査では、30人の委員のうち少なくとも9人が、2001〜2002年に総額760億ドルを超える国防契約を得ていた企業と関係していたことが判明した。
パール氏自身は2003年3月27日、委員長を辞任している。通信大手グローバル・クロッシングから報酬を受け、同社資産の香港企業への売却をめぐって、国防総省やFBIの反対を覆すよう働きかける契約を結んでいたことが問題視されたためである。
今回の新メンバーが発表されたのは6月29日。約1年2か月の空白を経て再構成された委員会の委員長には元通商代表のロバート・ライトハイザー氏、副委員長には元上院議員のノーム・コールマン氏が任命された。
際立つのはシリコンバレーのベンチャーキャピタル陣だ。一人はマーク・アンドリーセン氏。シリコンバレー最大級のVCであるアンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)の共同創業者で、同社は自律型兵器や無人システムのメーカーに広く投資している。もう一人はブレイク・マスターズ氏。ピーター・ティール氏の資産運用会社ティール・キャピタルで最高執行責任者を務めた人物だ。ガーディアン紙によれば、マスターズ氏は、ドナルド・トランプ・ジュニア氏がパートナーを務めるベンチャーファンド1789キャピタルの共同創業者オミード・マリク氏が率いる、3つのSPAC(特別買収目的会社)すべてで取締役を務めている。うち2つは保守系ECプラットフォームのPublicSquareを2023年に、オンライン銃器小売のGrabAGunを2025年に上場させ、残る1つは買収先を探索中だという。
パランティア上級顧問、セオ・ウォルド氏の名前も目を惹く。対イラン戦の初週、米軍はパランティアのMavenシステムを使って3,000超の標的を特定・攻撃したとされる。
重なる投資先
ガーディアン紙は、a16zの公開投資先リストと1789キャピタルの既報の保有先を突き合わせ、両者が少なくとも5社で共同出資していると分析している。うち3社が主要な防衛事業を持つ。
いずれも、トランプ政権下で連邦政府から多額の資金を得ている企業だ。
Anduril Industries
a16zは2019年以来の基盤的な出資者で、以降のすべての主要ラウンドを主導または共同主導してきた。2026年5月の50億ドルのラウンドも共同主導し、評価額は610億ドルへと倍増している。その数か月前には、米陸軍が最大200億ドル規模の契約を与えていた。
1789キャピタルは2022年に出資者として参加した。
CNNによれば、同社は第2次トランプ政権の最初の500日間で約12億5,000万ドルの連邦資金を獲得している。バイデン政権末期の同じ期間は約7億6,000万ドルだった。
Hadrian
精密加工部品をつくる自動化工場を運営し、ロッキード・マーティンのミサイル工場内に生産ラインを設置している。a16zの「American Dynamism」部門が「航空宇宙・防衛産業の米国製造業を立て直す」ものとして公に支持を表明し、ロイターは同社を1789の保有先として挙げている。
2026年3月には、原子力潜水艦の部品をつくる3工場の建設という24億ドル規模の計画の一環として、最大9億ドルの米海軍とのパートナーシップを獲得した。同時期に、テキサス州レッドリバー陸軍補給廠の自動化で8,000万ドルの陸軍契約も受けている。
SpaceX
1789のパートナーは、同社をファンド最大の投資先と表現している。
グウィン・ショットウェル社長は、NASA、国防総省、宇宙軍、国家偵察局を通じた累計の連邦発注を約220億ドルとしている。2025年4月に決まった宇宙軍の打ち上げ契約135億ドルでも最大のシェアを得た。
そして6月12日の株式公開を控えた数週間前、ゴールデンドーム構想(ミサイル防衛システム構築計画)向けのミサイル追跡衛星で41億6,000万ドル、軌道上の軍事データ網で22億9,000万ドルの契約を獲得している。
このほか、両ファンドはイーロン・マスク氏のAI企業xAIにも出資している。
なお、a16zの投資先は数千社に及び、防衛分野はその一部にすぎない。また、ここで挙げた契約はいずれも6月の委員会人事より前のものである。
こうした布陣には利益相反を懸念する声も上がっている。
政府監視プロジェクト(POGO)のスコット・エイミー主任法律顧問は、諮問委員会には利益相反が見つかることが多いとしたうえで、こう述べる。
「任命される人の多くは政府の仕事を求めている。しかも、自分が奉仕している当の省庁との取引を求めているのだ」
「だから心配になる。彼らは戸棚を漁り、雇用主や顧客に競争上の優位を与えるためにできる限りのことを学びに来ているのか。それとも、雇用主や顧客に有利になるよう契約を動かそうとしているのか」
アンドリーセン氏に至っては、今年3月に発足した大統領科学技術諮問委員会のメンバーにも選ばれている。VC運用で富を拡大すると同時に、大統領と国防長官の両方の意思決定に影響を及ぼしうる立場を得ているということになる。
非介入派も
これとは別に、新メンバーの構成で非介入主義寄りとみられる人材が一定数起用されている点も興味深い。
保守系知識人誌『Modern Age』編集長のダニエル・マッカーシー氏は、昨年のイランとの12日間戦争について、米国の軍事関与に否定的な見解を示し、「1945年以降に我々が戦った戦争は、そのほぼすべてがリベラルなエリートによる社会実験」と主張している。
クインシー研究所の集計によると、ネオコン外交の是正を掲げるクレアモント研究所の出身者やフェローが4人加わっている。同研究所は外交政策の原則を「現実主義、抑制、敬意」と掲げ、ネオコン(新保守主義)とリベラルな国際主義の双方を明確に否定する立場をとってきた。このうちのマイケル・アントン氏は、国務省政策企画局長を務めた経験のあるシニアフェローで、リベラルな国際主義はもはや米国の利益にかなわないとして外交政策の抑制を主張してきた。
軍事支出で利益を得る側と、対外介入に反対する側が同じ委員会に座る。互いの利害が衝突する時、どのような提言が出されるのか。メンバー間の力学が、調達を含む防衛政策にいかに反映されるのか今後注目される。





