日曜日, 9月 20, 2026
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米国防総省 タングステンメーカーElmetに4.5億ドル出資――拡大する政府のポートフォリオ

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国防総省は9月14日、防衛産業向け重要鉱物メーカーのThe Elmet Group(NASDAQ: ELMT)に4億5,000万ドルの出資を行うと発表した。同日には国防兵站局(DLA)による最大20億ドル規模の調達契約、さらにネバダ州の鉱山再開に絡む1億5,000万~1億7,500万ドルの投資パッケージも重なり、ELMT株は寄り付き前で一時48%上昇、関連銘柄のBlue Moon Metals(BMM)はプレマーケットで一時20%超上昇した。

国防総省はタングステンとモリブデンの供給について、中国がそれぞれ世界の85%、40%を握ると位置付けており、Elmetはこの2つの金属を扱う米国唯一の完全垂直統合メーカーだ。トランプ政権下で進む重要鉱物の国内供給網の確立に向けた取り組みの一環であるとともに、政府が企業の資本構成に関与する最新の事例となる。

合意の中身

出資の枠組みは、国防総省産業基盤政策担当次官室と、傘下の経済防衛ユニット(EDU)が主導する「Industrial Base Analysis and Sustainment」プログラムを通じたもの。4億5,000万ドルは即座に振り込まれるわけではなく、まず2億ドルをクロージング時に、残りを段階的に拠出する。対価として国防総省が受け取るのは、償還可能な優先株式に加え、普通株換算で最大19.9%相当のワラント、独立取締役1名の指名権、さらに議決権のないオブザーバー枠1名分。中国など「制限事業体」による10%以上の株式取得を防ぐ仕組みも同時に導入された。

これとは別枠で、Elmet子会社のElmet TechnologiesはDLAとの間で、国家備蓄向けにタングステン鉱石・濃縮物・タングステン酸ナトリウムを供給する最大20億ドルのIDIQ契約(保証額1億5,000万ドル、2031年8月までの5年契約+2年延長オプション)を締結した。ただし同社は、新規供給能力が実際に立ち上がるまで備蓄への納入を開始しない方針を明言しており、既存メーカーの需給を圧迫しない配慮を見せている。

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なぜ今なのか — Project Vaultという傘

制度的な土台としては、2025年4月のEO14272(重要鉱物の輸入がSection 232に基づき安全保障を脅かすかを調査するよう商務長官に命じた大統領令)と、2026年1月14日の輸入調整に関する布告がある。ただしこれらは即時関税ではなく交渉指示にとどまり、今回の出資を直接規定するものではない。重要なのは、トランプ政権がこの1年、関税とは別の手段——出資という手段——で重要鉱物サプライチェーンを国策として作り上げてきた、という文脈そのものだ。

国防総省は昨年7月、レアアース磁石メーカーのMP Materialsに出資し筆頭株主となった(価格フロアとオフテイク契約を伴う「画期的な取引」と報じられた)。商務省は今年1月26日、新興企業USA Rare Earthへの出資方針を発表し、株価は直後に20%上昇した。同様の手法はLithium Americas(2025年9月)、Trilogy Metals(同10月)でも使われている。

そして2月2日、ホワイトハウスはこれらを束ねる形で「Project Vault」を発表した。輸出入銀行(EXIM Bank)が100億ドルの融資枠を提供し、これに約20億ドルの民間資本を組み合わせる、官民連携の備蓄構想である。USGSの2025年版重要鉱物リスト(50 鉱種)を対象とし、タングステンも含まれる。(モリブデンは、この公式リストには入っていない)。トランプ大統領は発表の場で「特定の鉱物やレアアースだけではない。すべてをやる」と述べた。

この構想の背景には、ダグ・バーガム内務長官が昨年から唱える「備蓄」「主権リスク保険(将来の政権による投資取り消しから守る仕組み)」「出資能力」という要素がある。Elmetへの出資はこのうち「出資」に当たり、DLAとのIDIQ契約は「備蓄」に当たる。9月14日の一連の発表は、この3要素のうち2つを、タングステンという一つの金属について同時に実行した事例と見ることができる。

Elmetとは何者か

Elmetは1929年創業、タングステン・モリブデンを扱う米国唯一の完全垂直統合メーカーで、F-35、パトリオットPAC-3、トライデントD5、バージニア級・コロンビア級潜水艦など100超のプログラムに部材を供給する。2026年4月にIPO(公開価格14ドル、調達額1億2,540万ドル)を実施したばかりの新規上場企業でもある。

直近のQ2決算(8月13日発表)では、売上高は6,640万ドルで、前年同期比35.2%増。会社側の説明では、この伸びの約55%は純粋な需要増によるもので、残り約45%はタングステン・モリブデンの原材料価格上昇分を製品価格に転嫁した効果だという。さらに売上高総利益率は20.7%から25.0%へ430ベーシスポイント改善した。需要増、価格転嫁力、収益性の改善は代替の効かない事業構造の強さを示唆する数字と言える。

調整後EBITDAも前年同期比57.9%増の890万ドルに達し、受注残高は前年同期の8,460万ドルから1億3,150万ドルへ、ほぼ55%増のペースで過去最高を更新した。一方でGAAPベースの純損益は450万ドルの赤字(上半期では483 万ドルの赤字)だが、これはIPOに伴う株式報酬費用が38万ドルから1,073万ドルへ急増した一時的要因が主因で、調整後純利益ベースでは520万ドル(前年同期280万ドル)と伸びている。

株式市場の反応

ELMT株は、国防総省による出資発表前の9月11日(金)終値16.19ドル、出来高14万3,110株という薄商いから一変した。発表当日の9月14日(月)は22.47ドルで寄り付き、高値25.03ドル・安値20.22ドルの間で乱高下した末に21.50ドルで引け、前営業日比32.80%高、出来高は1,402万株と発表前の約98倍に膨らんだ。プレマーケットでは一時48%高まで買われていたことを踏まえると、寄り付き後に上げ幅の3分の1近くを吐き出した計算になる。

関連銘柄のBlue Moon Metals(BMM)は9月14日、9月11日終値5.51ドルに対し6.59ドルで寄り付き(プレマーケットでの21%超高とおおむね整合する)、高値6.74ドルをつけたものの、その後は安値5.60ドルまで売られ、終値は5.68ドルと前日比でわずか3.1%高にとどまった。出来高は9月11日の10万3,900株から222万6,600株へ急増しており、寄り付き直後に利益確定売りが集中した様子がうかがえる。

発表当日の大商いに対し、ELMTは翌日午前の時点で上げ幅を大きく削られている。政府出資という材料への初期反応は強かったものの、それが持続的な買いに転化するかどうかは、まだ見極めがついていない。

今後の注目点

政府出資は、企業の成功を必ずしも約束しない。今回の資金が実際の生産能力として結実するのは早くても2027年第4四半期(Blue MoonのSpringer鉱山再稼働目標)、APTプラントの再稼働目標は2028年後半とされ、株式市場が織り込んだ熱狂と、地面からタングステンが出てくるまでの時間には2年以上の開きがある。Project Vaultという傘の下で同様の出資が今後も他の鉱種・他の企業に広がるとすれば、この「発表と実装の時間差」は繰り返し検証されるべき論点になるだろう。