金曜日, 8月 28, 2026
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ベッセントのイラン制裁「経済D-day」に「エスカレーションの罠」、米教授が警告

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スコット・ベッセント財務長官が始動した新たな対イラン制裁「経済的追放作戦」はさらなる軍事衝突を招く。26日、YouTube番組「Breaking Points」に出演したシカゴ大学の政治学教授ロバート・ペイプ氏は、自身の「エスカレーションの罠」理論に基づきそう予測した。

ベッセント長官は24日、制裁の開始を「経済D-day」と表現。核・ミサイル関連の60超の主体を制裁対象に加え、デジタル資産・金・航空分野にも網を広げる方針を示した。イラン産原油の取引を続ける中国・ロシアへの二次制裁もちらつかせた。

いわゆる「静かな外交」を通じてイランを完全な孤立に追い込み、屈服させる作戦だが、空爆と経済封鎖を30年にわたり研究してきたというペイプ教授はこれを真っ向から否定する。

「ベッセント氏は戦争への代替ルートのように見せているが、実際はまた別のエスカレーション・トラップに過ぎない。むしろ軍事的な戦争をより拡大させることになる」と断じた。

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なお、エスカレーション・トラップは、空爆や限定的な攻撃といった初期段階での戦術的な勝利では広範な戦略的目標を達成できず、結果的に指導者がさらなる強硬策を重ねて紛争を激化させ、事態が制御不能な状態に陥るメカニズムを指す。

制裁だけで勝った戦争はない

教授によると、第一次大戦以降の主要な戦争を見渡しても、経済封鎖や制裁が単独で政府を屈服させた例は一つもない。第一次大戦の対独封鎖、第二次大戦の対日封鎖はいずれも地上戦・原爆投下という結末を迎え、対日封鎖はむしろ真珠湾攻撃という「反撃」の要因となった。湾岸戦争後のイラク制裁は12年間でGDPを毎年48%押し下げながらも屈服させられず、最終的に15万人規模の地上侵攻に至った。イランへの制裁は数十年続いているが成果はなく、ロシアもウクライナ侵攻後の制裁下で戦争を継続している。「この100年余りで、私のモデルに当てはまる例を一つでも挙げられるか。一つもない」と教授は言い切る。

強気の発言と及び腰の実態

もっとも、ベッセント氏自身の発言には矛盾がにじむ。タイムラインは示さず「静かな外交」を進めるとしながらも、「無限の忍耐があるわけではない」と述べるにとどめた。中国の銀行への制裁の可否を問われても名指しを避け、「制裁の射程外にいる者はいない」と一般論で応じた。その一方で「世界の金融システムを爆破したくはない」とも語った。ペイプ教授はこれを、「ちなみに、その計画を実行すれば我々も共倒れになる」と言っているようなものと指摘し、「これは勝利のためのプランには見えない」と皮肉る。

この状況を中国がどうみるか。

教授は「以前から言っていた通り、彼らは単に『はったり』として受け流す、あるいは無視するだろうと思っていたが、実際にそうなった」と述べ、「実際に中国の銀行を締め出すような措置に踏み切れば、中国も何らかの反応を示すだろう。しかし、現時点では、中国はこの動きを自国に対する現実的な脅威とはみなしていない。単なる威嚇に過ぎないと見ている」と続けた。

「最悪のエスカレーション・トラップ」の延長線上

ペイプ教授は以前、対イラン戦について、米国はイラク・アフガニスタン・ベトナムを凌ぐ「史上最悪のエスカレーション・トラップ」にはまり込んでいると評価していた。開戦以来、次々と戦術を切り替えてきた米軍は「戦略的に弱体化」しているとも指摘し、「我々がそもそもこの戦争を戦うべきではなかった」と主張していた。

今回のベッセント長官による制裁強化も、教授の目には同じ罠の延長線上にしか映らない。武力衝突の代わりに「新たな一手」として打ち出されたはずの経済制裁が、軍事衝突を拡大させてしまう。その評価が正しければ、その先にあるのは、地上軍の投入、地域戦争への拡大、そして制御を失った軍事的エスカレーションという悲惨な末路なのかもしれない。