火曜日, 8月 11, 2026
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トランプ政権は「史上最悪エスカレーションの罠」に――米教授、ホルムズ海峡正常化の可能性「中間選挙まで実質ゼロ」

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シカゴ大学の政治学教授ロバート・ペイプ氏の見立てによると、対イラン戦においてアメリカは「エスカレーションの罠」から抜け出せなくなっており、ホルムズ海峡の早期正常化も絶望的だという。

同氏の提唱するエスカレーショントラップは、空爆や限定的な攻撃といった初期段階での戦術的な勝利では広範な戦略的目標を達成できず、結果的に指導者がさらなる強硬策を重ねて紛争を激化させ、事態が制御不能な状態に陥るメカニズムを指す。

トランプ政権は開戦以来、指導者暗殺爆撃、6週間に及ぶ軍事施設への爆撃キャンペーン、海上封鎖と戦術を次々に切り替えてきたが、いずれも戦略的な成功には至っていない。

7日、地政学系YouTuberのCyrus Janssenの番組に出演したペイプ教授は、戦術的成功が戦略的成功までも成し遂げたかのような幻想を生むことこそが罠であるとした上で、「我々はその罠にはまった。他のアメリカ大統領たちもこの罠にはまってきた。例えばプーチンもこの罠にはまった。だが今アメリカがイランとの間で陥っているこの罠は、おそらくアメリカ史上、いや歴史上最も厄介なエスカレーション・トラップだ」と現状を評した。

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さらに、開戦直後にイランがドローンと機雷でホルムズ海峡を実質的に支配したことが、その後の展開を決定づけたと指摘。米国は今、①ホルムズ喪失とイランの地域覇権化を容認するか、②奪還のために戦うか、という「地上兵力のジレンマ」に直面していると語った。

イランによるホルムズ海峡のコントロールは、単なる戦争終結かどうかの問題ではなく、世界政治の力学を根底から変える可能性がある。そうした意味で米国は「戦略的に弱体化」していると指摘。「これはこの戦争がもたらす重大な帰結の一つであり、我々がそもそもこの戦争を戦うべきではなかった理由でもある。これは単なるもう一つのイラクではない。アフガニスタンでもない。もう一つのベトナムですらない。このエスカレーション・トラップはそれよりも悪質で、私が思うにアメリカ史上見てきたどれよりも壊滅的な結果をもたらすだろう」と続けた。

教授によると、「エスカレーション優位を持っているのはアメリカではなく、イラン」であり、トランプがTACO(脅しとその撤回)を繰り返す中で、イランは「抑止に成功した」という自信を深め、生存目的の防衛姿勢から、より野心的な行動へとシフトしている。

イランが突きつけた新要求

この予測を裏付けるように、イラン最高国家安全保障会議(SNSC)のモハンマド・バゲル・ゾルガドル書記(革命防衛隊の元司令官)は8日、ホルムズ海峡は米国が「行動を改める」まで再開しないと表明した。要求内容は、米国による対イラン威嚇の恒久停止、ヒズボラ・ハマス・フーシ派を含む地域代理勢力との戦闘の完全終結、イラン港湾に対する海上封鎖の解除、米軍の同地域からの撤退、2025〜26年の戦争被害への全額補償、対イラン制裁の全廃、凍結資産の無条件解除と、極めて広範にわたる。

これを報じたタイムズ・オブ・イスラエルは、この要求リストが、米国とイランの間で恒久合意を結ぶための条件としてイラン側がかつて提示していたものとほぼ同じ内容だと指摘する。ただし、もともとの恒久合意構想は、イランの核開発計画と60%濃縮ウランの備蓄という脅威を解消することも米側の狙いに含んでいた。ところが今回は、イランがホルムズ海峡の再開に「同意する」だけの合意の条件として、同じ要求が持ち出された形になった。

ちなみにこの発表は、バンス副大統領が「交渉は進展している」とFOXニュースで楽観的に語った、わずか数時間後のことだった。

イスラエル・チャンネル12のワシントン特派員バラク・ラビド氏は、この要求について「米国が到底受け入れられない要求」との見方を示している。

ホルムズ再開、中間選挙までは「実質ゼロ」

ペイプ教授は、ホルムズ正常化の現実的な見通しについても具体的な分析を示す。イランの主力兵器であるシャヘド136ドローン(キングサイズマットレス大、射程500〜1200マイル)は数千〜数万機規模で保有され、海岸沿い500マイル四方(カリフォルニアの1.5倍)のどこからでも発射可能。さらにザグロス山脈(エンパイアステートビルの10倍の高さ)に分散隠匿されているため、捕捉・掃討はほぼ不可能に近い。脅威を無力化するには保有数を200機以下まで削減する必要があるが、それだけでも最低3〜6ヶ月、実質的には解決不能な規模の問題だという。

したがって、中間選挙までにホルムズ海峡が正常化する可能性は「実質ゼロ」というのがペイプ教授の見立てだ。何をもって「正常化」とするかを決めるのは大統領ではなく、実際にリスクを取って航行する商業船社であり、現状は「脱出はできても再入域はほぼない」状態が続いている。

経済・市場への含意、今後の焦点

1991年の湾岸戦争後、米国の圧倒的な軍事的優位が世界貿易の低コスト化(貿易が世界GDPに占める割合は1990年の38%から2020年に62%へ拡大)を支えてきた。ペイプ教授は、今回の戦争はその逆方向、すなわち「米覇権の衰退を決定づける戦争」になりつつあると警告する。貿易コストや保険料の上昇、サプライチェーンの不安定化といった打撃は「まだ本格化していない」段階にすぎない。

焦点は中間選挙だ。ホルムズ再開に進展がなければ世界経済の悪化が続き、場合によっては民主党が上下院を制する展開もあり得る。その場合、1974年に議会がベトナム戦争の予算を打ち切って事実上戦争を終わらせた前例のように、議会が資金統制を通じて終戦に動く可能性がある。イランの新要求は、その分岐点を睨んだ駆け引きと見ることができる。