キャシー・ウッド率いるARK Investが、複数のETFをまたいでAI関連銘柄を大きく入れ替えている。
売っているのは、AIを使ってサービスの価値を高める企業。買っているのは、AIを動かすための計算・通信基盤を提供する企業だ。直近6営業日(8月11日から18日)の売買記録は、約100件に上る。ARK全体のポートフォリオが一変したわけではないものの、短期間の売買として見ると、AI投資の重心がアプリケーション層からインフラ層へ移っている傾向が窺える。
何が売られ、何が買われたか
系統 ネット
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AIインフラ(半導体・クラウド・ネットワーク) +約5,340万ドル(約85億円)
フィンテック +約2,000万ドル
宇宙・産業 +約970万ドル
ゲノム・バイオ −約3,610万ドル
アプリ・消費者向け(ソフト・EC・ゲーム) −約7,070万ドル(約113億円)
※金額はARKの公開記録を本誌が集計。分類は本誌による。1ドル160円で計算。
アプリ・消費者向けの銘柄から約7,000万ドルを引き上げる一方、AIインフラ関連には約5,300万ドルを投じた。
もちろん、これはARK全体の資金がそのままAIインフラに移ったことを意味するわけではない。フィンテックや宇宙関連への買いも含まれている。それでも、AI関連銘柄に限れば、投資の重心が「AIを使う企業」から「AIを動かす企業」へ移ったことは明確だ。
売られた3社はAIを使う側
売却額の大きかった銘柄は、次の3社だった。
銘柄 売り越し額 どんな会社か
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Shopify(SHOP) 約3,470万ドル ネット通販システムの提供
Roblox(RBLX) 約2,250万ドル ゲームプラットフォーム
Palantir(PLTR) 約1,350万ドル データ分析ソフト
いずれもソフトウェアやオンラインサービスを提供する企業である。AIを自社のサービスに組み込み、顧客や利用者に価値を提供する「アプリケーション層」の企業だ。
なかでも、最も大きく売られたのはShopifyだった。ARKの今回の売買を扱った海外記事ではRobloxやPalantirが目立つが、売却額を単純に合計すると、Shopifyが最大になる。
ここでいうShopifyの売却額は、ARKK、ARKF、ARKWで8月12日から18日に記録された売却分を合計したものだ。ARKの記録を複数のETFにまたがって集計すると、同じ銘柄でもETFごとの取引が別々に現れる。
買われたのはAIの土台
一方、買い越しの上位は次の銘柄だ。
銘柄 買い越し額 どんな会社か
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Cerebras Systems(CBRS) 約3,250万ドル AI専用の超大型チップ。2026年5月にナスダック上場
NVIDIA(NVDA) 約2,300万ドル AI向けGPUの最大手
Cloudflare(NET) 約1,300万ドル 通信網とエッジ演算の基盤
Cerebrasは、AI計算に特化した大型プロセッサを開発する企業だ。2026年5月、想定レンジを25ドル上回るIPO価格185ドルで上場し、5月14日にNasdaqで取引を開始した。初値は350ドルと公開価格のほぼ2倍をつけ、調達額は55.5億ドルと2026年最大級のテックIPOとなった。ARKはその新規上場銘柄を、8月13日から18日にかけて複数のETFで買い増した。
NVIDIA、Cerebras、Cloudflare。並んでいるのは、AIを使って売上を上げる企業ではなく、AIの計算、接続、配信を支える企業である。
意外にも最大の買いはNVIDIAではなく、上場から間もないCerebrasだった。AIチップではNVIDIAが圧倒的な存在感を持つが、ARKは今回の取引で、NVIDIA以外の計算基盤にも資金を振り向けている。
「ピック&ショベル」の発想
ゴールドラッシュでは、金を掘る人よりも、ツルハシやスコップを売る商人の方が安定して稼いだ——という有名な比喩がある。英語では「picks and shovels」と呼ばれる投資の考え方だ。
AIに置き換えると、金を掘るのはAIを使ってサービスを提供するアプリの企業になる。ツルハシやスコップを売るのは、半導体、クラウド、ネットワークの企業だ。今回のARKの売買は、この「ピック&ショベル」に近い。AIアプリケーションの成長に賭けるだけでなく、AIの普及そのものによって需要が増える計算・通信基盤に資金を移している。
ARKは年次リポート「Big Ideas 2026」で、AIの普及が今後数年にわたるインフラ建設ラッシュを引き起こすと論じている。その中では、NVIDIAの年間売上高が2025年の2,160億ドルから、2026年には約3,500億ドルへ伸びる可能性も示されていた。
象徴的だった8月17日
今回の入れ替えを最も分かりやすく示したのが、8月17日の取引だ。
ARKQ、ARKW、ARKXの3本のETFでは、AMDの売却額とNVIDIAの購入額が一致していた。
ETF AMD NVIDIA
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ARKQ 売り 410万ドル(0.20%) 買い 410万ドル(0.20%)
ARKW 売り 360万ドル(0.20%) 買い 360万ドル(0.20%)
ARKX 売り 170万ドル(0.20%) 買い 170万ドル(0.20%)
同じ日に、NVIDIAはARKF、ARKK、ARKQ、ARKW、ARKXの5本すべてで買われた。
これは、半導体関連に配分する金額を大きく変えず、銘柄の中身をAMDからNVIDIAへ差し替えた動きと読める。翌18日にも似た形が見られる。ARKKではIlluminaと10x Genomicsを売り、同じETFでCerebrasを買っている。AIインフラ側への資金移動は、1日の特殊な取引だけではなく、複数日にわたって確認できる。
すべてがAIインフラではない
ただし、ARKの今回の売買を「AIインフラへの全面的な集中」と表現するのは正確ではない。
買い越し額の上位には、決済会社のBlockも入っている。これはフィンテックETFでの買いであり、AIインフラとは別の投資テーマだ。ロケット企業のRocket Labも大きく買われている。
また、ゲノム関連ETFでは逆向きの動きも起きている。ARKGでは、10x GenomicsやTwist Bioscienceなど解析装置・研究用資材に関わる企業を売る一方、Tempus AIのような医療AIの応用企業を買っている。
テクノロジー関連の取引では「道具を提供する側」を買う一方で、ゲノム分野では「道具を使う側」に資金を移している。すべての分野で同じ投資原則が適用されているわけではない。
全体で見れば、この6営業日、ARKは約1億1,000万ドルを買い、約1億3,400万ドルを売っていた。差し引き約2,400万ドルの売り越しとなった。ただしARKによれば、この記録は運用チームが判断して動かした分だけで、ETFの設定・解約に伴う売買やIPO関連の取引は含まない。つまりこれは、資金の増減を直接示すものではなく、ポートフォリオの組み替えということになる。
*本記事は、ARKが公開している売買記録をもとに本誌が集計・分析したものです。ARKが売買の理由を説明したものではありません。
*この記録には、ETFの設定・償還活動やIPO関連取引が含まれないとされています。
*金額・構成比は公表値です。公表段階で丸められている場合があります。
*本記事は投資助言ではありません。






