金曜日, 8月 28, 2026

GroundBreaker 1:国防総省、「地上ロボ」調達を本格”再”始動 RCV失敗から新モデルへ

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UGV illustration
Image generated with Adobe Firefly

2026年8月21日、米政府の契約公示サイトに小さな告知が掲載された。国防総省が、10月中旬にノースダコタ州キャンプ・グラフトンで無人地上車両(UGV)の合同実証イベント「GroundBreaker 1」を開催するという内容だ。参加できるのは「DoW Drone OTAコンソーシアム」という、今年5月に発足したばかりの官民連携組織の加盟企業に限られる。

この背景には米陸軍が2020年代前半に経験した「地上ロボット計画の失敗」がある。GroundBreaker 1は、その反省から生まれた新しい調達モデルの試金石であり、新興のベンダーや政府資金の流れ方を占ううえで注目される。

出遅れの二重構造:技術要因と制度要因

無人航空機(UAS)や海上ドローンに比べ、地上を走るUGVの実戦配備は米軍で明らかに遅れをとっている。理由の一つは技術的なものだ。不整地や障害物の多い地形での自律走行は空や海より難度が高く、現状の米軍のUGVの多くは2〜3人のオペレーターが1台を遠隔操作する必要があるとされる。この遠隔操作依存は、電子戦環境下での脆弱性にも直結する。インド太平洋地域を想定した場合、切り立った崖や火山性の尾根、密林といった地形条件も自律走行の実用化を難しくしてきた。

しかし、ウクライナ戦争では、ロシア・ウクライナ双方が地上ドローンを補給・偵察・地雷処理などに実戦投入し、有効性を示してきた。技術的な下地はすでに存在するのに、米軍がここまで足踏みした理由は、技術だけではなく、調達努力の紆余曲折にあると考えられる。

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RCVの興亡:一台300万ドルの教訓

米陸軍は2023年9月、次世代戦闘車両群構想の一環として「Robotic Combat Vehicle(RCV)」のプロトタイプ契約をMcQ、Textron Systems、General Dynamics Land Systems、Oshkosh Defenseの4社に発注した。各社は2024年8月までにプロトタイプを納入し、2025年度中に単一ベンダーへの絞り込み、2026年に最大9台の追加試作、2027年に量産移行という青写真が描かれていた。

ところが2025年4月30日、ヘグセス国防長官(当時)が発した予算優先順位の見直しメモをきっかけに、陸軍はミサイル戦力・電子戦・対ドローン能力への資金再配分を進める方針に転換する。同年5月には、RCVの次期競争は事実上の停止に追い込まれた。防衛専門メディアの取材に応じた陸軍関係者の証言によれば、単一ベンダーに絞って車両1台あたりほぼ300万ドルを支払う計画は「望ましくない」という判断があったという。数年をかけた選定プロセスと、明確な量産計画を持たない高コスト車両――それがRCVという計画の実態だった。

方向転換:UGCRVからGroundBreaker 1へ

失敗を踏まえ、陸軍はわずか3カ月後の2025年8月、方向性を180度転換した新しい構想を打ち出す。「Unmanned Ground Commercial Robotic Vehicle(UGCRV)」と名付けられたこの枠組みは、車両単価の上限を65万ドル程度に設定し、単一ベンダーではなく複数ベンダーの並行採用を前提とする、いわば「安く・早く・数多く」路線への転換だった。

この流れが、2026年5月に発足したDoW Drone OTAコンソーシアムと、同年開設された調達プラットフォーム「drones.mil」(UAS・海上/水中無人機・UGV・対ドローンの各ポータルを備える)に合流し、今回のGroundBreaker 1という実証イベントに結実したというのが全体の構図だ。OTA(Other Transaction Agreement)という契約形態は、従来の調達手続きに縛られない非伝統的なベンダーを呼び込みやすく、実証で「高い戦術的価値と技術的成熟度」を示した企業には、本契約に向けた技術・コスト提案の提出機会が与えられる。GroundBreaker 1の応募締め切りは2026年9月4日、実証本番は10月中旬の予定だ。

期待される企業――ただし「加盟企業リスト」は非公開

DoW Drone OTAコンソーシアムの加盟企業リストは公開されていない。招待告示を確認したところ、専任の管理事業者名の記載はなく、「Government Steering Committee」という組織が運営し、企業は随時DMConsortium@army.mil宛に直接応募する仕組みになっている。

ただし陸軍は8月11日、別枠の取り組みとして「Infantry Last Tactical Mile(ILTM、歩兵向け戦術的最終区間)」と呼ぶ構想の下、OTAを通じて6社(Maren-Go、Overland AI、Forterra、Hendrick’s Motorsports、American Rheinmetall、HDT)にプロトタイプ契約を授与したと発表した。この構想は今年4月に陸軍が発出したCommercial Solutions Opening(CSO)を経て具体化したもので、前線と支援部隊の間の危険な「最終区間」で補給・傷病者後送・通信中継を無人化することを目指す。陸軍でAutonomous Robotic Capabilitiesを担当するケン・バーニエ大佐は発表の中で、有人部隊を支援する「迅速に展開できる補給プラットフォーム」と位置づけている。ILTMとGroundBreaker 1は別個のプログラムだが、同じ時期に陸軍のUGV戦略が複数の経路で同時並行的に動いている点として注目に値する。

Breaking Defenseの取材によれば、6社中3社は具体的な車両を明らかにしている。American Rheinmetallは、自社の「Path」自律走行キットを搭載した「Mission Master SP-H」を提供する予定で、同社によれば同モデルはすでに米海兵隊に供給されており「非常に高く評価されている」という。Overland AIは、ポラリス社のオフロード車をベースにした自律走行プラットフォーム「ULTRA」を提供する(同社担当者はBreaking Defenseに対しベース車両を「RZR」シリーズと説明しており、具体的な型式表記には情報源によりばらつきがある)。Forterraは今回車種を明らかにしなかったが、今年4月にポラリスと共同発表した「MESA」(Ranger XD 1500ベース、AutoDrive自律走行スタックとVektor通信を搭載)を投入する可能性が高いと報じられている。Maren-GoとHDTは取材に応じず、Hendrick’s Motorsportsについてはそもそも連絡が取れなかったという。

このHendrick’s Motorsportsが選定企業に残った点も興味深い。同名の企業は、NASCARの名門レーシングチームとして知られるHendrick Motorsports系列の技術部門とみられ、これまでスタートアップのScout AIと組んで小型UGV「NOMAD」を開発した実績がある。同社の政府プログラム担当者は、モータースポーツの現場で鍛えられた「プレッシャー下で働くエンジニアや製作者」の俊敏さを強みとして挙げており、レースで培われた迅速な設計・製造文化が軍用ロボットにどう転用されるのかは、今後の具体的な提案内容が明らかになるまで未知数だが、注目したいポイントだ。

このほか、2022年に陸軍から偵察用自律車両の開発で5000万ドルの契約を獲得した自律走行ソフトウェア企業Kodiak AI(NASDAQ: KDK)、前出のRCVでプロトタイプを手がけたGeneral Dynamics(NYSE: GD)、Textron(NYSE: TXT)、Oshkosh(NYSE: OSK)の3社も注目される。

さらに、ウクライナでの実戦知見を持つエストニアのMilrem Robotics(THeMIS)も、米陸軍の寒冷地研究機関CRRELに研究用として採用されるなど、海外勢が食い込む可能性もある。

まとめと今後の観測点

GroundBreaker 1は、米陸軍が高コストで機動性を欠いた伝統的調達(RCV)の失敗を経て、ようやく「安く・複数ベンダーで・早く実戦投入する」という現実的な路線に転換したことを象徴するイベントだ。応募締め切りの2026年9月4日、実証本番の10月中旬、そしてdrones.milのUGVポータルが正式稼働するタイミングは、いずれも関連企業の動向を追ううえでの節目になる。ILTMの正式契約確定(数週間以内の見込み)と2027年初頭の運用評価も、並行して追うべきマイルストーンだ。