米保守団体「ターニングポイントUSA」創設者のチャーリー・カーク氏がユタ州で銃撃され死亡した事件をめぐり、拘束された22歳のタイラー・ロビンソン容疑者を「グロイパー(Groyper)」と関連づける投稿がSNSで相次いでいる。
グロイパーは、「カエルのぺぺ」から派生したオルタナ右翼のミームのニックネームで、ニック・フエンテスら白人至上主義を擁護するインフルエンサーやそのフォロワーの緩やかな集団を指す。
米国最大のユダヤ人団体、名誉毀損防止同盟(Anti-Defamation League)によると、グロイパーたちは他の白人至上主義グループに比べてより「キリスト教」や「伝統的な価値観」を強調し、自分たちの主張を正当化、または正常なものとして売り込む点に特徴がある。Rumbleでチャンネル「アメリカファースト」を運営するフエンテスは、グロイパーは白人至上主義ではないと主張し、反移民、反グローバリズム、LGBTQやトランスジェンダーの権利に反対する「キリスト教保守派」と位置付けている。
フエンテスらは、ターニングポイントUSA(TPUSA)など主流派団体と対立し、「真」のアメリカファーストを推進しておらず、十分に白人寄りでないと批判を繰り返していた。現在、SNSにはフエンテスがカーク氏の親イスラエル姿勢を厳しく非難する過去動画などが多数出回っている。一方、カーク氏は、グロイパーがイベントの妨害キャンペーンを行うことからフエンテスと関係を断ち切り、団体主催のイベントへの参加を禁止するなどしていた。
なお、カエルのぺぺはコミックアーティストのマット・フューリーによる作品で、2015年頃からオルタナ右翼の白人至上主義運動のシンボルとして利用され始めたとされる。グロイパーはぺぺのバリエーションで、太めで顎を組んだ両手の上に乗せているキャラクター。2017年頃にオンラインに登場し、フエンテスの支持者らのシンボルとして採用されるようになった。
ロビンソン容疑者との関係は?
ロビンソン容疑者のイデオロギーや犯行動機は明らかになっていない。フエンテスはSNSの投稿で、メディアが自分の支持者らに罪をなすりつけようとしていると反論している。
ロビンソン容疑者は、犯行現場のユタ・バレー大学から車で3時間半ほどの距離にあるセントジョージで、両親近くのアパートに住み、トランスジェンダーの女性と同居していた。家族はモルモン教徒で、地元の教会で活動していたという。前科はなく、同大学に在籍したことはなかった。2021年にユタ州立大学で1学期間在籍し、直近ではユタ工科大学(旧ディキシー工科大学)の電気工学見習いプログラムに所属していた。BBCによると、両親は共和党員だが、本人は無党派と記録されている。
薬莢にネットスラングや荒らしで使用される文言が刻まれていた。使用済み薬莢には「notices bulges OwO what’s this?」と書かれており、これはロールプレイングゲームに関連したミームで、他人を揶揄するジョークとしても頻繁に使用されているという。そのほか未使用の薬莢には「これを読んだらゲイだ(笑)」と刻まれたものや、「おい、ファシスト! 捕まえろ!」という文字に上矢印、右矢印、3つの下矢印という、アンティファ(反ファシスト運動)への関心を示すと考えられるものもあった。下矢印3つは反ファシズムのシンボルとしてよく使用されるという。また、第二次世界大戦中にイタリアでファシスト政権に抵抗したパルチザンが歌った「Bella ciao」の歌詞が刻まれているものもあったという。
ユタ州のスペンサー・コックス知事は14日に出演したテレビインタビューで、ロビンソン容疑者は保守的な家庭で育ったが、本人の思想は家族と大きく異なっていたと説明。大学を退学して地元に戻った後、ネットのダークカルチャーに触れ、短期間のうちにラジカリゼーションしたと考えを語った。