謎が謎を呼ぶジェフリー・エプスタイン事件。民主党が新たに公開した資料「バースデーブック」をめぐり、新たな疑惑が飛び出した。
このブックは2003年、エプスタインの50歳誕生日に向けてギレーヌ・マクスウェルが編纂したとされる。幼少期の写真や資料、友人やビジネス関係者、ガールフレンドからの手紙が約250ページにわたって収められている。トランプ、ビル・クリントン、レオン・ブラック、アラン・ダーショウィッツ、レスリー・ウェクスナー、アラン・グリーンバーグ、ジェームス・ケインら著名人の手紙も含まれている。
トランプの手紙の存在は7月にウォールストリートジャーナルが報じたが、実物の公開は今回が初めて。内容は当時の報道と一致する。タイプライターで打たれた文面に、手書きと見られる裸の女性の輪郭。胸を示す2つの弧、腰の下にくねくねと陰毛を模したように添えられた「Donald」の署名。文章は架空の対話形式で綴られ、「ジェフリー、僕たちには共通点があるんだ」「謎というものは決して歳を取らない、そう思わないか」などと語るトランプに、エプスタインが「実のところ、前回君に会った時には、私にははっきりしていた」と応じる。「毎日がまた素晴らしい秘密の日でありますように」と締めくくられる。

トランプはこの手紙を「偽物」と断じ、ウォールストリートジャーナルと親会社のダウ・ジョーンズ、オーナーのマードックらを名誉毀損で訴えている。公開後も主張は変わらない。署名は本人のものと酷似しているが、ホワイトハウスのレヴィット報道官は9日の記者会見で「トランプ大統領がこの絵を描き、署名をしたわけではない」と全面否定。トランプの弁護団は訴訟継続の方針を示し、「民主党が捏造したエプスタイン事件のデマ拡散のためのフェイクニュースだ」と攻撃している。
今回追い討ちをかけるのが、エプスタインが写る一枚の写真と添え書きだ。写真にはエプスタインが仲間たちとともに、巨大な小切手の模型を抱えている。受取人欄にはエプスタイン名、金額欄には22,500ドルと記され、署名欄にはトランプの名があるが、本人が通常使う署名とは異なる。

添え書きにはこう記されている。
「ジェフリー・エプスタインは『金+女性』で早くから才能を示し、完全に価値が下落した〇〇を22,500ドルでドナルド・トランプに売った」
プライバシー保護のため、名前部分は黒塗りされている。
翌朝、MSNBCの番組に出演した元連邦検事バーバラ・マククエイドはこの内容に言及し、トランプの手紙よりも憂慮すべきだと指摘した。
「これはトランプの絵より問題が大きい。意味するところが厄介だからだ。完全なジョークかもしれないが、ジョークは必ず何らかの真実の種に基づく」
トランプの絵についても「本物であればトランプとの親密な関係を示唆している。エプスタインを“友人”と呼び、一緒に秘密を持っていると言っているのだから。これは今後多くの疑問を呼ぶ」と続けた。
議会では司法省の未公開資料をめぐり激しい攻防が続く。公開派には民主党議員に加え、普段はトランプ支持で知られるマージョリー・テイラー・グリーン議員らも加わり、本会議での採決実現を目指して署名活動を進めている。ホワイトハウスや共和党指導部は公開に強硬反対するが、採決に必要な署名を満たす可能性も報じられている。
トランプはNBCの取材で、バースデーブックを「解決済みの問題」と一蹴したが、この炎上騒ぎを収束させるのは容易でない情勢だ。