6人目の共謀者とは?トランプ前大統領 3回目の起訴

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首都ワシントンの大陪審は1日、2020年大統領選の結果を覆す試みに関して、トランプ前大統領を国家を欺いた罪など4つの罪状で起訴した。トランプ氏が起訴されるのはこれで3回目。

捜査を率いるジャック・スミス特別検察官は45ページにわたる起訴状の中で、「(選挙の)敗退にも関わらず、被告は権力に留まろうと決意した」と述べ、選挙から2ヶ月以上にわたって、結果を左右する詐欺が行われ、実際は自分が勝利したといった嘘を拡散したと主張。「これらの主張は虚偽であり、被告はそれらが虚偽であることを知っていた」と指摘した。さらに、トランプ氏は正当な投票を差し引いて、選挙結果を覆すという違法な方法を追求したと断じた。

スミス検事は、トランプ氏は結果を覆すために6人の共謀者に協力を求めたとし、それぞれの関与に言及した。

名前は伏せられているが、記された内容をもとに複数メディアが人物を特定している。

共謀者1:ルディ・ジュリアーニ

「故意に虚偽の主張を広め、被告の2020年の選挙キャンペーンの弁護士がやらない戦略を、すすんで追求した弁護士」

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トランプ氏個人の弁護士だったジュリアーニ元ニューヨーク市長は、選挙後に接戦各州で数多くの訴訟を率いたほか、複数の州議会に出向くなどして、虚偽を拡散した。当時、連日メディアに取り上げられたジュリアーニ氏は、ポルノショップの隣で開いた会見や、黒い汗疑惑おならゲートなど不名誉な話題に事欠かなかった。

共謀者2:ジョン・イーストマン

「認証手続きを監督するペンス副大統領の儀式的な役割を利用して、認証を妨害する戦略を考案、実行しようとした弁護士」

イーストマン氏の弁護士はThe Hillに、本人だと認めている。議事堂襲撃事件を調査する下院特別委員会(1月6日委員会)の最終報告書によると、イーストマン氏は、州議会には選挙結果に関わらず、独自に選挙人を選ぶ権限があるとする法的メモを作成した。結局これに従う州はなかった。

起訴状では、ペンス副大統領には選挙人名簿に異議が生じている州の投票を無効にして、トランプ氏に再選を与えることができるとするメモを作成したとされている。

共謀者3:シドニー・パウエル

「被告が個人的にクレイジーに聞こえると認めた根拠のない投票不正を主張した弁護士」

元連邦検事だったパウエル氏は、ジュリアーニ氏率いるトランプ弁護団に一時的に参加した。ジュリアーニ氏の「黒い汗」が話題になった2020年11月19日の記者会見に加わり、ドミニオンの投票機にトランプ票をバイデン票に変更するアルゴリズムがセットされ、アルゴリズムがうまく機能しなかった接戦州では、民主党員が偽造した郵便投票を追加する秘密工作が行われたと主張した。

弁護団を去った後、ジョージアとミシガン、アリゾナ、ウィスコンシンで通称「クラーケン」訴訟を提起したが、いずれも棄却された。トランプ氏は、パウエル氏を行き過ぎと認めつつも、特別検察官に任命する案を検討したことがあったとされている。

ドミニオン社から名誉毀損で提訴されると、主張を一転。「合理的な人物」は、ドミニオンの選挙不正に関わる自分のコメントを「事実の主張」だと考えないなどと反論していた。

共謀者4:ジェフリー・クラーク

「民事問題担当の司法省職員で、偽の選挙犯罪捜査を開始するために司法省を利用し、故意に虚偽の投票詐欺の主張によって州議会に影響を与えた」

司法省の中位の職員だったクラーク氏は、トランプ氏の見解に好意的であったことから、トランプ氏が司法長官代理に据えることを検討したこともあった。

選挙結果に影響を与えるため、「司法省が”重大な懸念を特定した”」と虚偽の内容を記した書簡を、ジョージア州当局者宛に送ろうとしていたことなどが判明している。

共謀者5:ケネス・チェスブロ

「認証の手続きを妨害するために不正な大統領選挙人名簿を提出する計画の立案と実行の取り組みを支援した弁護士」

チェスブロ氏は、ウィスコンシン州の裁判所の判事に当てた書簡で、トランプ支持の選挙人団を準備する法的提案をするなどしていた。

昨年10月、法律関係者らはニューヨークの裁判所の弁護士苦情処理委員会に書簡で、「偽の選挙人団計画の明らかな黒幕」と指摘。「詐欺的で欺瞞的な行為に従事することで州の弁護士の行動規則に違反し、世間と法制度、職業、民主主義に深刻な損害を与えた」と非難した。

なぞの共謀者6

「認証手続きを妨害するために不正な大統領選挙人名簿を提出する計画の実行を支援した政治コンサルタント」

起訴状によると、共謀者6はジュリアーニ氏に送ったメールで、接戦6州で偽の選挙人団の計画に協力が可能な弁護士を特定した。さらに、ペンシルベニア州のトランプ支持の選挙人らと話すため、ジュリアーニ氏とチェセボロ氏ともに電話会議に参加した。1月6日の認定を遅らせるために、トランプ大統領がジュリアーニ氏に電話をかけるよう指示した上院議員6人の電話番号を確認した。

各メディアともに6番目の人物を特定しておらず、ネットではさまざまな憶測が飛び交っている。

クラレンス・トーマス最高裁判事の妻バージニア氏の可能性を指摘する声も多い。バージニア氏は、投票不正説を支持し、1月6日のトランプ氏の集会にも参加していた。

大統領主席補佐官だったマーク・メドウズ氏が1月6日委員会に提出した資料からは、バージニア氏がメールで「12州で配られた透かし入りの投票用紙が、トランプと軍による正義のおとり作戦の一環だった」と述べていたことや、バイデン親子や役人、議員、メディア関係者らが拘束され、グアンタナモに送られて反乱罪で軍事裁判にかけられるといった旨のメッセージを送っていたことが判明した。さらに、シドニー・パウエル氏を弁護団の代表に据えるよう支援してほしいと要望を伝えていた。

ワシントンポスト紙は昨年6月、バージニア氏がアリゾナ州の議員29人に送ったメールで、バイデン氏の勝利とは関係なく選挙人を選ぶよう圧力をかけたと報じた

このほかにも、スティーブ・バノン元大統領首席戦略官やピーター・ナバロ元大統領補佐官、トランプ氏の盟友、ロジャー・ストーン氏などの名が飛び交っている。