ドミニオン、Foxニュースを提訴、16億ドルの賠償請求

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米投票システム大手のドミニオン・ボーティング・システムは26日、2020年大統領選で投票結果を改ざんしたなどの偽の主張を広めて名誉を毀損されたとして、Foxニュースを相手取り、16億ドルの損害倍賞を求める訴訟を提起した。

ドミニオン社はこれまでに弁護士のシドニー・パウエル氏、ルディ・ジュリアーニ氏、マイピローのマイク・リンデル最高経営責任者を訴えている。これらの人物は、Foxニュースや保守系メディアに度々出演し、投票システム企業による不正説を拡散していた。

同社の競合にあたるスマートマティックは2月、FoxコーポレーションとFoxニュース、同社のアンカー、パウエル氏、ジュリアーニ氏を相手に、27億ドルの損害賠償を求める訴訟を起こした。

両社が求める損害賠償は合わせて43億ドル。なお、Foxコーポレーションの2019年9月から2020年9月の収益は123億ドルで、税引き前の利益は30億ドルとなっている。

ドミニオン社はデラウエア州の裁判所に提出した訴状で、Foxニュースは、同社の選挙報道に不満を抱いて離れていった視聴者を取り戻そうと、トランプ氏の敗北は選挙不正によるものだとして、誤りだと知っていながら意図的にドミニオン社を非難したと主張。「商業目的で選挙不正の嘘話を売り、ドミニオンの名誉を著しく毀損した」と述べた。

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偽情報には、ドミニオン社のソフトウエアが票数を変更するなどして、不正を働いたといった内容から、同社が、ウゴ・チャベスのために投票不正をする目的でベネズエラで設立された企業に所有されているといったものや、投票機を導入した政治家にキックバックを支払ったなどの話が含まれると説明。Foxニュースは、マリア・バルティローモ氏やタッカー・カールソン氏、ルー・ドブス氏、ショーン・ハニティ氏、ジェニー・ピロ氏の番組で、パウエル氏やジュリアーニ氏らを招き、繰り返し虚偽の情報を放送したほか、SNSを通じて広く拡散したと非難した。「Foxは小さな炎を拾って、山火事に仕立て上げた。選挙結果に不満を抱く視聴者に支配的なメディアとして、Foxは虚構を、他ではなし得ないほどに突出させた」と述べた。

2020年の選挙でドミニオンは28州に製品を提供していたが、一般には名前は知られていなかった。同社は、「悪役」に仕立て上げられることでおなじみの名前になったと主張。「Foxが仕組んだ中傷キャンペーン」の結果、エンジニアや最高経営責任者が嫌がらせを受け、殺害予告まで受ける事態に発展した。さらに、巨大で取り返しのつかない経済的損害を被ったと述べた。

Foxニュースは、The Hillへの声明で「米国ジャーナリズムの高い伝統に立脚した2020年大統領選の報道に誇りを持っており、根拠のない訴訟に対しては法廷で精力的に弁護するつもりだ」と回答した。

一方、シドニー・パウエル氏は22日に、ドミニオン社の訴訟について、却下の申し立てを提出している。パウエル氏はこの中で、「合理的な人物」は、ドミニオンの選挙不正に関わるパウエル氏のコメントを「事実の主張」だと考えないだろうと主張した。

ワシントンポスト紙によると、ドミニオン社の弁護士、トム・クレア氏は26日の会見で、Foxはパウエル氏を繰り返し出演させたことに言及。「(パウエル氏は)Foxニュースのカメラを直視して、ルー・ドブスに”ここで起きたことがわからなければ、とんでもない愚か者で、救い難いバカだ”と話していた」と指摘し、パウエル氏の主張は「多くのレベルで馬鹿げている」と反論した。