「どう見えてる?」──血に染まったガッツポーズの裏で、トランプが気にしていたもの

4
Tada Images / Shutterstock.com

ABCニュースのワシントン支局長ジョナサン・カール氏によると、昨年の大統領選の行方を左右した暗殺未遂事件の直後、当時候補者だったトランプは、忘れがたい一言を放っていた。

事件が起きたのは昨年7月。ペンシルベニア州バトラーの選挙集会で演説を始めたトランプの右耳を銃弾がかすめた。すぐさまシークレットサービスの隊員たちが覆い被さったが、トランプは血を流しながら立ち上がり、聴衆に向けてガッツポーズ。その映像は瞬く間に世界を駆け巡り、選挙戦の象徴となった。

29日放送のABCの人気番組『The View』に出演したカール氏は、事件を調査した議会報告書を「情報の宝庫」と評した上で、そこに記された証拠やシークレットサービス捜査官の宣誓供述書をもとに、事件を「分刻みで再構築できた」と説明。その舞台裏を明かした。

シークレットサービスの隊員たちは、トランプを防弾SUVに乗せ、ただちに現場を離れようとした。しかし彼は抵抗し、あの「ファイト、ファイト、ファイト」のガッツポーズを見せた。最大の見せ場であると同時に、それを許したのは彼を再び銃撃の危険にさらすという、訓練の常識からすればあり得ない行為だった。

さらにカール氏は、病院到着時のエピソードについても触れた。 「彼が病院に着いたとき、側近たちは別の車にいました。彼が降りると、何人かの側近がそこにいて、こう言ったのです。『どう報道されてる? テレビではどう見える?』。それが彼の最初の関心事でした」。

Advertisement

メディア関係者だけが知る、トランプの「カメラの裏の顔」についても語られた。

記者に対しては公然と敵意を示すが、一対一の電話では驚くほど親切だという。選挙期間中の電話で、彼は「非常に好意的」で、「どんな情報を聞いてる? 何が起きてる? 状況はどうだ?」と尋ねることもあったという。 彼のそばで電話を聞いていた人物によれば、バイデン大統領に対しても同様だった。公の場では「死体」「オートペン」と痛烈に揶揄しながらも、電話では「一貫して親切で、大袈裟なほどだった」。ハリス副大統領にも同じ態度を取っていたという。

カール氏は言う。 「彼はいまだに、この世界をリアリティショーだと思っているんです」。