新作映画『スーパーマン』に保守派が怒りのレーザービーム「もう観に行かない」

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Cesar Mendez / Shutterstock.com

スーパーマン新作公開前夜、保守派界隈がざわついている。

「今まで一度も面白いスーパーマン映画なんてなかった。全部観たけど(笑)」

「客に“帰れ”って言うのが儲けを減らす最高の方法だよな。なんでみんな活動家になっちゃったんだ?映画って現実逃避のためじゃなかった?」

「スーパーマンは移民じゃない、難民だ。リストからまた一本消えた。そもそも映画観に行く暇ないけど。」

「また一人、ヒーローがWoke化した」

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火種となったのは、ジェームズ・ガン監督のThe Sunday Timesインタビュー。

Hollywood Reporterによれば、ガン監督は「スーパーマンは移民の物語」と語り、「何よりも大切なのは、基本的な人間の優しさこそが価値であり、私たちがそれを失ってしまった、ということを伝える物語なんだ」と説明。さらに「優しさがテーマなだけで不快になる人もいるけど、そんなの知ったこっちゃない」と、あえて反発を買いそうなコメントも飛び出した。

そのうえで「これは政治の話だ」と明言しつつ、「同時に道徳の話でもある」と付け加える。新作ではスーパーマンとロイス・レインの“道徳観のズレ”が2人を引き裂く様子も描かれるという。

「文化的著名人がネットで意地悪をして、社会に冷たさが広がっている今こそ、特別に善良な男の物語が必要だ」。

この政治的メッセージにSNSで怒りのレーザービームを発射したのが保守派の人々。

とりわけトランプ支持者が怒るのは想像に固くない。トランプ氏は自らをアメリカの救世主、愛国者の象徴のようなヒーローとして売り込み、数年前に発売したNFTトレカでは、スーパーマン風のコスチュームを着て目からレーザービームを発射する姿もある。2020年に新型コロナの治療を終えて退院する際、シャツのボタンを外してスーパーマンのロゴを見せて復活劇を演出しようとしたなんて報道さえある。

しかしながら、スーパーマンが「保守的な愛国者」の理想であり続けたかというと、そんなことはないらしい。

BBCに専門家が語ったところによれば、1938年のデビュー当初は「スーパー・アナーキスト」で「暴力的な社会主義者」、「左翼革命家」でさえあった。

背景には、原作者シーゲル&シュスターがユダヤ移民の貧しい家庭出身だったことや、コミック業界自体が「まともな職に就けなかった」才能たちの「クリエイティブ・ゲットー」だった歴史もある。

スーパーマンは「虐げられた者のチャンピオン」として誕生し、急進的なヒーローだった。しかし人気が出すぎて「平凡化」の道をたどる。戦争の時代には体制寄りの愛国者に“転職”せざるを得なかった。「Pulp Empire: A Secret History of Comic Book Imperialism」の著者、ポール・S・ヒルシュ氏は「コミック業界で働く移民や有色人種は皆、愛国心があると思われたかった。社会に溶け込むためにはそうするしかなかった」と指摘する。

時代に合わせて姿を変えるスーパーマン。新作では一体どんな“正義”を見せてくるのか。「絶対観ない!」と叫ぶ人々。実は一番気になっているのは自分たちだったりして。