ミシガン州高校銃乱射事件 学校の責任は?

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ミシガン州オックスフォード高校で起きた銃乱射事件に関し、オックスフォード郡検察は、15歳のイーサン・クランブリー被告に加え、両親を刑事訴追するという異例の判断をくだした。

銃撃により、14歳から17歳の生徒4人が死亡、7人が負傷した。

起訴の発表後、クランブリー夫妻は行方をくらましたが、深夜をまたぐ捜索の末、デトロイト市内の商業ビルの地下にいることが発覚、拘束された。4日の午前中に罪状認否が行われ、夫婦ともに4件の過失致死罪について無罪を主張した。保釈金は、検察側の主張が認められ、それぞれ50万ドルに設定された。オンラインで出廷した2人は、審問の最中にすすり泣く様子も見られた。

検察の発表によると、犯行に使用された銃は、事件の数日前、イーサン被告へのクリスマスプレゼントとして、父親がガンショップで購入したものだった。事件前日には、イーサン被告が授業中、携帯電話で弾薬を検索していたことが判明。学校は両親に連絡を試みたが、連絡がつかなかった。事件当日の朝、教師が、イーサン被告の机の上に、拳銃のイラストや撃たれて血を流す人物の絵を発見。イーサン被告をカウンセリング室に移動させ、両親も呼び出しを受けた。この後、イーサン被告は教室に戻ることを許可され、犯行に及んだ。

検察は、面会の際、両親が銃のありかを確認せず、息子のバックパックを調べるのを怠ったと非難。さらに、息子を家に連れて帰るのを拒否したと発表している。

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学校の責任は?

4日、オックスフォード高校の学校区を代表するティム・スローン学校区長は、父兄に宛てた書簡で、第三者機関による独立調査を実施する計画を示すと同時に、イーサン被告を授業に戻した経緯を説明した。

スローン氏の説明では、事件前日、拳銃の画像を閲覧していることが発覚した後、カウンセラーとその他の職員がイーサン被告と面談を行った。イーサン被告はこの中で、最近、母親と射撃場を訪れたと明かし、射撃は家族の趣味だと述べた。当日は連絡がつかなかった母親は、翌日、この事実を認めたという。

事件当日、イーサン被告が描いた絵を確認した教師は、カウンセラーと学生部長に報告。カウンセラー室に移動させられたイーサン被告は、絵について「ビデオゲームの一部」と説明し、将来、ビデオゲームのデザインの職業につきたいと話した。

両親が到着するまでの1時間30分、イーサン被告の態度は、落ち着いており、これを観察したカウンセラーは、他人に危害を加えるとの考えにはいたらなかった。この時、バックパックに銃を隠し持っていたかどうかについては、確認できていないとしている。

両親を交えた面談で、自傷行為や他人に危害を加える可能性に関する「特定の質問」を行ったが、カウンセラーは再び、この危険はないと判断した。両親は、購入したばかりの銃に息子がアクセスできる環境にあることを、報告しなかったという。

カウンセラーは両親に、48時間以内にカウンセリングまたは児童保護サービスを受けるよう通告した。さらに家に連れて帰るよう求めたが、両親はこれを拒否。仕事に戻るためのようだったとしている。

イーサン被告には規律違反がなかったことを踏まえ、1人で家に帰らせず、授業に戻す判断が下された。スローン氏は、カウンセラーの判断について「プロフェッショナルな訓練と臨床経験」に基づいたもので、現在報告されている事実についても、すべてを把握する状況になかったと説明。カウンセラーの立場を擁護した。

オックスフォード郡のカレン・マクドナルド検事は、両親以外を刑事訴追する可能性を排除していない。3日の会見で「この悲劇を止めさせる機会があった全員が、そうするべきだった」と述べ、「問題は、何を知り、いつ知ったかだ」と話した。

ワシントンポスト紙によると、専門家の一部は、オックスフォード高校の職員に非はないとの見方を示しているが、一方で、危険な兆候は明らかで、所持品の調査や、校舎への立ち入りを禁じるべきだったと指摘する声も上がっている。

ロードアイランド大学のフレデリック・リーナー教授は、同紙の取材に「小さな危険信号どころか、大きな信号」があったと指摘。「表面的には、非常に疑わしい判断」と答えた。また、学校側の過失が問われれる可能性は「大いにある」と述べ、児童保護サービスへの報告を検討するほどの状況であれば、より深刻に扱われるべきだったと話した。

銃乱射事件で、学校側の過失責任が問われるのは過去にも例がある。2018年に起きたフロリダ州パークランド高校乱射事件では、同年、遺族や被害者から学校区に対して合計53件の訴訟が提起され、このうち52件が、計2,500万ドルで和解に至った。一方、2012年に起きたサンディフック小学校銃乱射事件では、コネチカット州の裁判所は、父兄が学校区に対して起こした訴訟を2018年に却下している。

ミシガン州の法律では、訴訟対象となる機関が、政府の機能に従事している場合、免責されるという。ただし、カウンセラーなどの個々の政府職員については、過失が重大と判断された場合、責任を問われるという。