ロシア拘束の米女子バスケ選手の救出にあのレジェンドが名乗り

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大麻成分の入った製品を持ち込んだとして、ロシアで拘束、有罪判決をうけた米女子プロバスケットボール(WNBA)のスター、ブリトニー・グライナー選手。拘束から約半年間が過ぎる中、バスケ界のレジェンドが仲介役に名乗りをあげた。

グライナー選手はWNBAチーム「フェニックス・マーキュリー」に所属する傍ら、オフシーズンにはロシアリーグでプレーしているが、今年2月、モスクワの国際空港で荷物からロシアで禁止されているハシシオイルが見つかり、身柄を拘束された。今月4日に有罪となり、禁錮9年の実刑判決が下された。先週には代理人が控訴しており、バイデン政権はロシア側に囚人交換を打診するなど、解放の方法を模索している。

今回仲介役に名乗りをあげたのは、米プロバスケットボール(NBA)の殿堂入り選手で、北朝鮮との関わりが深いことで知られるデニス・ロッドマン(61)。

ロッドマンは20日、NBCニュースのインタビューでグライナー選手について言及。「あの子を助けるため、ロシアに行く許可を取った」とし、今週にも出発するつもりだと明かした。ロシアのプーチン大統領についても、「知りすぎている」ほどの間柄だといい、2014年のインタビューでプーチン氏を「クール」だと表現したこともある。

なおロッドマンが言うところのロシア行きの「許可」が具体的に何を指すのかは不明。一般的に米国人がロシアに渡航するにはビザの取得が必要となる。米国務省は現在、ロシアへの渡航警戒レベルを4段階中最も厳しい「渡航中止」に指定しているが、この理由として、ウクライナとロシアの紛争のほか、「米国民への嫌がらせの可能性」や「ロシア政府警備当局による、身柄拘束を含む米国民への排斥行為」など様々な危険要因を挙げている。

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ロッドマンをめぐっては、外国の指導者らとプライベートで交流するいわば「非公式外交」がたびたび話題になり、特に北朝鮮の金正恩総書記とは故金正日政権時代から親子2代にわたる交友関係があることで有名。2014年には北朝鮮で2年半以上拘束されていた韓国系米国人ケネス・ベーさんが解放されたが、TMZの当時の報道によると、ロッドマンはこれを自分の手柄だと主張。金正恩にベーさんの解放を求める手紙を送ったことが功を奏したなどと話していた。ただし、実際のところは米国家情報長官(DNI)が介入したことが解放を促した直接の要因とする見方が強い。

2018年にシンガポールで初めて実現したトランプ前大統領と金正恩氏の米朝首脳会談では、目的は不明だが、自らも現地入りした。現地から応じたテレビインタビューでは、MAGAハットを被ったロッドマンが、会談実現までの長い道のりを振り返りつつ、感極まって号泣する姿が話題になった。

裁判でグライナー選手は、ハシシオイルの入ったベイプカートリッジを誤ってスーツケースに入れてしまったと過失を認めたが、法律を犯すつもりはなかったとも証言した。米国務省はグライナー選手の拘束は「誤り」と主張し、解放を要求している。先週には国務省のプライス報道官は声明で「裁判結果のいかなる要素も、ブリトニー・グライナーは不当に拘束され直ちに解放されるべきだという我々の判断を覆すものではない」と主張。グライナー選出とロシアで禁錮16年に処された元海兵隊員ポール・ウィラン氏の解放をめぐり、ロシア側に「深刻かつ重大な提案」をしていると述べるなど、解放に向け力を尽くしている姿勢を強調した。

レジェンドの介入の効果は未知数だが、政権高官の間では、公式ルート以外での交渉が解放の努力を複雑化し、妨げる可能性を懸念する声が上がっているという。