8月21日付の報告書で、ナンシー・ペロシ下院議員(民主党・カリフォルニア州)による新たな株取引が明らかになった。取引日は7月24日と7月28日の2回。ブルームエナジー(BE)とインテル(INTC)への株式・コールオプション投資に加え、サンフランシスコで高級ホテル物件の取得・改修を手がける不動産LLCへの追加出資が報告された。各取引は金額範囲で開示されるため、上限を単純合算すると最大1450万ドル規模となる。
内訳は次の通り。7月24日、ブルームエナジーの株式1万株(取引額100万〜500万ドル)と、行使価格100ドル・満期2027年6月17日のコールオプション100枚(同100万〜500万ドル)を購入。4日後の7月28日には、同銘柄の株式5000株(50万〜100万ドル)と同条件のコールオプション100枚(50万〜100万ドル)を追加購入しており、ブルームエナジー関連だけで最大1200万ドル規模となる。同じ7月24日には、インテルについても行使価格50ドル・満期2027年6月17日のコールオプション50枚(25万〜50万ドル)と株式1万株(50万〜100万ドル)を購入しており、こちらは最大150万ドル規模。さらに7月27日には、サンフランシスコで高級ホテル物件の取得・改修を手がける不動産LLC「REOF XXV」への追加出資(最大100万ドル)も報告された。
ブルームエナジーは押し目からの急反発
ブルームエナジーの株価は、1回目の購入日である7月24日の終値が185ドル前後、2回目の購入日である7月28日の終値は167ドル前後まで下落していた。ちょうど四半期決算発表(7月28日)を控えて株価が調整する局面で、2回にわたって買い増した形になる。そして決算発表後、ブルームエナジーは記録的な内容を受けて急伸した。8月24日終値は204.02ドルまで回復しており、7月28日の購入水準からは約22%、7月24日の購入水準からも約10%の上昇となっている。コールオプションの行使価格100ドルに対して株価はすでに2倍前後の水準にあり、いずれの購入時点でも大きくイン・ザ・マネー(ITM)の状態だった。
一方、インテルは対照的な展開をたどっている。7月24日は、前日(7月23日)に発表されたQ2決算を受けて株価が急落した当日で、終値は92ドル前後。ペロシ議員はこの下落局面で株式とコールオプションを購入した形になるが、その後もインテル株は回復せず、8月24日終値は87.26ドルまでさらに下げている。半導体セクター全体の売り圧力に加え、8月に実行された200億ドル規模の公募増資による株式供給の増加(既存株主にとっては持ち分の希薄化要因)が重荷となっている。さらに、8月27日に控えるエヌビディアの決算発表を前にした警戒感も株価を抑える材料だ。
決算の中身:ブルームは初の10億ドル超え、インテルは増収も市場反応は厳しく
ブルームエナジーは7月28日、四半期売上高が初めて10億ドルを突破し、前年同期比166%増の10億6540万ドルに達したと発表した。製品売上高は215%増と急拡大し、通期売上高ガイダンスも39億〜42億ドル(中間値で前年比100%増)に上方修正した。KRシュリダール会長兼CEOは「主要ハイパースケーラー各社と十数社のニュークラウド、AIラボ、コロケーション事業者がすでに当社の電力ソリューションを採用・承認している」と述べ、AIデータセンター向けオンサイト電源の「標準」としての地位を強調した。営業利益は1億8220万ドルの黒字に転換し、営業キャッシュフローも2億2640万ドルのプラスに改善するなど、収益性の面でも大きな節目となる決算だった。
インテルのQ2決算は、売上高161億ドル(前年比25%増)と15年以上ぶりの高い成長率を記録した一方、GAAPベースのEPSは(2.16)ドルの赤字。non-GAAPベースでは0.42ドルの黒字を確保している。リップブー・タンCEOは「AIが計算需要を押し上げている」とコメント。データセンター・AI(DCAI)部門は前年比59%増と大きく伸びた。もっとも、決算内容自体は市場の期待に届き切らなかったとみられ、発表翌日の7月24日には株価が8%近く下落する場面もあった。
前回取引との比較 ― インテルへの強気は継続、テーマはさらに拡大
5月29日の取引(6月23日付で開示)では、インテルとウーバー(UBER)に対し、いずれも行使価格50ドル・満期2027年3月19日のコールオプションを200枚ずつ購入し、合計最大600万ドル規模の取引を行っている。今回はそのインテル向けの強気姿勢を維持しつつ規模はやや縮小(コールオプション50枚)する一方、ブルームエナジーという新たな銘柄に大型のポジションを構築した格好だ。半導体・モビリティに続き、AIデータセンターを支える発電インフラという異なるテーマへ投資対象を広げる動きとも読める。
REOF XXVへの追加出資も、上場株以外の資産に継続的に資金を振り向ける動きの一環とみられる。1月にはヴィストラのオプション行使やアライアンス・バーンスタイン株の取得を通じてポートフォリオの分散を進めており、今回の不動産投資もその延長線上にあると位置付けられる。
なぜペロシ議員の取引は注目されるのか
ペロシ議員は、夫ポール・ペロシ氏を通じた資産運用でも広く知られている。その運用成績は市場平均やウォーレン・バフェット氏を大きく上回るとされ、開示情報を追跡する専用サイトや投資商品の対象になるほど注目を集めてきた。一方で、議会の政策決定と投資タイミングが近接しているとして、利益相反をめぐる議論も絶えない。
エヌビディアの決算発表を控えて
エヌビディアは8月27日、市場引け後に決算を発表する予定だ。AI関連銘柄全体のセンチメントを左右する材料になるとみられ、ブルームエナジーやインテルなど、AIインフラに関連する銘柄の値動きにも波及する可能性がある。今回のブルームエナジー投資はすでに含み益、インテル投資は含み損とみられる状況だけに、ペロシ議員の次回の開示で値動きを受けたポジション調整があるかどうかが注目される。
議員の個別の株取引動向はcapitolowl.comで追跡中。
*本稿は事実の開示と市場の反応を整理したものであり、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。





