米連邦下院のジャレッド・モスコウィッツ議員(民主党・フロリダ州)が今週提出した株式取引開示報告書により、6月12日にナスダックへ上場したSpaceX(Space Exploration Technologies Corp./ティッカー:SPCX)の株式を購入した連邦下院議員が、少なくとも6人に上ることが明らかになった。
モスコウィッツ議員は下院外交委員会と司法委員会に所属する。7月26日付の開示報告書によると、同議員はSpaceXの上場初日である6月12日に、SPCX株を1,001~1万5,000ドルの範囲で購入した。同時期には複数の大型株も売買していた。
SpaceX株を購入した議員は少なくとも6人
これまでの開示報告書によると、上場からわずか数日の間にSPCX株を購入したことが確認されている議員(配偶者名義を含む)は以下の6人となる。
- 6月12日(上場当日) ジョン・ジェームズ下院議員(共和党・ミシガン州)の妻 $1万5,001〜$5万
- 6月12日 ジャレッド・モスコウィッツ下院議員(民主党・フロリダ州) $1,001〜$1万5,000
- 6月15日 ジョン・マクガイア下院議員(共和党・バージニア州)の妻 $1,001〜$1万5,000
- 6月15日 ダニエル・ミューザー下院議員(共和党・ペンシルベニア州) $1万5,001〜$5万
- 6月15日 ウィリアム・ティモンズ下院議員(共和党・サウスカロライナ州) $5万1〜$10万
- 6月18日 ギルバート・シスネロス下院議員(民主党・カリフォルニア州) $1,001〜$1万5,000
開示区分を基にすると、6人の購入総額は約8万3,000~24万5,000ドルと推計される。
上場来高値から半値に 決算・ロックアップ解除控え警戒感
SpaceXは6月12日、ナスダックに「SPCX」のティッカーで上場。IPO価格は135ドルで、初値は150ドルをつけた後、一時225.64ドルの高値を記録したが、以降は下落基調が続いている。7月29日の終値は112.55ドル(前日比3.3%安)で、初値からは約25%、上場来高値からは約50%の下落となり、IPO価格をも下回る水準となっている。8月4日の第2四半期決算発表と8月6日のロックアップ解除(発行済み株式の最大20%が売却可能に)を前に、警戒感が強まっている。
委員会と政府契約企業の重なり
注目されるのは、6人のうち5人が、SpaceXの事業と密接に関わる委員会に所属している点だ。
マクガイア議員とシスネロス議員は下院軍事委員会に所属し、国防総省や宇宙軍の予算・調達を所管する。ティモンズ議員は下院監視・政府改革委員会の軍事外交小委員会委員長を務めるほか、金融サービス委員会のデジタル資産・金融科技・人工知能小委員会にも所属している。モスコウィッツ議員も外交委員会のメンバーとして、安全保障政策に関与する立場にある。
SpaceXは政府契約への依存度が高い企業でもある。2025年の売上高の約20%は政府機関向け事業によるもので、IPO直前の2026年5月には米宇宙軍から総額64億5,000万ドル(41億6,000万ドルと22億9,000万ドル)の大型契約を相次いで受注した。その中には、トランプ政権が推進するミサイル防衛構想「Golden Dome」に関連する衛星ネットワーク構築契約も含まれている。
同社はIPO目論見書でも、政府予算や政策変更、規制の見直しが事業に重大な影響を及ぼす可能性があると説明している。
違法ではないが、利益相反の議論は続く
議員らによる株式購入自体は現行法の下では合法であり、現時点でインサイダー取引を示す証拠は報じられていない。
一方で、政府契約を所管する委員会に所属する議員が、その契約に大きく依存する企業の株式を保有することについては、利益相反を招きかねないとの指摘が以前から続いている。特に防衛・宇宙分野では、議会の予算や政策判断が企業価値へ直接影響するケースも少なくない。
議員の株取引禁止法案は前進も、成立は不透明
こうした批判を背景に、下院は7月22日、「Stop Insider Trading Act(H.R.7008)」を232対198で可決した。
法案は議員本人、配偶者、扶養家族による新規の個別株購入を禁止する内容だが、既存保有株の売買は引き続き認めている。このため民主党からは「抜け穴が残っている」との批判が出ている。
さらに、法案には連邦選挙での写真付き身分証明書の提示を義務付ける条項が盛り込まれたため、民主党は強く反発。共和党内からも適用対象を大統領や司法府へ拡大すべきとの意見が上がっており、上院での成立はなお不透明な情勢だ。
政府契約企業への投資をどう見るか
SpaceXは、防衛、宇宙、通信、AIインフラを支える米国を代表する政府契約企業へと成長している。そのため、議会の政策判断や予算配分は、同社の企業価値にも大きな影響を与える。
今回の開示で、SpaceX株を取得した議員は少なくとも6人となった。違法性を示す事実は確認されていないものの、政府契約企業を監督・所管する立場の議員による株式保有をどう考えるべきかという議論は、今後も続きそうだ。
議員の個別の株取引動向はcapitolowl.comで追跡中。





