モラーレポート「司法妨害の容疑を晴らすものではない」

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米司法省は18日、ロバート・モラー特別検察官のロシアゲート捜査に関する捜査報告書を公開した。

448ページにおよぶ報告書は第1部と第2部に分けられ、第1部ではロシアによる大統領選挙介入およびトランプ選挙陣営との共謀について、第2部ではトランプ大統領による司法妨害について報告された。

報告書の第一部によると、ロシアによる選挙介入は主に、トランプ氏が有利になるよう、対抗馬のヒラリー・クリントン氏を貶めるなどのソーシャルメディアキャンペーンと、ロシア情報機関によるクリントン陣営のコンピューターハッキングおよび侵入により盗み出した資料の公開を通じて行われた。一方、共謀の可能性については、「ロシア政府に関係する人物とトランプ陣営関係者の間に多数のつながりが判明した」としつつ、捜査によって、両者間の共謀または連携は立証されなかったと結論づけた。

第2部で検察官は、司法妨害を立証するに至らなかった理由について法的見解を示しつつ、ジェームズ・コミー元FBI長官の解任や、コミー氏に対するマイケル・フリン(Michael Flynn)前大統領補佐官の捜査終了の要求、ジェフ・セッションズ前司法長官のロシア捜査辞任の撤回、特別検察官の解任の試みなど、約10項目に上る大統領の言動が捜査の焦点となったことを明らかにした。

報告書は容疑を晴らすものではない

モラー特別検察官は冒頭、訴追か起訴取りやめかといった、伝統的な検察の判断を採用しないことを決定したとし、根拠として「現職の大統領を起訴または刑事訴追することは、憲法によって与えられた機能を行政府が執行するための能力を許容できないほど損なう。憲法で定めた権力の分立に違反する」という司法省の法的見解を受け入れたと述べた。加えて、司法省の見解がなくとも、現職の大統領に対する刑事訴追は、統治能力に負担となり、大統領の違法行為を扱うことは憲法上のプロセスを阻止する可能性があると見解を示した。

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一方、犯罪捜査自体は大統領の任期中も可能で、大統領の任期終了後は刑事訴追を免れることはない、という司法省の見解にも言及。これらの見解や刑事司法制度の尊厳を保護するという公的利益を踏まえ、記憶が鮮明で、資料の入手が可能なうちに証拠を保存するために徹底的な事実に基づく捜査を行った、と捜査目的を語った。

さらに公平性の問題についても言及。検察官が犯罪が行われたと判断しつつ、起訴しない場合、裁判で容疑を晴らすといった対審の機会が与えられないとし、「大統領が犯罪を犯したという判断につながる可能性のあるアプローチは採用しないことを決定した」と述べた。

また、現職の大統領の疑惑追及は、内部文書でさえも、刑事司法の範囲を超える結果を招きかねないと述べ、根拠として「機密を保持するのは大変困難である」「起訴が公になった場合、汚名と不名誉が、大統領の統治能力を危険にさらす」といった司法省の見解を示した。

これら法的解釈や捜査の性格を示した後、モラー検察官は「徹底的な捜査の後に、大統領が明らかに司法妨害をしなかったという事実に自信があるならば、我々はそのように表明をする。事実と法的基準を元に、我々はこの判断にいたることができなかった。大統領の行動と意図に関して我々が取得した証拠は、犯罪行為がなかったと結論付けるには難しい問題を表している。よって、この報告書は大統領が犯罪をしたことを結論づけないが、容疑を晴らすものではない」と結論を述べた。

司法長官の発表に矛盾

バー司法長官は、3月24日に提出した報告書のサマリーで、モラー特別検察官の結論を踏まえ、法律顧問室を含む司法省高官らと相談した結果、ロッド・ローゼンスタイン(Rod Rosenstein)副司法長官と自身が「特別検察官の捜査から得られた証拠は、大統領が司法妨害の罪を犯したことを立証するに充分ではないと結論づけた」と報告していた。さらに、この決定が、現職の大統領は起訴することができないとする司法省の見解となんら関係がないと、付け加えていた。