ハリス氏が単独インタビュー、経済プランの実現性に不安も

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カマラ・ハリス副大統領は26日、ピッツバーグの経済クラブで開いた選挙イベントで経済プランを発表し、続けてMSNBCの単独インタビューに応じた。国民が最大の関心を寄せる分野で、トランプ氏にいかにして優位に立つのか注目される。世論調査では経済対策でトランプ氏の方が良いと答える有権者が多いが、徐々にハリス氏が差を縮めている。

ハリス氏は、自ら「オポチュニティ・エコノミー」と呼ぶ政策の下、中流階級の消費者問題に焦点を当てた政策を発表している。これには初回の住宅購入者に対する手付金の補助、養育費の税控除の拡大、日用品の価格釣り上げを行う企業の取り締まりが含まれる。中間層の税率は据え置く一方で、企業や高所得者には増税によって「公正な負担」を求めるとしている。

産業界の指導者からはバイデン政権のビジネスに敵対的な姿勢を引き継ぐ可能性を懸念する声がある。また、共和党が上院を制するとの見方も強まっており、政策の実現性への疑問もある。

実現可能性は?

ハリス陣営に好意的とされるMSNBCだが、質問は経済プランの踏み込んだ内容におよび、ハリス氏のあいまいな回答が目立った。

共和党に上院を握られた場合、法人税率を上げずに中流家庭の優遇措置の財源をどこから確保するのかと聞かれたハリス氏は、「われわれは法人税を上げなければならない。大企業と億万長者が公平な負担を払うようにしなければならない」と回答。「まさにその通りだ。公正な負担を払うことだ」と直接の回答を避けた。

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企業の国外流出を防ぐことと「公正な負担」の線引きをどこに設けるのかと問われると、「産業界の指導者らは国民が公平な負担を負うべきだということに同意している」と説明。「中流階級への投資、新産業への投資、コスト削減への投資、スモールビジネスのような起業家への投資が、経済全体を強化し、全員が恩恵を受けるという点でも同意している」と続けた。

ハリス氏は、初めての住宅購入者に対して資金支援を提供すると同時に、政府主導で4年間で300万戸の新築住宅を建設する計画を掲げている。

政府が州や地方自治体が設ける厳格な規制や手続きをクリアできるのかという質問で、ハリス氏は、自身のプランには、民間への税制優遇措置に加えて「官僚主義を断ち切らなければならないことが含まれる」と説明した。ただし、「住宅建設には時間がかかりすぎ、官僚主義が多すぎる。私は熱心な公務員としてそう言っている。官僚主義を減らし、建設に関する必要なことを迅速化する必要があることを理解している。そのために連邦政府から州政府や地方自治体と協力する必要がある。地域のニーズ、地方政府、自治体のニーズに応じて、場所によって異なるが、協議と調整を行い、私たちが作成可能なインセンティブを中心に取り組む必要がある・・・」と遠回しな話を続けた。

住宅価格の高騰を抑える政策は、ハリス氏の公約の中で超党派の支持を得やすい可能性が指摘されているが、専門家からは懐疑的な意見も上がっている。

物件リスティングサイト大手のRedfinのチーフ・エコノミストは先月、CNBCの取材に、政府の権限には限界があると指摘。「インセンティブを得るために、住宅の増設を許可するかどうかは地方計画委員会の決定次第」であり、これまでに「住宅の増設に非常に激しく抵抗しており、インセンティブを無視している」と問題を語った。

「資本主義者」として、企業に対する価格釣り上げの取り締まりを「価格統制」を行わずにいかにして実施するのかという質問を受けると、「私は国民の絶望につけこむ企業や法人を取り締まってきたことを決して謝罪するつもりはない」と州司法長官時代の実績をアピール。ただし、質問への明確な答えは見送った。

ハリス氏の提案は、エリザベス・ウォーレン上院議員(民主党 マサチューセッツ)が今年2月に提出した法案とほぼ同様であると指摘されている。連邦取引委員会(FTC)と州司法長官に、市場支配力を利用して「法外な」値段で商品やサービスを販売しようとする企業を罰する権限を与えるものとされる。「法外」の定義は連邦取引委員会に委ねられることになる。民主党の議員らは、ポリティコに対して、ホワイトハウスを奪還しても、同様の法案が議会を通過する見込みは低いと非公式に語っているほか、FTCの追加予算の獲得に苦労する可能性が高いとの見通しを示している。

一方、トランプ氏について、2016年の約束の多くを守れなかったと批判。「約束が破られたと主張する者もいる」と語った。トランプ氏が目玉に据える一律関税について、「彼はこれらの問題について、真剣に考えていない」と述べ、「真剣になって本当の計画を立てなければならない。選挙集会の話題づくりのトーキングポイントにするのではなく、投資に対するリターンは何か、一般人への経済的影響は何かを考えなくてはならない」と加えた。ハリス氏は、トランプ氏の関税計画は、国民に追加で年間4,000ドルの負担をもたらすと試算を示している。