NYグランドハイアットホテル解体。変わるミッドタウンイースト

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グランドハイアット
©mashup NY

住宅開発業者のTFコーンストーン(TF Cornerstone)と、マイケル・デル氏の投資会社MSDパートナーズ(MSD Partners)は、グランドセントラル駅付近の26階建てホテル、グランドハイアット(Grand Hyatt)を解体し、新たにホテルやオフィスなどの多目的ビルを建設すると発表した。7日ウォール・ストリート・ジャーナルが報じた。

Curbed NYなどによると、200万平方フィートの敷地には、オフィスビルや小売スペース、現在よりも小さい規模のグランドハイアットが建設される。
工事に伴い、グランドセントラル駅も新たな入り口が設けられるなど、アクセスの利便性の向上を図る。
グランドハイアットは、再建築の際に、100年間のリース契約を締結しており、期限は2077年までとなっている。開発業者はハイアットからリース契約の移転が必要となるが、州や市の許可が必要となる。
現在のホテルの営業は、2020年末までを予定している。

トランプ氏も一時所有

1919年建設のボザール建築のホテルは、ワレン&ウェットモア(Warren & Wetmore)によって設計された。完成当時は、海運業と鉄道業で名を馳せた実業家コーネリアス・ヴァンダービルト(Cornelius Vanderbilt)氏にちなみ、「コモドール・ホテル」(Commodore Hotel)と名付けられた。かつては世界一美しいロビーと、街で一番大きな客室を備えるホテルとして、旅行客の間で人気だったという。

1970年代に不動産業を営むドナルド・トランプ(Donald Trump)氏が、建て替えとリノベーションを実施。レンガ造りの壁面は、光沢感のあるブロンズカラーのガラスとアルミニウムで覆われ、現在のグランドハイアットとなった。トランプ氏がマンハッタンで初めて手がけた大規模開発だが、ホテル建設にあたり、市から40年間3億6千万ドル以上の巨額な優遇税制措置を受けており、非難の対象となっている。ホテルは1996年に売却され、2011年に1億3000万ドルを投じた改装を行った。

変わるミッドタウンイースト

グランドハイアットの解体は、ニューヨーク市の「2017ミッドタウンイーストリゾーニング」計画の一環として実施される。
昨年は、JPモルガン・チェース(JPMorgan Chase & Co)の本社、270パークアベニュー(270 Park Avenue)の52階建て高層ビル(Union Carbide)の解体と建設が発表された。Gothamnistによると、270パークアベニューは、高層ビルの解体工事としては世界最高の高さとなる予定で、建築評論家や保護主義者らから、異論を唱える声が上がった。

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近代建築の記録と保存を目的とする国際学術組織、ドコモモ(DOCOMOMO)ニューヨーク支部の役員メンバー、カイル・ジョナサン(Kyle Johnson)氏は、「区割り変更の目的の一つは、既存の建物を大きなものへと置き換えることを推奨するもので、本質的には持続可能性に逆行している。」と述べている。

ワン・バンダービルト
建設中のOne Vanderbilt©mashup NY

その他の計画では、SLグリーン・リアルティ(SL Green Realty Corp)が、建築費用予算31億ドル(約3,500億円)を投じ、ワン・ヴァンダービルド(One Vanderbilt)を建設中。同ビルは、2020年8月完成を予定している。