NY市 危険な運転手に車の没収の可能性、法案通過

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ニューヨーク市議会では11日、無謀な運転を繰り返すドライバーの取り締まりを強化する法案「無謀運転手の責任に関する法(Reckless Driver Accountability Act)」が通過した。

法案は「危険車両排除プログラム(Dangerous Vehicle Abatement Program)」と呼ぶ、無謀運転をするドライバーを削減するための3年間のパイロットプログラムの実施を目的としたもの。同プログラムでは、12か月間で赤信号監視カメラに5回以上の違反が検出、または15回以上のスピード違反を繰り返したドライバーを対象に、安全運転コースの受講を義務付ける。教習を受けなかった場合、車が没収される可能性がある。

法案が成立した場合、2020年秋から違反チケットを受けたドライバーに、違反がプログラムにカウントされることを通知する。また、最初の安全運転コースは2021年初期にスタートする。

市運輸局は、現在のデータをもとに、初年度で5,000車両が対象となると推計している。

3年間のパイロット期間が終了する少なくとも3か月前に、運輸局がプログラムの実効性およびドライビングの特性と交通事故の関係に関する報告書を作成する。

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法案は、2017年にブルックリンのパークスロープで起きた赤信号を無視した自動車による死亡事故をきっかけに、2018年にブラッド・ランダー(Brad S. Lander)議員が提出した。同事故では、2人の子供の命が失われたほか、それぞれの母親が重傷を負った。母親の一人は、トニー賞受賞女優のルーシー・アン・マイルズ(Ruthie Ann Miles)さんで、妊娠中だった。翌年、マイルズさんはおなかの子の命を失った。胎児の死について医師は、衝突による怪我によるものと述べた。

ニューヨークタイムズによると、事件を起こしたドロシー・ブルンズ(Dorothy Bruns)氏は事故当時、多発性硬化症と発作の症状のため、医師から運転を控えるよう命じられていた。運転記録に問題はなかったが、ブルンズ氏の運転するボルボが、4回にわたって学校周辺で高速走行していたことを示す市の記録があった。さらに、4回の赤信号無視を監視カメラに捉えられていた。

ブルックリンの検察は同氏を過失致死や無謀行為など複数の罪で起訴したが、 Bruns氏は保釈中の2018年11月、自宅で自殺をはかって死亡した。有罪となった場合、最長で禁錮15年の刑を受ける可能性があった。

法案通過を受け、市議会のコーリー・ジョンソン議長は「安全な道路に向けた市議会の戦いにとって、この法案の通過は大きな一歩だ」と喜びを語り、「この法を現実のものとする努力を誇りに思うべきだ。この成功の上にさらに、車による死や怪我を恐れて生活する必要のない都市のために戦いを続ける」と語った。

自転車乗用中の交通事故死者数が急増

ビル・デブラシオ市長は道路の安全を最優先事項に掲げ、2024年までに交通事故による死者数をゼロにする「ビジョン・ゼロ」計画を推進している。2014年の就任以来、交通事故による死者は減少し、2018年に過去最低の203人となったが、昨年は219人に増加。このうち28人が自転車乗用中の事故で、前年の10人から大幅に増加した。

対策を求める声の高まりを受け、デブラシオ市長は昨年、車道と分離した自転車専用道路(protected lanes)の増設や、事故が多発している交差点への警察官の配備、交通職員の増員などが含む5,840万ドル(約64億円)の安全計画を発表した。