支持率なんて関係ない?伝記作家が驚くトランプの現実歪曲力

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Andrew Leyden / Shutterstock.com

「怒りと炎」をはじめ、トランプ大統領に関する4冊の伝記本を手がけてきた作家マイケル・ウォルフによれば、トランプにはいまも理解しがたい特殊な能力がある。
——それは、自らの“現実”を作り出し、人々にそれを信じ込ませる力だ。

3日に配信されたデイリービーストのポッドキャストに出演したウォルフは、トランプが人気を誇示したり、中国との交渉で「勝利」をアピールしたりする姿を挙げながら、こう語った。
トランプの現実は、実際とは正反対のものでありながら、「驚くほど強力」で、「最もよく通用する現実」に見えてしまう。それが「トランプ時代の極めて混乱させる点だ」。

陣営のスタッフたちもまた、その“二重スクリーンの現実”に驚かされていたという。
「現実には起きていないが、トランプが意志の力で作り出した現実があった。選挙キャンペーンのスタッフでさえ、それが現実だということに誰よりも驚いていた。本当の現実ではない現実が、ほぼ常に勝ってしまうのだ」。

ウォルフによれば、こうした現実の作り方は過去のどんな指導者にも当てはまらない。 「強権的指導者は戦略的で、政治的で、計画を持って行動するものだ。しかしトランプの戦略は自爆に見える」。

彼は、導入と撤回を繰り返す関税政策や、ホワイトハウス改装の突発的な提案、中国との交渉などを例に挙げ、「計画性が感じられない。自分が何をしているのか分からず、目の前の出来事に反射的に飛びついているようだ」と述べた。 こうした混乱や失敗は、通常であれば不人気を招く。しかしトランプの場合、それが長く続くことはない。
「二週間もすれば忘れ去られる。彼が『大勝利だ』と言えば、人々はそれを信じようとする」。

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ウォルフはまた、野党側の問題にも触れた。
「民主主義には、失敗を思い出させる仕組み、つまり野党が存在する。〜しかしトランプが現実を作り上げる力を持っているのに対し、民主党側は自分たちの現実を打ち立てたり、対抗馬となる現実を提示する力が決定的に不足している」。 トランプが“現実”を作り上げる一方で、対抗する側にはそれを上書きするだけの物語がないというのだ。

実際、トランプの支持率は下降を続けている。CNN/SSRSによる最新の調査では支持率37%、不支持63%。政権開始直後の47%から10ポイント低下した。特に無党派層での支持は、2月の43%から28%にまで落ち込んでいる。 4日に投開票されるニュージャージー州とバージニア州の州知事選では民主党候補が優勢と伝えられ、来年の中間選挙に向けて党勢回復を期待する声もある。

それでもウォルフは、「こんなことは以前にも経験がある」と言う。 2018年の中間選挙の大敗、2020年の大統領選の敗北——いずれも致命的にはならなかった。 「普通なら、悪いニュースだと思って方向を変えるものだが、彼はそうしない。どんな失敗でも勝利だと宣言し、証拠に反して多くの人々を納得させてしまうんだ」。