ニューヨークのアジア系有権者に起きている変化とは

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1994年以来の接戦と報じられた昨年11月のニューヨーク州知事選。大きなシフトがアジア系有権者の間に起きていることがわかった。

ニューヨークタイムズは5日、2018年に比べ、ニューヨーク市内のアジア系の多い選挙区で共和党の支持が急上昇したと分析を示した。市全体としても共和党へのシフトが観測されているが、これらの地域の変動は市の平均を大きく上回った。タイムズは、地域全体としては民主党が依然として優勢だが、データが入手可能な2006年以来、最大のシフトが起きたとしている。

ちなみに選挙結果は、現職のキャシー・ホークル氏と敗北した共和党のリー・ゼルディン候補の票差は5.8%だった。ニューヨーク市内に関しては、約4,000の選挙区のうち1%を除くすべての選挙区で共和党が票を伸ばした。

アジア系住民はニューヨーク市の人口の約14%を占め、市の有権者の中で最も急速に成長しているグループとされている。

チャイナタウンのあるブルックリンのサンセットパークとベンソンハーストでは、共和党が民主党を逆転。ゼルディン氏の支持が上回る結果になった。クイーンズのフラッシングやベイサイドといった中国系と韓国系の集中するエリアの多くの選挙区でも、同様の現象が起きた。一方、マンハッタンのチャイナタウンとクイーンズのリッチモンドヒルでは民主党の支持は揺るがなかった。

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こうした変化について、専門家や地域の指導者は、共和党候補者がアジア系居住区で存在感を増していることに加え、民主党指導者に見過ごされているという感覚が住民の中にあることや、犯罪に厳格な共和党の姿勢が住民を惹きつけているといった見解を示している。

一方で、アジア系コミュニティの指導者らは、2018年に当時市長だったビル・デブラシオ氏が示したエリート公立高校の入試制度の変更に関する提案が、危機感を促したとも指摘したという。

市内には「学業や芸術面で優れた生徒の教育ニーズ」を満たすことを目的としたスペシャライズド・ハイ・スクールと呼ばれるエリート校が9校あり、このうちの7校は、SHSATと呼ばれる入試試験のみで合否が判定される。デブラシオ市長は当時、黒人やラテン系の入学者を増やすことを目的に、SHSATに代えて、中学校でのクラス順位や州全体の標準テストのスコアに基づいて入学を許可する方式への変更を唱えた。変更した場合、生徒の過半数を占めていたアジア系の生徒数が半分になるとみられている。

なおニューヨークポスト紙の2019年3月の報道によると、当時最新の試験の合格者は、アジア系が51.7%、白人28.5%、ヒスパニック6.6%、黒人4%だった。