8日に投開票が行われた米中間選挙では、民主党が当初の予想よりも善戦。共和党のレッドウェーブは、「さざ波」に終わったなどと皮肉の声が上がった。しかし民主党の牙城ニューヨーク州では、現職に敗れたものの、トランプ支持の共和党知事候補が票を伸ばし、僅差となった。また連邦下院選では、4議席を奪還した。
知事選では、初当選を果たした現職のキャシー・ホークル知事(52.9%)と、対抗馬リー・ゼルディン下院議員(47.1%)との得票差は、現段階で5.8%となり、1994年の知事選(ジョージ・パタキ対マリオ・クオモ)以来の接戦となった。

ゼルディン氏は、9日の敗北宣言で、ホークル氏の初当選を祝いつつ、「ブルー中最もブルーの都市で、一世代に一度のキャンペーンだった」と成果を振り返った。続けて「みな経済や安全、自由、子どもたちの教育の質が脅かされていることに嫌気が差しており、ホークル陣営は、住民が我慢の限界に達したことに気づくべきだ」と警告した。
ニューヨークタイムズが公表した2020年大統領選とのマージン比較では、州全域が共和党寄りとなった。
Good night for Dems nationwide but we had better learn this lesson and quick in NY. pic.twitter.com/xExvIFtT40
— Brian P. Mangan (@brianpmangan) November 9, 2022
ニューヨーク市内では、スタテン島や、ロシアやウクライナ移民が多いサウスブルックリン、ユダヤ教の超正統派コミュニティのあるウィリアムズバーグ周辺の住民がゼルディン氏を支持した。
マンハッタンのマーク・レヴィン区長(民主党)は、2014年と2022年の選挙結果をツイッターに投稿し、党再建の必要性を訴えた。
General election results in NYC, 2014 v 2022
— Mark D. Levine (@MarkLevineNYC) November 10, 2022
Clearer than ever that Dems must do more to speak to the concerns of diverse, working class communities where we’re losing.
We need to rebuild Dem structures for real organizing & outreach on the ground. We can’t ignore this anymore. pic.twitter.com/WMgw5gJ4YN
下院は民主党が多数派を維持しているが、ニューヨーク市郊外の激戦区は、ほぼ全ての選挙区で共和党が勝利を収めた。
ハドソンバレー(17区)では、民主党下院議員選挙運動委員会のトップを務めるショーン・パトリック ・マロニー下院議員が、共和党のマイク・ローラー州議会議員に敗北を喫した。タイムズによると、選挙対策委員長が議席を失うのは、両党で30年ぶり。
ゼルディン氏の地元ロングアイランドでは、共和党が4議席を独占した。ゲイを公表した候補者同士の対決となった第3区では、共和党のMAGA候補ジョージ・サントス氏が、現職のロバート・ジマーマン下院議員を破り、初当選を果たした。
民主党苦戦の要因は?

「ディープ・ブルー」のニューヨーク州が、今回共和党寄りに傾いた理由に関して、政治ジャーナリストのロブ・バーカン氏はアトランティックへの寄稿で、選挙区の再編成に失敗したことや、犯罪の増加、ホークル氏の選挙活動が有権者にアピールしなかったことを理由に挙げた。
今回敗北した選挙対策委員長のマロニー氏は、メディアが有権者に与えた影響を指摘。ニューヨークタイムズのインタビューに対し、ニューズコーポレーション傘下のニューヨークポスト紙は、治安の悪化に焦点を当てた報道を展開し、Foxニュースを含む保守系メディアの「ヒステリーと戦う必要性」に迫られたと振り返った。さらに、影響力を持つ若手左派のアレクサンドリア・オカシオ・コルテス下院議員について、資金や政治運営の面で、民主党候補者を支援しなかったと非難した。
一方、オカシオ・コルテス氏は、ニューヨーク州民主党委員会のトップを務めるジェイ・ジェイコブス氏の責任を指摘し、辞任を求めた。
4年前の知事選で、20ポイント差で共和党候補を破ったアンドリュー・クオモ前知事は、地元のラジオ番組で、共和党の勝利は「民主党が犯罪否定論者になれなかったことだ」と指摘。今回の選挙結果は「真の警鐘」と述べた。
ポリティコによると、司法委員会委員長のジェロルド・ナドラー下院議員は8日、民主党の地域における犯罪増加は「共和党のマントラ」と批判しつつも、実際に犯罪は増加していると述べ「有権者に適切なメッセージを送ることができなかった」と陣営の非を認めた。
一方、左派のストラテジスト、ゲイブ・トビアス氏は「犯罪パニックは、右派が選挙のたびに作り出す移民のキャラバンのようなもので、ひねくれた戦略」と批判。激戦区ペンシルベニア州の上院選で勝利を収めたフェッターマン副知事を引き合いに出し、「勝者は、経済的正義と中絶に焦点を当てている」と反応した。