コロナ憎悪犯罪 アジア人親子をナイフで襲った男、禁錮25年に

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テキサス州ミッドランドにあるスーパーマーケット、サムズ・クラブで、アジア人家族をステーキナイフで襲い負傷させ、憎悪犯罪などで有罪となった男に禁錮25年の刑が言い渡された。4日、米司法省が明らかにした。

刑が確定したのはテキサス州ミッドランド在住のホセ・ゴメス・III被告(21)。自身が認めた事実によると、ゴメス被告は2020年3月14日、ミッドランドにあるサムズ・クラブで、買い物に訪れていた面識のないアジア人家族を中国人だと決めつけ、「病気を拡散した国から」来た「脅威」だと認識。数分間後をつけ回し、ステーキナイフを探すために一時離れた。ナイフを見つけると「刃を折り曲げ、持ち手を握った際に、指の関節に対して刃が外側を向くよう」に加工。家族のもとに戻り、父親を殴り、切り傷を負わせた。その後、もう一度家族から離れたが、今度は刃渡り20センチメートルのナイフを持って、ショッピングカートに座っていた6歳と2歳の子供に向かって直進。6歳の子供の顔を切りつけた。傷は子供の右目からわずか数ミリの場所から右耳を周り、後頭部まで達したという。この後、犯行を止めに入った白人の従業員を刺した。取り押さえられる間、アジア人家族に向かって「アメリカから出ていけ」などと叫んだ。

ゴメス被告は、コロナウイルスがアジア人家族のせいだと考えていたほか、6歳の子供に殺意を抱いていたことも認めたという。

刑の宣告を受け、司法省市民権局のクリステン・クラーク検事補は「パンデミックが引き起こした人種差別を発端とする犯罪は嘆かわしい。司法省では、憎悪犯罪関連の法を駆使して加害者に責任を負わせる準備が整っている」と声明を発表。「パンデミック期間にアジア系アメリカ人を標的とした増悪犯罪が増加しており、これに対処しなければならない。人種、肌の色、出身国に関わらず、全ての人々が地域社会で安心して生活ができると感じる権利がある」と述べた。

FBIのエルパソ支部を統括するジェフリー・ダウニー特別捜査官は「ゴメス氏の卑怯で人種差別的な行動は、ウェスト・テキサス・コミュニティを代表するものではない」と非難。「判決により被害者の傷が癒えることを祈っている。安心していただきたいが、FBIと捜査機関は、全てのアメリカ人の人権を守るために、このような犯罪は誰であろうとも容赦しない」と語った。

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アジア系に対する憎悪犯罪を追跡する団体「Stop Anti-Asian Pacific-Islander Hate」の集計によると、2020年3月から2021年6月までに起きたアジア系を標的とした憎悪事件は、言葉の暴力から身体的な嫌がらせを含め、9,000件を超えている。このうち半数は反中国人的な感情がからんだもので、事件の3分の1には、反中国人または排外的なレトリックが含まれているとしている。