キャシー・ウッド率いるARK Invest(アーク・インベスト)が、この1週間でAMD株(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)を約9,622万ドル(約154億円)売却した。同社が運用するアクティブETF6本のうち、AMDを保有する5本すべてで売られ、今週を通じて最大の売り越しとなった。
代わりに買われたのは、NVIDIA、Broadcom、Cerebras、Cloudflare。AIインフラ関連はネットで約4,640万ドルの買い越しだった。
ただし、この入れ替えはまだ終わっていない。8月28日時点の保有額はNVIDIAの3億3,360万ドルに対し、AMDは4億3,940万ドル。保有額ではAMDがNVIDIAの約1.32倍だ。
決算をはさんだ4日間
今週のAMD売却は、週の前半から始まっていた動きだ。
8月25日(火)、ARKWでAMDを売り、ほぼ同額のCerebrasを買っている。NVIDIAが決算を発表する前日である。
8月26日(水)、AMDの売却は4本のETFに広がった。買いの受け皿となったのはCerebras、Cloudflare、Broadcom。そしてこの日の取引終了後、NVIDIAが2027年度第2四半期の決算を発表する。
8月27日(木)、NVIDIA株は4%上昇。同じ日、Jefferies主催の半導体会議で、演算・光通信・メモリの供給制約が議題に上がった。
8月28日(金)、ARKはNVIDIAを5本すべてのETFで買い、AMDを5本すべてで売った。週内で最大の動きだった。
AMDの売却は、NVIDIAの決算数字が公になる前から動き始め、決算発表とその後の株価反応を経た金曜日に、全ファンド横断の規模へ拡大した格好だ。
伸び率は互角、規模は13倍
8月26日に発表されたNVIDIAの決算は、売上高962億ドル、前年同期比106%増。市場予想の921.7億ドルを上回った。うちデータセンター部門が890億ドルで、前年同期比117%増である。第3四半期の見通しは1,080億ドル。しかもこれは、中国向けデータセンター売上をゼロと想定した数字だという。
ジェンスン・フアンCEOは「AIは変曲点に達した。いまや計算そのものが売上だ」と述べている。コレット・クレスCFOは、2028年度の売上成長率を70%と提示した。市場コンセンサス(40% 台半ば)を大きく上回る水準だ。
一方のAMDも、数字自体は悪くない。8月4日に発表した2026年第2四半期(6月27日締め)は、売上高115億3,600万ドルで前年同期比50%増の過去最高だった。データセンター部門は67億1,800万ドル、前年同期比107%増で、全社売上の58%を占めるまでに育っている。伸び率で見れば、NVIDIAと遜色ない。
違うのは規模である。890億ドル対67億ドル。13倍を超える開きがある。
問題は成長率ではなく、供給枠の順番
決算の数字以上に効いている可能性があるのが、供給の問題である。
AIアクセラレータには高帯域幅メモリ(HBM)が欠かせないが、その供給は業界全体で逼迫している。NVIDIA自身が、限られたダイを引き延ばすために、当初仕様の12段HBM4Eから8段HBM4への切り替えを検討していると報じられた。業界首位が供給優先順位を事実上決めている状況では、他社が受ける影響はより大きい。
AMDもこれに備えている。在庫を約85億ドルまで積み増し、現金・同等物を131億ドル保有して調達余力を確保した。負債比率6.4%、流動比率2.6倍と財務は健全で、メモリの割当を先に押さえる体力はある。
それでもHSBCは2026年5月、生産能力の制約を理由にAMDを「Hold」へ格下げし、2026年・2027年のEPS予想を引き下げた。挙げられたリスクは「需要に応えられない持続的なファウンドリ能力の制約」と「TSMCの生産枠をめぐる他社との競合」である。
ARKが動いたのは、成長率の話ではなく、供給枠をどちらが先に押さえるかという話として読める。
入れ替えは、まだ半分も進んでいない
今週の数字で最も重要なのは、売った額ではなく、残っている額かもしれない。
9,622万ドルを売ってなお、ARKのAMD保有は4億3,940万ドル。NVIDIAより1億580万ドル多い。
売却の規模自体は、他とは明らかに水準が違う。今週売られた主な銘柄を、8月28日時点の残高に対する比率で見ると、CrowdStrike 5.5%、Roblox 4.2%、Twist Bioscience 4.0%、Tempus AI 3.6%と、いずれも一桁台の前半にとどまる。
AMDだけが20%超である。
1週間で保有の4分の1に相当する額を売り、それでもまだ最大の半導体ポジションであり続けている。仮に同じペースが続くとするならば、AMDとNVIDIAの順位は1週間ほどで入れ替わる計算になる。
ゲノムでは、別の入れ替えが進む
ゲノム関連は今週1,958万ドルの売り越しだったが、中身は撤退ではなく組み替えである。
売られたのはTempus AI、Twist Bioscience。買われたのはVeracyte、Generate Biomedicines、Intellia Therapeutics。研究機器や解析装置を減らし、医療AIや創薬の側へ資金を移している。
ただしTempus AIは、2,114万ドル売られてなお6本合計で5億8,380万ドルを保有している。ARKKでは2番目、ARKGでは3番目の大きさだ。「売られた」という事実だけを取り出すと実態を見誤りやすい。
このほか、Brera HoldingsとRobloxがそれぞれ4営業日連続で売られ、ARKFとARKWが3iQ Solana Staking ETFを買い増している。
なお、ARK が公開しているのは、運用チームが判断して売買した分に限定されている。投資家が ETF を解約したことによる売却や、新規上場・追加公募での取得は含まれない。したがって今週の数字は、そのまま ARK の意思と読める。ただし、これは資金の増減を示すものではない。






