「アメリカ人男性の証」?米で牛肉消費量が減らないわけ

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世界最大の牛肉消費国アメリカ。その半分は、12%の消費者によるものだという。

最近発表された調査結果によると、米国で「不均衡に」牛肉を食べているのは、女性よりも男性で、50代〜65歳が多い。大卒は少なく、健康的な食事に関する情報を提供する教育プログラム「MyPlate」を受けていない人々の割合が多いことがわかった。

気候危機に大きな影響を与えている要因の一つとして、食料生産による温室効果ガス(総排出量の全体の3分の1)があげられる。その中で最も影響が大きいのは、牛が排出するメタン。二酸化炭素の25倍の温室効果があるとされている。

グローバル・フード・リサーチ・プログラムの研究者らは、牛肉の消費量を削減するには、この不均衡な肉の消費者をターゲットとしたキャンペーンが「有効な可能性がある」と主張している。

肉食はアメリカ人としてのアイデンティティ

ただし専門家は、アメリカ人の肉の消費には、歴史的かつ文化的な背景があり、大幅に削減するのは、困難との見方を示している。

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肉食が米国に与えた影響を考察する「Red Meat Republic」の著者ジョシュア・シュペヒト(Joshua Specht)氏は英紙ガーディアンに、肉はヨーロッパからの入植者が、先住民を一掃し、バイソンを狩った際に初めてもたらされたと説明した。19世紀後半の西部開拓時代には「国家のアイデンティティのコア」となっており、「歴史的に、米国で成功した人物になることは、牛肉を食べることを意味する」と語った。

肉は「アメリカ人であることの証し」であり、 「肉、アップルパイ、アメフト、トラックの所有が、アイデンティティの標識となっている」と加えた。

ちなみに、牛肉の消費量を削減を訴えるリベラル派に対し、保守派の議員は「キッチンに手を出すな」「ハンバーグラー」(ハンバーガーと窃盗を意味するバーグラーを組み合わせた造語)と批判の声を上げている

なお、牛肉を鶏肉に置き換えると、食料からの二酸化炭素排出量を毎日48%減少させることができるという。

チューレーン大学で栄養学を専門とするディエゴ・ローズ教授は、「牛肉は安いと思っているだろうが、われわれが認識している以上に高い代償を支払っている」と指摘。牛肉の消費が、健康と環境に与える影響を理解することで「一部の人は、食べる量を減らすようになるだろう」と語っている。