トランプ大統領は9日、ホワイトハウスで開かれた閣僚会議で、アンティファによる犯罪およびその資金提供者への取り締まりを一段と強化する方針を明らかにした。政権は先月、アンティファを「国内テロ組織」に指定している。
会議でパム・ボンディ司法長官は、アンティファを「国内の左翼テロ組織」と位置づけ、1月以降ICE(移民税関執行局)に対する攻撃が約1,000%増加したと報告した。「麻薬カルテルを解体したのと同様に、一つひとつの組織をつぶす。組織全体を上から下まで解体する」と述べた。
また、クリスティ・ノーム国土安全保障省長官は、アンティファを「MS-13、TDA(トレン・デ・アラグア)、ISIS、ヒズボラ、ハマス」といった高度に組織化された犯罪グループと同等の脅威とみなし、「彼らの目的は米国民の生活を破壊することであり、各都市での暴力行為の資金調達経路と提供者を突き止める」と語った。さらに、最近ポートランドで拘束した数十人のなかに「アンティファの創始者の恋人」が含まれており、「起訴する予定だ」と明かした。
だが、ここで立ち上がる素朴な疑問——「アンティファの“創始者”って誰?」
アンティファは特定の指導者や組織構造を持たない、反ファシズムを掲げる緩やかな左派ネットワークとして知られる。元FBI長官クリストファー・レイ氏も2020年の議会公聴会で「アンティファは組織というより、むしろイデオロギーだ」と述べていた。また、その名称は「アンチファシスト(反ファシズム)」の略称で、その起源は1932年頃にドイツ共産党(KPD)が主導した反ファシズム運動に遡る。
そのため、ノーム長官の「創始者の彼女」発言に対してはSNS上で即座にツッコミが殺到。
「そんな人物いないでしょ」「“彼女”ってだけで起訴されるのか」など、半ばジョーク混じりの投稿が相次いでいる。
さらに、反応は政治批判へと発展している。
「反ファシストが違法なら、ファシストだけが合法になるのか」
「なぜ“反テロリスト”を敵視するのか」
「私の父は第2次大戦で戦った反ファシストだ。彼も“アンティファ”だった」
といった声が広がっている。
アイゼンハワー大統領がパットン将軍と握手する写真に「この人たちもアンティファだった」と添えたり、「ノルマンディーとアーリントン墓地で偉大な戦没者たちを検挙する姿を想像してみて」と皮肉る投稿も拡散中だ。
「創始者の彼女」の実態は不明だが、対象の範囲が曖昧なままの取り締まり強化には、反ファシズム思想の信奉者全体が対象となる懸念や、思想・言論・結社の自由を保障する憲法修正第一条の権利侵害につながる危険性が指摘されている。CNNによれば、政府が外国の指定テロ組織に物質的支援を提供することは違法だが、そもそも国内の団体を対象とした同様の法律は存在しない。