外交の裏側で加速、トランプ一族のビジネスと中東の気になる接点

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Trump Tower
©mashupNY

トランプ大統領は5月13日から16日にかけてサウジアラビア、カタール、アラブ首長国連邦を歴訪する。だが、この外交日程の裏では、トランプ氏一族のビジネスが中東で急速に拡大しており、透明性や利益相反の観点から懸念が高まっている。

4月30日、カタール東海岸スムアイスマにおけるトランプ・ブランドの新たなリゾート開発が発表された。カタール投資庁の子会社の不動産投資会社「カタール・ディアール」が主導するこのプロジェクトは、総額55億ドルに上るとされるビーチサイド再開発の一環。「ラグジュアリーな18コース、ゴルフクラブ、高級ヴィラ」を建設するとしている。ドバイのDar Global PLCが担当し、トランプ・オーガニゼーションとライセンス契約を結んで進められる。

署名式には、トランプ大統領の息子で、オーガニゼーションを率いるエリック・トランプ氏が出席し、カタールの政府関係者と写真に納まった。

この前日、エリック氏はドバイで建設計画を進める「トランプ・タワー・ドバイ」のセレモニーにも出席した。同様にDar Globalと組んだプロジェクトで、2031年の完成を予定している。ニューヨーク・タイムズによると、式典後には1戸あたり最大2,000万ドルという高額ユニットの販売が開始された。

トランプ・オーガニゼーションとDar Globalは現在6つのプロジェクトを中東を中心に進めているという。

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中東の政府系ファンドの資金流入はこれにとどまらない。トランプファミリーの暗号資産ビジネス「World Liberty Financial」のファウンダーの一人、ザック・ウィトコフ氏は、ドバイで開催された暗号通貨のイベント「Token 2049 」で、同社のステーブルコイン「USD1」がアブダビの政府系投資会社MGXと世界最大の暗号資産取引所バイナンスとの間の取引で使われると発表した。イベントにはエリック氏も参加した。ザック氏は、トランプ政権で中東問題を担当するスティーブ・ウィトコフ氏の息子だ。

MGXがWLFに預金する額は20億ドルに上るとされ、その運用益は同社にとって莫大な利益となる。ニューヨーク・タイムズは、この取引だけでトランプ家とそのパートナーに年間数千万ドル規模の収益をもたらす可能性があると指摘している。

カタールから大統領専用機を「贈与」?

さらなる波紋を呼んでいるのが、カタール王室がトランプ政権に約4億ドル相当のジャンボジェット機を「贈与」する計画だ。ABCニュースによれば、この「空飛ぶ宮殿」はトランプ氏の大統領専用機として使われる予定で、任期終了後には「トランプ大統領図書館財団」へ移管される方針が検討されている。

この件に対し民主党議員からは「明白な利益供与」だとして違法性を問う声が上がっているが、司法省とホワイトハウスの顧問弁護士は「法的に問題はない」と結論づけていると報じられている。

一方、トランプ大統領はTruth Socialで、大統領専用機の代替機を国防総省が「無料」で「一時的」に受け取るのは「透明性の高い取引」であると主張。ただし、任期後の財団への移管には触れておらず、批判の火種はくすぶったままだ。

もちろん大統領専用機として使用するためには「無料」というわけにはいかない。ポリティコによると、安全な通信手段や防衛システム、電磁シールドといった設備を備えるために配線や電子機器、パワーシステムをオーバーホールしなければならず、改修費用は数億ドルに上る可能性がある。機体の内部は解体して再構築される見込みで、最終的には図書館財団への移管も含め、税金による支出が膨らむ恐れがある。

ニューヨーク・タイムズの記者エリック・リプトン氏は、こうした一連の中東との経済関係について、大統領の政策判断に対して不当な影響力を及ぼす恐れがあると指摘する。とりわけカタールのような政府系ファンドが関与する事業は、公的立場と私的利益の境界線をあいまいにしかねない。

トランプビジネスがもたらす倫理的な問題は、1期目に最高裁まで争われたが、トランプ氏の退任を持って未決着に終わった。2期目は規模や複雑性において1期目を凌駕しており、リプトン氏は「把握するのも困難」」と状況を説明する。メディアの追跡や規制が追いつかず、倫理的な問いに対する明確な答えが出ないまま2期目も時間終了となるのだろうか。