ここにきて、エプスタイン事件に関する資料について「民主党の捏造だ」と主張し始めたトランプ大統領。その豹変ぶりに、イーロン・マスクがすかさず反応した。
「The old:
Admit nothing
Deny everything
Make counterclaims
But it won’t work this time」
(「いつもの手口だな:何も認めない、すべて否定する、逆に反論をこしらえる。だが今回は通用しない」)
マスクが挙げたのは、過去にトランプが危機をかわしてきた「定型パターン」だ。しかし、今回ばかりは通用しない──そんな警告にも聞こえる。
資料の完全公開を求める声が高まる中、トランプは、未公開資料にはジェームズ・コミー元FBI長官、オバマ元大統領、バイデン前大統領による捏造が含まれていると示唆。16日のTruth Socialへの投稿では、スティール文書やロシア疑惑、ハンター・バイデンのラップトップ問題の“隠蔽”と並べ、「民主党による新たな詐欺だ」と非難した。
驚くべきは、その矛先が支持者にまで向けられたことだ。資料公開を強く求める人々に対して、トランプは「でたらめを鵜呑みにした過去の支持者」「腰抜け」「彼らの支持はもはや望むところではない」と突き放した。これは、資料公開を選挙公約として掲げてきたこれまでの姿勢とは明らかに矛盾する。
なお、ジェフリー・エプスタインが逮捕されたのは第1期トランプ政権の2年目、2019年7月。翌月、同氏は獄中で自殺した。トランプとエプスタインの親密な関係を示す証拠も少なくない。2000年にメラニア夫人を含む4人でダブルデートしていた写真や、1992年にフロリダのマール・ア・ラーゴで撮影されたパーティー映像などが、いまもオンライン上で広く流通している。
トランプはなぜ今になって資料を「偽情報」と断じたのか。そして、なぜ支持者を切り捨てるような発言に踏み切ったのか。その背景を、ベテラン政治ジャーナリストのマーク・ハルぺリンが解説する。
ハルぺリンは17日、YouTube番組『2way』に出演。トランプ政権の元報道官ショーン・スパイサー、民主党の元政治活動家ダン・タレンタインと共に司会を務めるこの番組で、次のように語った。
「私の知る限り、国内の大手三紙のうちの1社が、トランプ大統領とジェフリー・エプスタインの関係について、これまで報じられていない内容を含んだ記事を近日中に出そうとしている。ホワイトハウスもその動きを把握している」
記事が公表されれば、その日のニュースサイクルを大きく揺るがすことになるという。
これに対しタレンタインは「その話は左派の間では以前から出回っていた」と応じ、さらにこう付け加えた。
「ドナルド・トランプはジェフリー・エプスタインと非常に親しい時期があった。メラニアへのアプローチの初期段階で、エプスタインが関与していたという話もある」
メラニア夫人まで巻き込む報道ということだろうか。
これを受けてハルぺリンは、タレンタインの発言を「やや不用意ですね」と笑いつつ、スクープには「これまで表に出ていなかった新たな情報」が含まれるだろうと重ねて強調した。
つまり、トランプが捏造論を持ち出したのは、“先手”を打つ意図がある。報道の内容を「でっち上げ」と先回りして断じることで、スクープの衝撃を和らげる──いわば“予防線”を張っているわけだ。
とりわけ支持者に対しては、過去にも幾度となくナラティブを巧みにコントロールしてきたトランプ氏。だが今回、彼の“話法”は通用するのだろうか。資料公開をめぐる攻防は、次の局面に入ろうとしている。