NY地下鉄「シーシュポスねずみ」現る、エスカレーターを果てしなく逆走する姿に共感

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ニューヨーカーにとって、ネズミが地下鉄のプラットフォームや線路を走り回る姿は日常の光景だ。普段は嫌悪され、忌み嫌われる存在であるが、この度、どこか人間の有り様を連想させる、いじらしい様子がネットにシェアされ、話題になっている。

TikTokユーザー、jimmyjames1027が今週投稿した動画には、下りのエスカレーターを必死に逆走するネズミの様子が撮影されている。下り方向など知る由もない。前進するため、次々と迫ってくる段を乗り越えようと果てしないジャンプを繰り返している。

この様子に、多くのユーザーは人生の何たるかを考えさせられたようだ。コメント欄には「シーシュポスは幸福だと想わねばならぬ」「下りのエスカレーターを上るネズミにシーシュポスを思わなければならない」と、ギリシャ神話を用いて不条理を論じたカミユの小説「シーシュポスの神話」の一節を模した投稿や、「人生ってときどきこうだよね」といったコメントが相次いだ。

このほかに「ニューヨーク版サーモン」「ジム・ラット」といった声、「2024年の職探しのよう」と果てしなく応募し続けなければならない困難な就職活動のメタファーと捉えたユーザーもいる。

無限地獄は無事に終わりを迎えたようで、別のビデオでは、当のネズミがなんとかエスカレーターの頂上に到達する様子が確認できる。

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ニューヨークではこれまでにも、共感を集めた数々のネズミが存在する。2015年にネットに投稿された「ピザラット」は、大きなピザを運ぼうとして失敗する様子が、食べ物のために必死だったり、大きすぎる夢や目標をあきらめたりする自分たちのようだとの声があがり、「この暗い時代におけるヒーローだ」とまで賞賛された。

一方、ネズミは、ニューヨーク市にとって犯罪やホームレスなどと並ぶ重大な問題で、昨年の目撃報告件数は、コロナ後にピークに達した2021年をわずかに下回る320万件が寄せられた。

先日は、プラットホームで眠っていたホームレスの毛布の中から大量のネズミが飛び出す動画がSNSに投稿され、ニューヨーカーを震撼させた。

麻薬との戦いならぬネズミとの戦いだとして、エリック・アダムス市長は昨年、ネズミ対策専門の行政官「ネズミ取締官」を任命するなど、害獣駆除に本腰を入れている。