米通貨監督庁(OCC)は10月21日、ステーブルコイン法制「GENIUS法」を実施する最終規則を公表した。施行は同法と同じ2027年1月18日。最大の論点は、取引所などがステーブルコイン保有者に払う「リワード」の扱いだ。OCCは既存プログラムを直ちに禁止しない一方、適法と保証もせず、事実関係に応じて個別に判断する方針を示した。
焦点は「リワード」
GENIUS法は、発行体が保有者に対し、コインを保有・利用・保持していることだけを理由に利息や利回りを支払うことを禁じている。ただし、取引所など第三者が支払うリワードについては、条文上の扱いが明確ではない。
OCCは2月の規則案に、発行体が関連会社などを通じて利回りを払い、その会社が保有者に支払う場合を違反と推定する規定を盛り込んでいた。だが最終規則ではこの推定規定を削除した。ステーブルコイン市場がまだ発展途上であること、適法な取引まで巻き込む恐れがあること、反証手続きの負担が見合わないことが理由だ。
代わりにOCCは、発行体の申請審査と日々の監督を通じて取引を確認する。違反や脱法が見つかれば措置を取り、指針を公表する。事例が蓄積した段階で、利回り禁止の範囲を明確にする規則を改めて提案する見通しも示した。
既存リワードの行方
現在、米国の主要プレーヤーはステーブルコイン保有者にリワードを提供している。報道によれば、Coinbaseは有料会員向けにUSDCで3.75%、PayPalはPYUSDで4%、Krakenは有料会員向けにUSDGで最大4.5%を払っている。
OCCは、GENIUS法成立前からあるリワードを、成立後に始まったものと同じ基準で評価する。既存であることを理由に適法と推定せず、「お墨付き」は与えない。議会がリワードの存在を知っていたとしても、それを容認したとは言えず、免責規定も設けなかった、というのが理由だ。
線引きの基準は、支払いが「保有だけを理由とするものか」にある。OCCは、発行体が直接払えない利回りを他の会社に渡して代わりに払わせる行為を明らかな脱法とみなす。一方、第三者経由の支払いでも、少なくとも一部が保有以外の理由による支払いであれば、法律の文言上は禁止対象外になり得るとしている。
OCCは違反・非違反の具体例を示さず、少額支払いの免除も、機関投資家と個人の区別も、是正猶予期間も設けなかった。「支払う」「利用」などの用語も定義しない。定義すれば、それを避ける取引を誘発しかねないためだ。
つまり、既存のリワードがすぐに禁止されたわけではないが、適法性は未確定だ。各社のプログラムが「保有だけを理由とする支払い」に当たるかは、施行後のOCC監督の中で判断される。
CircleとCoinbaseへの影響
USDCを発行するCircleにとって、規則の確定は銀行や資産運用会社への提案を後押しする可能性がある。一方で、同社の収益は準備資産の運用益に大きく依存する。2026年4〜6月期のUSDC平均流通量は前年同期比25%増えたが、金利低下により準備資産の利回りは約3.5%と、前年同期から0.66ポイント低下した。
CircleとCoinbaseは2023年の契約で、USDC準備資産の運用益を分け合っている。Coinbaseは、自社プラットフォーム上のUSDC量に応じた分と、残りの50%を受け取る。契約は8月に既存条件のまま3年間更新された。4〜6月期末にはUSDCの30%がCoinbase上にあり、同社は保有する有料会員にリワードを払っている。
リワードの扱いは、両社の収益構造に直結する。Coinbaseにとってはリワードの扱いが、CircleにとってはUSDC流通の拡大と準備資産運用益の確保が、それぞれ重要な観測点になる。
その他の主要ルール
最終規則は、OCC監督下の発行体、外国発行体、OCC監督下の金融機関によるカストディ(保管)を対象に、準備資産、償還、リスク管理、監査・報告、申請、資本などを定めた。リワード以外でも、規則案からいくつかの変更があった。
主な変更は次のとおり。
- 償還: 発行額の10%超の償還請求があった場合に期限を自動的に7日延長する規定を削除した。OCCへの届け出と、発行体による申請・OCCの判断に改めた。償還期限は原則2営業日以内を維持した。
- 準備資産: 分散・集中に関する数値基準を原則ベースに柔軟化した。流動性、分散、集中に関する基本的な要件は維持した。
- 発行の器: 特別目的会社(SPV)での発行に対応し、各SPVは自社発行分の準備資産を保有すればよいとした。
- 資本: 最低500万ドルを維持しつつ、構成要素を簡素化した。12か月分の営業費用に相当するバックストップも定めた。
- 開示: 法定通貨ではないこと、預金ではなく預金保険の対象でないことの明示を追加した。
償還ルールは発行体に対するものであり、取引所での売買には適用されない。OCCが自動延長をやめたのは、延長がかえって取り付け騒ぎを引き起こしたり悪化させたりしかねないとの指摘を受けたためだ。
市場の反応
10月21日の米国市場では、暗号資産関連銘柄が上昇した。ただし、同じ日にビットコインも反発しており、上昇のすべてを規則によるものと断定することはできない。
| 銘柄 | 10月21日終値 | 前日比 |
|---|---|---|
| Circle(CRCL) | 89.71ドル | +4.47%(日中に一時約6%高の90.65ドル) |
| Coinbase(COIN) | 177.08ドル | +3.65% |
| Strategy(MSTR) | 153.48ドル | +7.54% |
| iShares Bitcoin Trust(IBIT) | 47.84ドル | +2.42% |
今後の焦点
OCCの最終規則で、GENIUS法の枠組みがすべて整ったわけではない。
- マネロン対策・制裁規則: OCCと財務省が別途策定する。最終規則はまだ。
- 申請受付: 開始時期はOCCが別途発表する。
- 他当局の規則: FDIC、FRB、財務省の規則は報道時点で規則案の段階。2027年1月18日の施行までにすべてが整わない可能性がある。
- CLARITY法: 暗号資産市場構造を定める法案の上院案には、保有のみを理由とするリワードを禁じ、利用に応じたリワードを認める条文が盛り込まれたと報じられている。ただし上院は9月15日、審議入りのための討論終結動議を49対50で否決した(可決には60票が必要)。OCCは、新法が成立しない限りGENIUS法の文言どおり執行するとしている。[関連記事:米上院、暗号資産「CLARITY法案」を否決――トランプ暗号資産ビジネスがボトルネックに]
| 日付(米東部時間) | 日本時間 | 予定 |
|---|---|---|
| 10月28日(水)9:00 | 10月28日 22:00 | Circle、株主からの決算事前質問の受付開始(11月3日まで) |
| 11月4日(水)8:00 | 11月4日 22:00 | Circle、7〜9月期決算ウェブキャスト |
| 未定 | — | OCC、発行体申請受付の開始時期発表 |
| 2027年1月18日(月) | — | GENIUS法とOCC最終規則の施行 |




