米司法 民主党有力議員を収賄で起訴、起訴状に記された汚職の数々

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ニューヨークの連邦検察は22日、ニュージャージー州選出の有力議員と妻、関係者3人が贈収賄の罪などで大陪審によって起訴されたことを明らかにした。

起訴されたのは民主党のボブ・メネンデス上院議員(69)と妻ナディーン・メネンデス氏(56)、3人の実業家。ニューヨーク南部地区連邦検察は、メネンデス夫婦は、上院外交委員会の委員長の立場を使って3人に便益を与え、エジプト政府に利益をもたらすことを約束することと引き換えに、数十万ドル相当の賄賂を受け取ったと主張している。

賄賂には現金のほか、金、高級車、住宅ローンの返済、名ばかりの仕事の対価、家財道具が含まれている。2022年6月に行われたメネンデス氏の自宅の捜索で、服やクローゼット、金庫に隠してあった現金48万ドル、ナディーン氏の貸金庫から7万ドル、10万ドル相当の金の延べ棒が発見された。

起訴状より

軍事支援めぐってエジプトに便宜

起訴状によると、メネンデス上院議員は2018年3月、当時交際中だったナディーン氏とその知人のウィル・ハナ氏が設けたエジプト政府高官らとの会合で、エジプトへの軍事融資などについて話し合った。

当時米政府は、エジプト国内の人権問題などをめぐって軍事支援に難色を示し、2017年に国務省は改善が見られるまで1億9,500万ドル軍事融資を保留すると発表するなどしていた。

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会合から2ヶ月後の5月、メネンデス議員はハナ氏との夕食の場で、非公開だったエジプトへの軍事支援に関する情報を提供。ハナ氏はこの直後にエジプト軍高官に送ったテキストメッセージで、小型兵器と弾薬の禁止が解除されたと伝えていた。

メネンデス議員はさらに同月、エジプト政府高官の要望に基づき、同僚の上院議員らに対してエジプトへの軍事支援を解放するよう求める書簡の草案を作成した。この内容はナディーン氏のメールを通じてハナ氏、さらにエジプト高官へと転送された。

翌月もメネンデス氏はナディーン氏とハナ氏の立会いのもとエジプト高官らと面会した。これに先立ち、エジプト政府は2人を通じて兵器売却の承認を求める資料をメネンデス氏に提供し、これを受けたメネンデス氏はナディーン氏に送ったテキストで「ハナ氏に伝えるように。本日エジプトへの売却を承認するつもりだ」と伝えていたという。

この一方で、ハナ氏はナディーン氏を自身の会社の給与計算に加えると約束するなどしていたという。

ハラル認証で農務省に圧力

ハナ氏はエジプト出身のアメリカ人で、もう1人の被告フレッド・デイブス氏の資金支援を受けてIS EG Halal Certified, Inc.を設立した。ニュージャージー州エッジウォーターにある同社は、ホームページでエジプト政府によって独占的に認可された唯一のハラル認証会社であると謳っている。

検察によると、同社は、2019年にエジプト政府により米国から輸出される食品の唯一のハラル認証機関に指定される以前は、認証の経験を有していなかった。エジプト政府の高官がハナ氏にエジプトからの独占認可の可能性を伝えると、ナディーン氏はメネンデス氏に「ハラルが通ったようです。2019年は素晴らしい年になるに違いない」とメッセージを送っていた。

エジプトから独占的な認可を受けた数ヶ月後、ナディーン氏は賄賂を受け取るために、メネンデス氏の助けをかりてニュージャージー州にコンサルタント会社を設立した。

独占による影響で食肉業者の輸出コストが増大していることを問題視した農務省が、エジプト政府に独占権の付与に反対の意向を伝え、再検討を求めると、メネンデス氏は同省高官に連絡をして、介入をしないよう求めたという。

この後も、妻とハナ氏らを仲介としたエジプト政府関係者との接触は続いた。ナイル川のダム建設めぐるエチオピアとエジプト、スーダンの対立に関して、メネンデス氏は当時の財務長官と国務長官に書簡をしたため、交渉への介入を訴えるなどしたこともあった。この一ヶ月前、ナディーン氏は、ダム交渉に関係するエジプトの高官にメネンデス氏と面会の機会を設けていた。

ベンツと引き換えにNJ州司法長官の捜査に圧力

2019年にはハナ氏と3人目の被告、ホセ・ウリベ氏から6万ドル相当のベンツの提供を打診されたメネンデス氏は、ウリベ氏に対する保険詐欺および同氏の従業員に関係する州の捜査に介入を試みた。

ナディーン氏を含む複数回の話し合いの末、メネンデス氏は、ニュージャージー州司法長官室の上級検察官に連絡をして、訴追をウリベ氏に有利な方向で解決するよう働きかけたという。

さらに2020から2022年にかけては、先述のデイブス氏に対する連邦検察の訴追に影響を与えようと試みた。デイブス氏は、2018年に自身が州内に設立した銀行から虚偽の名目で融資を引き出したとして起訴されていた。

メネンデス氏は、現金や家具、金の延棒と引き換えに、事件に影響を与えることに同意。大統領に自分が影響力を行使できると考えていた人物を同地区の連邦検察官に指名するよう推薦したほか、検察局の職員らに直接または間接的に接触をはかったこともあったという。

メネンデス氏は収賄など3つの罪で起訴され、有罪となると最高で禁錮45年の刑に処される可能性がある。

起訴を受け、2006年から上院議員を務めるメネンデス氏は声明で「検察は議員室の通常業務を曲げて伝えている。その上、私に対して虚偽の主張するに飽き足らず、私と出会う前から妻が持っていた友人関係を理由に妻を攻撃した」と容疑を否定。「この活動の背後にいる人々は、貧しい家の出のラテンアメリカ人が上院議員に上り詰め、名誉と栄誉を持って奉仕することに我慢がならないのだ」と非難した。