「ブラックウォッシング」クレオパトラのドキュメンタリー、俳優の人種に非難

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Netflixで来月から配信されるクレオパトラのドキュメンタリーシリーズで、クレオパトラの配役を巡り、エジプト人の専門家から「ブラックウォッシング」(黒人以外の役柄に黒人俳優を起用)と批判の声が上がった。

問題が指摘された番組「African Queens: Queen Cleopatra」は、ウィル・スミスの妻ジェイダ・ピンケット・スミスが製作総指揮を務め、黒人女優のアデル・ジェームズが伝説のファラオ、クレオパトラ7世を演じる。

BBCによると、エジプトの著名な考古学者で、元考古相のザヒ・ハワス(Zahi Hawass)氏は、エジプトの日刊紙ルマスリ・アルヨウムの取材に、「完全なフェイク。クレオパトラは、ギリシャ人だ。つまり明るい肌をしている。黒人ではない」と指摘。「ネトフリはエジプト文明の起源が黒人だという、誤ちかつ虚偽の情報を拡散し、混乱を引き起こそうとしている」と非難した。

エジプト人弁護士、マフムード・アル・セマリー氏は16日、「アフリカ中心主義の考えを促進」しようとしているとして、同国のNetflixのサービス停止を求め、必要な法的措置を取るよう検察に求めたという。

Change.orgでも、番組の配信中止を求めるキャンペーンが発足。現在、4,000件を超える署名が集まっている。なお以前にも同様のキャンペーンが立ち上がり、85,000人の署名が集まったが、現在サイトから削除されている。

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なおYouTubeに投稿された予告編は、200万回以上再生されているが、コメント欄は閉じられている。

キャストは反論

主役のアデルはツイッターで、黒人の起用に批判的なユーザーのコメントをシェアし、これらの発言は「容認できない」と非難。「嫌なら見なければいい」と一蹴した。

Netflixは2月、自社のブログtudumで、クレオパトラが統治する期間、エジプトは「多文化的かつ多民族的だった」と説明。クレオパトラの母親や父方の祖父母の「身元は不明で、彼女の人種が記述されている可能性は低い」としている。

クレオパトラ7世は紀元前69年、エジプトのアレクサンドリアで生まれたとされている。専門家のサリー・アン・アシュトン氏はドキュメンタリーの中で「クレオパトラはエジプト人だと主張していることを鑑みると、完全なヨーロッパ人だとして描写するのはおかしいように思う」と語っているという。

「ホワイトウォッシング」と非難も

クレオパトラの人種をめぐっては、かねてから論争の的なっている。

1963年公開の映画『クレオパトラ』では、ジョゼフ・L・マンキーウィッツ監督が、英国出身の女優エリザベス・テイラーをクレオパトラ役に起用した。

2020年には、パティ・ジェンキンスが監督を務めるクレオパトラの伝記映画に、イスラエル出身の女優ガル・ガドットの抜擢が発表されると、「ホワイトウォッシング」と非難する声が上がった。

▼5月10日米配信「African Queens: Queen Cleopatra」