トランプ政権に対するエプスタイン事件資料の公開要求は勢いを増すばかりだ。その流れに、ハリウッドの大物俳優だったケビン・スペイシーも加わった。
7月15日、スペイシーは自身のX(旧Twitter)で、「エプスタインファイルを全て公開しろ。何も恐れることのない人間にとって、真実が早く明らかになることを願っている」と立場を明らかにした。「これが自分に関する話になるのは本意ではないが、既にマスコミがそう仕立て上げてしまった」と続け、自身が世間の注目を集めている現状を皮肉交じりに語った。
スペイシーは2002年、クリントン元大統領とともに、エプスタイン所有のプライベートジェットでアフリカを訪れている。この訪問はクリントン財団による人道支援プロジェクトの一環で、ガーナ、モザンビーク、ジンバブエ、ルワンダ、南アフリカ共和国の各都市を巡った。その後、英国へ移動し、バッキンガム宮殿でアンドリュー王子とも面会している。スペイシー自身、エプスタインやマクスウェルとは当時面識がなかったものの、フライト中に「若い娘たち」が同乗していたと証言している。
エプスタイン資料の扱いめぐって、現在トランプ政権は強固な支持者たちの批判に直面している。
きっかけは司法省が今月、「顧客リストは存在しない」と結論づけ、これ以上の資料公開もしないとしたこと。ボンディ司法長官は2月に「第1フェーズ」と称して一部フライトログ等を公開。既出の資料ばかりだったことから落胆を招いたが、テレビインタビューで、エプスタインの顧客リストが「机の上にある」と発言するなど、さらなる公開への期待を煽っていた。
そもそもトランプ自身、大統領選挙を含む場面で資料の機密解除を繰り返し約束してきた経緯がある。
そこにきての、実質的な公約破り。数百人の被害者、トランプを含む政治家や著名人との広い交友関係、不審な獄中死など、エプスタイン事件の真相を求める声は根強く、トランプ氏を信じた支持者の強い反発を招くのも無理はない。
トランプ自身の対応も不信感を深めている。
先週開かれた閣僚会議でエプスタイン関連の質問が及ぶと、「そんな話をしている場合か」と不快感を表明。Truth Socialでは「なぜ皆でボンディを攻撃するのか」「身勝手な人間たちが決して死なないエプスタインをめぐって政権をおとしめようとしている」と強く擁護の姿勢を示した。
さらに司法省は他殺説を否定しようと、エプスタインが死亡した当時の収監施設の監視カメラ映像を公開したところ、これに編集疑惑が浮上。また、批判の矛先をかわしたいトランプが、資料はオバマ元大統領、ヒラリー・クリントン、バイデン政権など政敵の一部によって捏造されたと突如言い出すなど、混迷を極めている。
情報公開を強く求めているのは、タッカー・カールソン、ローラ・ルーマー、ニック・フエンテスなど保守系インフルエンサーたちだ。カールソンが先週の保守派のイベントで、エプスタインがイスラエルのために「働いていた」とスパイ説を示唆すると、これをナフタリ・ベネット元首相が完全否定するなど、議論は国際的な広がりを見せている。さらに、トランプ氏と袂を分かち第三政党の設立を進めるイーロン・マスク、彼と対立するスティーブ・バノンも議論に加わり、話はますます膨れ上がっている。
情報公開か、情報統制か。リアル版『ハウス・オブ・カード』は、いま新たな章を迎えている。