米国の国際起業家入国規則とは?弁護士が専門解説

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今回は、国際起業家入国規則(International Entrepreneur Parole Rule)についてお話します。ここでいう入国はパロールと言いまして、厳密にはビザではないのですがビザを持っているのと同じように働きますので心配はいりません。

オバマ政権が2017年に作ったプログラムで、年間3,000件程度の申請があると推測されます。トランプ政権はいずれこのプログラムを廃止すると宣言したものの、そのまま残されました。

長所

国籍要件がないこと。例えば、MBA時代の友人とそれぞれ資金を出し合って起業する場合、E2ですと50%以上を締約国の国籍者でしかも、グリーンカードホルダー以外で所有し、そして締約国の国籍を持つ者しか取得することができません。また、2つ以上締約国の国籍者がいても、使える国籍は1つだけです。これに対し、国際起業家入国規則は、国籍に関係なく3人まで取得することが可能です。

本人はその新規企業のオーナーシップを10%以上保有していなければなりません。ですので、アメリカ人の友人を合わせて70%、それぞれ別の国の友人と自分の3人が10%ずつ出資する場合、3人全員がパロールを取得できる可能性があります。

短所

取得のハードルが高いことが挙げられます。3人以上は使えないこと、延長のハードルがさらに高いこと、最長で5年しかパロールが与えられないことが挙げられます。

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要件

本人の要件は、当該起業家が中心的で活動的な役割を果たしていること、10%以上当該会社を所有していることのみですが、起業する会社についてはかなり厳しい要件があります。

企業の要件は、申請前直近5年間の間に立ち上がったスタートアップで、以下の要件を満たすことです。なお、証券を主に取り扱うビジネスは、このパロールの適用外です。

(1) その新規企業が申請の直前18か月以内に「要件を満たす米国の投資家」から、26万4千ドル以上の投資を受けていること。

ここで、要件を満たす米国の投資家とは、過去5年間常時スタートアップに出資をしていて、その対象となったスタートアップが相当の成長を遂げたことです。個人でも組織でも構いません。具体的には、所有権に転換可能な債権その他の証券と引き換えに出資を行う事業を過去5年間行っており、投資総額が60万ドルを超えていること、そして、少なくとも出資された2つ以上のスタートアップが、それぞれ5人以上の新たな雇用を生み出したか、あるいは少なくとも52万8千ドルの収入を生み出して、なおかつ年率にして20%以上の成長を続けていること、です。

ですので、投資家が米国の人・会社等に限られていること、過去5年間に活発に投資を行い、その投資先が成功しているものでなければここでいう投資家に該当しません。さらに、起業家の親戚縁者からの投資は含まれません。

または、

(2) 申請の直前18か月以内に、連邦政府、州政府、または地方自治体で常時スタートアップにグラントを発行している政府から、経済開発、調査、開発、または職を生み出すためのグラントを10万4千ドル以上受賞していること。

または、

(3) (1)、(2)の要件を部分的に満たし、かつ、他の強力な証拠で職を生み出すキャパシティー、急激な成長を確信させる証拠を提出すること。

(4) なお、これらの要件を厳密に満たさなくても、審査官の判断でこのパロールを与えることもできます。

上記に加えて、起業家の世帯はパロール中、連邦貧困ガイドラインの少なくとも4倍の世帯収入を維持しなければなりません。例えば、夫婦と子供1人の家庭では、$99,480の世帯年収が必要となります。

延長

パロールは当初2.5年与えられますが、1回の延長が認められています。ただし、それには要件がありまして、申請者が活発に中心的役割を果たしてきたこと、そして、現時点で5%以上のオーナーシップを所有すること、そして新規企業が

(a) パロール中に52万8千ドル以上の「要件を満たす投資家」の投資、または、政府からのグラント、あるいはその両方を合わせて52万8千ドル以上を受け取っていること。

または、

(b) パロール中に少なくとも5つのフルタイム(週35時間以上)の職を生み出していること。

または、

(c) 52万8千ドル以上の収入を生み、また、年率20%以上で成長を遂げていること。

あるいは、

(d) 部分的に満たしている場合には、その他の強力な証拠が、必要とされます。

つまり、当初の投資家の投資の26万ドル以上、あるいは政府のグラント10万4千ドル以上に加え、2.5年の間にさらに52万8千ドル以上の米国の投資家からの投資または政府のグラントを受けていることが必要とされます。

配偶者と未成年の子供 配偶者と未成年の子供も帯同することが可能です。また、配偶者は入国後に移民局に申請すれば雇用許可書を得ることができます。

寺井眞美(米国NY州弁護士)