「Inclusion Rider」第90回アカデミー賞 主演女優賞のマクドーマンドのワードが話題

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3月4日、第90回アカデミー賞が開催され、ギレルモ・デル・トロ(Guillermo del Toro)監督の「シェイプ・オブ・ウォーター」(The Shape of Water)が作品賞を受賞。最多13部門のうち、作品賞、監督賞、美術賞、作曲賞の最多4冠を手にした。

なかでも「ファーゴ」以来、2度目の主演女優賞を受賞した、「スリー・ビルボード」のフランシス・マクドーマンド(Frances McDormand)が受賞スピーチで発した「インクルージョン・ライダー」(Inclusion Rider)というワードが注目を浴びている。

スピーチでは、女性の候補者たちに立ち上がるよう促した後、会場にいる男性に向かって「私たちはみな伝えたいストーリーや支援してほしいプロジェクトを抱えているのよ。」「数日以内にあなた方のオフィスに招くか、私たちのところにくるか、都合の良い方で構わない。私たちはあなた方にそのすべてを話すわ。」と発言。そして最後に「今晩、あなた方に2つの言葉を残していきます。”Inclusion Riders”」と述べ、スピーチを締めくくった。

インクルージョン・ライダーとは

インクルージョン・ライダー(Inclusion Rider)とは、作品制作に関わるのキャストやスタッフが、人種や性別など多様性を反映するよう規定する契約を指す。女性やマイノリティ、LGBTQや障害者などの人々が、実社会における割合と同等程度起用されることなどを主眼とし、有名俳優が出演契約時にこれらの条項を盛り込むことで、映画のあり方を変えていくことが期待されている。

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アメリカ人でも聞きなれない言葉で、スピーチ直後の検索数は通常の5,000%に跳ねあがったという。また、ツイッターでもスピーチ後20分間で7,000回ツイートされるなど、大きな話題となった。

授賞式後の記者会見で、このワードついて聞かれると、35年も業界にいながら、彼女自身がつい先週知ったばかりであるとしながらも、トレンドのような一過性のものではなく、映画界に実質的な変化を迫るものだと考えを述べた。

インクルージョン・ライダースについて研究を行っている南カリフォルニア大学のステイシー・スミス(Stacy Smith)教授は、2016年のTED会議で、インクルージョン・ライダースについて提唱し、映画業界におけるジェンダーの不平等については、「非常に憂鬱な」状況で、切迫した社会問題だと述べている。

会議の中で、スミス教授は、上位100位の映画を研究結果を発表し、社会の価値観を伝え、人々が学ぶきっかけを得るはずの映画に、女性やマイノリティーの存在が反映されていないと警告を発している。
少女や女性の出演者は、全体の1/3以下で、この50年間比率は変わっていないという。また女性監督は4%にとどまっており、多様性の反映不足の蔓延と述べた。

この状況を解決する策として、Aリスト級の俳優が、ハリウッド映画に、自らの契約書に特定の要求を盛り込むすることができるとし、公平や、多様性を受け入れるための条項(インクルージョンライダー)を要求し、その要求が配役に盛り込むことができれば、実社会を反映した作品になるという。
また、NFLで定められているルーニー・ルールの適用を推奨している。重役らが監督やキャストと面接する際に必ずマイノリティーを候補に入れるという方法。そして、観客らに女性監督の作品を見るよう、また作品に投資するなど、具体的なアクションを取るよう働きかけている。