11月3日の米中間選挙で民主党が上下両院を制したことを受け、4日の米国株式市場では防衛、AI向け電力、SpaceX(SPCX)の株が下落した。ダウ平均は3%高と大きく上げたが、トランプ政権の政策に支えられてきた銘柄は売られた。ロイターによると、米証券会社TD Cowenの防衛アナリスト、ローマン・シュヴァイツァー(Roman Schweizer)氏は顧客向けのノートで、「トランプ『ブランド』の計画は死んだ(Trump “branded” programs are dead)」と書いたという。対象には、本土を守るミサイル防衛構想「ゴールデンドーム」も含まれる。
民主党、上院で7議席を奪取
上院では、アイオワ、カンザス、オハイオ、メーン、ノースカロライナ、サウスカロライナ、テキサスの7州で共和党から議席を奪った。AP通信の集計では、上院は民主党54議席、共和党44議席で、アラスカとミシシッピの2議席がまだ確定していない。下院についてNBCは、民主党が258議席を得ると予測している。
4日の終値は、ダウ平均が前日比3.03%高の53,356.12ドル、S&P 500が1.58%高の7,688.62だった。
トランプ氏、敗因はイラン戦争とFOXニュース
トランプ大統領は投票が締め切られる前の3日、CBSニュースの取材で、民主党が議会を握った場合は「私には究極の権限がある。それは拒否権だ」と述べていた。ただ、結果が判明した後はポリティコに「2年間、全部に拒否権を使い続けたくはない」と語り、民主党との協力にも含みを残した(AP通信)。
敗因について、トランプ氏はイランとの戦争の影響を認めつつ、敗北の責任はFOXニュースにあるとSNSで批判するなどした。
「ゴールデンドーム」は死んだ
ロイターによると、4日の取引でロッキード・マーチン(LMT)とL3ハリス(LHX)がそれぞれ6.9%、RTX(RTX)が3.1%下げた。ゼネラル・ダイナミクス(GD)とノースロップ・グラマン(NOC)も下落した。
防衛各社は10月に好決算と過去最高の受注残を発表したが、株価はその後、上昇分の多くを失っていた。4日の下落を含めると、S&P 500の航空宇宙・防衛指数は年初来で約1%安となっている。
シュヴァイツァー氏が「死んだ」と書いた計画には、ゴールデンドームと、トランプ氏が掲げる艦隊増強計画「ゴールデン・フリート」が含まれる。ゴールデン・フリートの中心は、2025年12月に発表された新型の「トランプ級戦艦」だ。海軍の艦艇を建造するハンティントン・インガルス(HII)も4.9%下げた。 反対に、TD Cowenが「最もリスクが小さい(least at risk)」としたのは核戦力の近代化で、ノースロップのB-21爆撃機や、次期大陸間弾道ミサイル「センチネル」が挙がっている。
なぜゴールデンドームが「死んだ」と評価されたのか。理由は予算の組み方にある。
政権は2027年度の国防予算として1.5兆ドル(約240兆円)を求めた。内訳は、通常の歳出法で1.15兆ドル、共和党だけで可決できる「財政調整法」で3,500億ドル(約56兆円)だ。ゴールデンドームについては、通常予算での要求が約4億ドルにとどまり、171億ドル(約2兆7,000億円)を財政調整法に回した(Federal News Network)。要求額のおよそ98%が、共和党単独の法案を前提にしていたことになる。
2027年1月3日の新議会発足後は民主党が両院を握るため、この手続きは使えなくなる。米投資銀行Jefferiesも、国防予算は1.5兆ドルではなく、下院案の約1.15兆ドルに近づくと予想している。
さらに今は、2026年度の予算水準を延長する暫定予算(CR)で政府を運営している。ゴールデンドームのディレクター、マイケル・グートライン(Michael Guetlein)宇宙軍大将は8月、暫定予算は「役に立たない」と警告していた(The Hill)。前年度の通常予算に、基準となる金額がほとんどないためだ。
受注企業への影響は
ゴールデンドームでは、すでに複数の企業が契約を得ている。米宇宙軍の宇宙システム軍団(SSC)は2026年4月、宇宙から敵のミサイルを撃ち落とす「宇宙配備型迎撃ミサイル(SBI)」の試作開発で、計20件の契約を結んだと発表した。相手は12社で、総額は最大32億ドル(約5,100億円)。契約は2025年末から2026年初めにかけて結ばれた。名を連ねるのは、ロッキード・マーチン、ノースロップ・グラマン、RTX傘下のレイセオン、ゼネラル・ダイナミクスの子会社などで、2028年に初期能力を実証する計画だ。
宇宙企業のインテュイティブ・マシーンズ(LUNR)も、7月にゴールデンドームの衛星群「AMDT3」向けに宇宙機18機を受注した。同社の第2四半期の安全保障部門の売上比率は、前年の3%から30%に拡大している。
グートライン氏は、2025年の財政調整法で配分された資金は執行段階に入っていると述べている。一方、SBIの契約額はあくまで「最大」の金額で、試作の先の配備に進むには2027年度以降の予算が必要になる。民主党議会で財政調整法が通らなければ、影響が大きいのは試作後の配備・量産段階と読める。
AI電力、SpaceX、暗号資産にも逆風
AI向け電力:小型原子炉を開発するオクロ(OKLO)は4日、5.8%安で取引を終えた。テキサス州では、データセンターに対するより厳しい規制を掲げたジーナ・ヒノホサ(Gina Hinojosa)氏が知事に当選した。オクロはまだ売上がほとんどなく、データセンター向けの需要に期待が集まっていた銘柄だ。
SpaceX:4日の株価は一時5%を超えて下げ、終値は3.8%安だった。イーロン・マスク(Elon Musk)氏は共和党候補に多額の献金をしていた。テスラとの合併構想には、民主党議会の監視が強まるとの見方が出ている。
暗号資産:暗号資産の包括的な規制の枠組みを定める「クラリティー(CLARITY)法案」は、成立がさらに遠のいた。上院は9月15日、49対50で審議入りを否決していた(関連記事)。当時は共和党が多数派でも、審議入りに必要な60票に届かなかった。来年からは、どの法案を審議するかを民主党が決める。上院銀行委員会の委員長には、業界に批判的なエリザベス・ウォーレン(Elizabeth Warren)議員が就く見通しで、法案は民主党の求める倫理規定などを盛り込んだ形で、一から交渉し直すことになりそうだ。
今後の注目点
- レームダック国会:新しい議会が発足する2027年1月3日までに、共和党が財政調整法を通せるか。上院の未確定2議席の行方も影響する
- 暫定予算の期限:期限が来たとき、国防予算の水準をどう決めるか
- 11月6日のオクロ決算、11月12日のインテュイティブ・マシーンズ決算など:選挙結果と政府予算の見通しについて、経営陣がどう説明するか




