窒素ガスによる死刑 アラバマ連邦地裁が許可、米で初

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アラバマ州の連邦地裁は10日、ケネス・ユージン・スミス死刑囚に対する窒素ガスを用いた死刑執行を認める判決を下した。執行された場合、米国で初めてのケースとなる。

スミス死刑囚は、アラバマ州が定めた「窒素低酸素症」による処刑は「持続的な植物状態、脳卒中または窒息の痛みといった追加の痛み」を生じさせる重大なリスクがあるなどとして、合衆国憲法修正第8条などに基づき、差し止めを求める訴訟を提起していた。修正第8条では残酷で異例の刑罰を課してはならないとしている。

アラバマ州司法長官が昨年8月に定めた処刑のプロトコルによると、死刑囚にマスクを被せて、窒素ガスを15分間、または心電図の波形が平らになってから5分間送り続けることとされている。

オースティン・ハフェカー判事は裁定に当たり、スミス死刑囚は「現在の方法が、彼が代替法と主張するものに比べて、確実または高い確率で深刻な害または追加の痛みを生じさせる」ことを証明していないとしたほか、「スミス氏は、無痛の死を約束されていない」と述べた。

執行日は1月25日に設定されているが、AP通信は、スミス氏の弁護士が上訴する計画を示しており、最終的に連邦最高裁で争われる可能性があると指摘している。

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スミス死刑囚は1988年、シェフィールドにある教会の牧師の依頼で、もう一人の男と共に牧師の妻を殺害した。牧師は、容疑者として自分に捜査の焦点があたると一週間後に自殺した。借金を抱えており、保険金目当ての犯行とみられている。スミス死刑囚らは、それぞれ1,000ドルで殺害を請け負ったという。

死刑が宣告されたのは1996年。共犯者のジョン・フォレスト・パーカーは、2010年に死刑が執行された。

スミス死刑囚に死刑が執行されるのは2回目で、2022年11月に薬物注射による処刑が試みられた。「90分間以上にわたって、静脈にアクセスしようとしたにもかかわらず」失敗し、そのまま死刑執行令状の期限が切れた。州が再び死刑の執行計画を進め、現在の訴訟へと発展した。薬物注射をめぐっても法廷で争っており、判事は、スミス死刑囚が当時、窒素低酸素を望むことを自ら表明していたとも指摘している。

アラバマ州のスティーブ・マーシャル司法長官は声明で、アラバマの窒素低酸素症の手続きが追加の痛みを与える可能性について、裁判所は十分な証拠がないと判断したと述べた上で、「本日の命令により、アラバマ州は無実のエリザベス・セネットを殺害した凶悪な嘱託殺人の責任をケネス・スミスに問うことにおいて、重要な一歩を踏み出した」と発表した。

Death Penalty Information Centerによると、死刑は27州で許可されており、このうち6州では行政命令によって執行が一時的に停止されている。CNBCによると、アラバマ州のほかに、オクラホマ州とミシシッピ州で窒素ガスによる処刑が代替法として承認されている。

アラバマの計画をめぐって、国際的に停止を求める声が上がっている。

国連が3日に発表した声明によると、国連の専門家らは、窒素低酸素症は未検証の処刑方法で、科学的根拠に乏しいと指摘。スミス死刑囚は「残忍で、非人道的、屈辱的な処遇または拷問にさらされる可能性がある」としたほか、「重度の痛みや苦しみを引き起こす刑罰は、米国が締約国である拷問等禁止条約、いかなる被拘禁者も健康に害を及ぼす可能性のある医学的または科学的実験を受けさせないことを保証する一連の原則」に違反する可能性が高いと警告した。