これまで何度もノーベル平和賞への意欲を公言してきたトランプ大統領。
最近は、新政権発足から半年間で6つ、毎月1件のペースを和平を実現していると繰り返しアピール。先週のアゼルバイジャンとアルメニアの首脳を招いた会談では、「私が何をしても彼らは認めてくれない」と不満を漏らし、執着ぶりを隠さなかった。
そんな大統領に元側近のジョン・ボルトンは鋭い視線を浴びせる。第1期政権で大統領補佐官(安全保障担当)を務めた同氏は、10日放送のABCニュースの番組『This Week』で、「トランプの行動が状況を本質的に変えたとは思わない。むしろ、何よりもノーベル平和賞が欲しいという思いを示しているだけ」と皮肉った。
ボルトンによれば、パキスタンとインドの件では、インド政府だけでなく国民全体が、トランプが自分の手柄にしようとしたことに激怒している。タイとカンボジアの争いでは「合意しなければ関税」と脅しただけで、確かに署名はされたが実態は変わっていない。アゼルバイジャンとアルメニアの決定的要因は、この1年でロシアがアゼルバイジャンによるナゴルノ=カラバフ支配を容認したことにある。
ボルトンはさらに「トランプの心をつかむ方法はノーベル賞への推薦だ」とも指摘。実際、パキスタンのムニール参謀長やネタニヤフ首相に加え、カンボジアのチャントール副首相も正式推薦。アゼルバイジャンとアルメニアの両首脳も共同推薦の意向を示すなど、“急所”を心得た海外首脳は少なくない。今や推薦は、首脳外交における新しい通貨のようだ。
「米国の恥」とこき下ろされた2018年ヘルシンキ会談に同行したボルトンは、今週金曜にアラスカで開催が決まったウクライナ和平に向けた米露首脳会談にも批判的な分析を加えた。
「トランプはすでにいくつかの誤りを犯していると思う。まず、米国でこの会談を開き、ならず者国家の孤立した指導者に正当性を与えたこと。第二に、プーチンが先に和平案を提示することで“先手”を取ることを許したこと」と指摘。
プーチンの狙いは制裁解除よりも「トランプとの関係回復」であり、KGB仕込みの“魔法”をトランプに再びかけるチャンスを伺っている、と懸念を示した。