AIデータセンター建設の一時停止を求める声が、民主党主流派にも広がり始めた。
進歩派のアレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員(民主党 ニューヨーク)は24日、AIデータセンターの新設・拡張を一時的に禁止する「AIデータセンターモラトリアム法案」を提出した。同趣旨の法案は上院でもバーニー・サンダース議員が主導しており、AIインフラの急拡大に歯止めをかけようとする動きが上下両院で進んでいる。
法案は、AIの安全性、経済的利益の公平な分配、環境負荷への対応などを定めた包括的な規制が成立するまで、連邦レベルでAIデータセンターの建設を凍結する内容だ。
背景には、AI企業による入国管理当局への監視技術提供、ディープフェイクによる性的搾取、そしてデータセンター急増に伴う電力需要の拡大や電気料金の上昇など、規制が追いつかないまま広がる社会的影響への危機感がある。
オカシオ=コルテス議員は「利益よりも人間を選ばなければならない」と訴え、ラシダ・タリーブ議員ら進歩派10人が共同提案者に名を連ねた。
法案には、AI関連インフラの輸出規制に加え、データセンターの水・電力使用量や労働者賃金の開示義務も盛り込まれた。AI開発競争が国家戦略となるなか、環境・労働・人権の観点からインフラ整備にブレーキをかけようとする内容となっている。
民主党主流派も「モラトリアム支持」
同日、この動きを後押しする発言が民主党主流派から飛び出した。
中間選挙で民主党が下院多数派を奪還した場合、エネルギー・商業委員長への就任が有力視されるフランク・パローン下院議員(ニュージャージー)は、データセンター関連法案を審議する小委員会で、「現在提出されている法案だけでは不十分だ」と指摘した。
そのうえで、「データセンターが国の空気や水、そして電気料金に悪影響を及ぼさないことを保証する手段が見つかるまで、全国的なAIデータセンター建設の一時停止(モラトリアム)を支持する」と明言した。
パローン議員によれば、データセンターの電力消費量は2017年から2023年にかけて倍増し、2030年までには米国全体の電力需要の15%超を占める可能性があるという。
「民主党の立場は明確だ。データセンターのせいで、全国の家庭の電気料金が1セントたりとも値上がりするような事態は許されない。」
AIそのものではなく、「電気料金」という有権者の生活に直結する問題を前面に押し出した発言は、データセンター問題が民主党内で新たな政治課題になりつつあることを示している。
なお、同日審議された「料金負担者保護法(Ratepayer Protection Act)」は、大規模電力利用者に対し、自らの電力供給や送電網増強に必要な費用を全額負担させる内容で、トランプ政権の方針を法制化するものだ。法案は今月18日に超党派で提出され、GoogleとMicrosoftも支持を表明している。
パローン議員の発言について、オカシオ=コルテス議員はPoliticoに対し、「ランキングメンバー(民主党筆頭委員)がそのように公言したことに驚き、大いに勇気づけられた」とコメント。「これはニュージャージー州だけでなく、全米各地で広がる草の根運動の成果だ」と評価した。
共和党が主導権を握る現議会で、モラトリアム法案が成立する可能性は高くない。それでも、民主党主流派が強固なデータセンター規制へ歩調を合わせ始めた意味は小さくない。
AI開発そのものではなく、それを支える巨大インフラが政治の焦点になりつつある。すでに地方選ではデータセンター建設をめぐる対立が各地で起きており、中間選挙が近づくにつれ、テック企業への規制圧力は重要な政治テーマとして存在感を増していきそうだ。

