日曜日, 5月 24, 2026
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米下院、「戦略的ビットコイン準備金」法案を提出── 米国は“押収BTCを売らない”方向へ

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今週米下院で、連邦政府が保有するビットコインを「国家準備資産」として長期保有するための法案が提出された

アラスカ州選出のニック・ベギッチ下院議員(共和党)と、メイン州選出のジャレッド・ゴールデン下院議員(民主党)が共同筆頭提出者となり、「米国準備金近代化法(ARMA)」を提出。共和党議員を中心に19名(両筆頭含む)が共同提出者に名を連ねた。

法案は、連邦政府が刑事・民事没収や制裁執行などを通じて取得したビットコインを、「戦略的ビットコイン準備金(Strategic Bitcoin Reserve)」として財務省内で一元管理する枠組みを定めるものだ。

昨年、トランプ大統領は大統領令によって「戦略的ビットコイン準備」の方針を打ち出していたが、ARMAはそれを法律として制度化・恒久化する試みと位置づけられる。

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現在、米国政府は世界有数のビットコイン保有主体の一つとされる。一方で、その売却や管理はこれまで行政府の裁量に委ねられてきた。市場では、政府保有BTCの売却がたびたび「潜在的な売り圧」として意識されてきた経緯がある。

ARMAは、こうした既存保有BTCを長期戦略資産として位置づけ、原則20年間の最低保有期間を法律で定める。一部報道によると、20年経過後は財務長官が2年間で一定割合の売却を提案できる仕組みが想定されている。ただし、売却益は国家債務削減にのみ充当されることが前提とされている。

法案には、「税金で新規購入する」のではなく、「既に保有しているBTCを長期保有し、将来的な国家資産として管理する」という現実路線が色濃く表れている。

実際、2025年にシンシア・ルミス上院議員(共和党・ワイオミング)が主導した「BITCOIN Act」は、最大100万BTCの取得構想を掲げていた。一方、報道によれば、今回のARMAは具体的な取得数量を示していない。法案は「予算中立(Budget Neutral)」を重視しており、新たな税負担を伴う大規模取得には慎重な姿勢を取っているとみられる。

今回の法案で注目されるのは、暗号資産政策が「周辺的テーマ」から、「国家戦略」や「財政戦略」の文脈へ接続され始めている点だ。共同筆頭提出者に穏健派民主党議員のゴールデン氏が参加したことで、暗号資産政策が一部で超党派化し始めている兆候も見える。背景には、財政赤字や米国債問題への関心に加え、中国との技術・金融覇権競争を意識した「デジタル資産の国家戦略化」があるとも読める。

市場への影響としては、まず「政府売却リスク」の後退が挙げられる。

これまで米政府保有BTCは、いつでも売却され得る不確定な供給源として意識されてきた。しかし、長期保有と売却制限が制度化されれば、市場にとっては供給予測の不確実性が低下する可能性がある。

また、法律上でBTCが特別扱いされることで、暗号資産市場内部でも「BTCは基軸資産、アルトコインはリスク資産」という制度的な区別が強まる可能性がある。

さらに、BTCが「国家準備資産候補」として正式に議論されること自体が、伝統金融機関や機関投資家にとって一定の意味を持つ。ヘッジファンドや資産運用会社にとっては、「国家が長期保有を前提とする資産」という位置づけが加わることで、ポートフォリオへの組み入れを説明しやすくなる側面もある。

ベギッチ議員は、メディアの取材に「ビットコインは暗号資産クラスの“金”である」と強調しており、ビットコインは金(Gold)と並ぶ「地政学・インフレ耐性資産」というストーリーを、制度面から補強する動きとも解釈できる。

今後の焦点は、下院金融サービス委員会での扱いに移る。

委員会公聴会や採決日程が設定されれば、法案が単なる象徴法案に留まるのか、実際に審議入りするのかを測る最初の試金石となる。

一方で、議会では財政調整法案や外国情報監視法(FISA)、住宅関連法案など優先度の高い案件が並んでおり、夏季休会と秋の中間選挙を控えるスケジュール上の制約は大きい。

また、上院側で対応法案が提出されるかも重要な観測点となる。特に、「BITCOIN Act」を主導したシンシア・ルミス上院議員の動向は、今後の制度化の本気度を測る上で重要なシグナルとなりそうだ。