土曜日, 8月 8, 2026
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ヘグセスの陰で何が起きているのか——国防総省を「投資家」に変えるファインバーグ体制

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トランプ政権の国防政策をめぐり、奇妙な権力構造が浮かび上がっている。

表舞台に立つのは、ピート・ヘグセス国防長官だ。だが、その陰で国防総省の資本政策、人事、組織改革を動かしているとされるのが、国防副長官スティーブン・ファインバーグ氏である。

プライベートエクイティ大手サーベラスの共同創業者だったファインバーグ氏は2025年から国防副長官を務めているが、その顔が表に出ることはほとんどない。報道によれば、就任後の公の活動は限られ、記者会見、インタビュー、議会証言への出席もほとんど確認されていない。政府が公開した映像の一つも、実写ではなく、国防副長官を描いたアニメーションだったという。

姿を見せない実力者

今月、国防総省をめぐって一つの疑惑が浮上した。

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ワシントン・ポストは、事情を知る2人の話として、トランプ大統領がキャンプデービッドでヘグセス国防長官を弾薬備蓄の問題について叱責したと報じた。

イランでの軍事作戦によって弾薬の在庫が減少し、軍事的な選択肢が狭まっていることに、大統領が不満を示したという。報道によれば、ヘグセス氏は責任をファインバーグ国防副長官に転嫁したとされる。

なお、ホワイトハウスと国防総省は、会話の存在も責任転嫁も全面的に否定している。トランプ大統領も、米国は「大量の」弾薬を保有していると反論している。

この報道の内容が事実かどうかは、現時点で確定していない。ただし、これを単なる責任論として片付けにくいのは、ファインバーグ氏の影響力について、以前から複数の証言が出ているためだ。

ガーディアン紙は6月、議会、国防総省、防衛産業の関係者への取材を通じ、政策決定におけるファインバーグ氏の影響力が、ヘグセス長官を「大きく凌駕」しているとの見方を紹介している。

「すべてがファインバーグを中心に回っている」(国防総省のベテラン職員)
「彼が関与していない案件はないと思う」(彼の動きに詳しい金融関係者)

ヘグセス長官は兵士と筋トレをする姿を公開し、記者会見で記者を罵倒し、SNSに頻繁に投稿する。副長官は顔も出さない。

防衛アナリストで元会計検査院職員のウィンスロー・ウィーラー氏は、両者の関係をこう表現した。
「ヘグセスがあのくだらないことをやっている分には構わない。自分の邪魔をせず、やりたいことができるならね」

ファインバーグ体制

権力構造の変化は、人事から裏付けられる。

彼は、34年にわたって率いたサーベラスの元同僚を次々と要職に配置している。

  • ジョージ・コリティデス氏は、サーベラスで勤務し、レミントンのCEOも務めた人物だ。現在は、経済防衛ユニット(EDU)の局長を務めるとともに、戦略資本室の投資委員会で副委員長を担っている。
  • デービッド・ローチ氏は、サーベラスのマネージング・ディレクターを経て、現在は戦略資本室(OSC)の責任者を務めている。
  • トマス・ラクサン氏は、CIAで勤務した後、サーベラスに移った人物で、現在は国防副長官の上級顧問を務めている。
  • ジョン・ギャラガー氏も、サーベラスのマネージング・ディレクターを経て、国防副長官の上級顧問兼次席補佐官に就いている。

つまり、ファインバーグ氏の周辺には、同氏とサーベラスで働いた経験を持つ人物が、経済防衛、戦略資本、国防副長官室という複数の中枢ポストに配置されている。

彼と働いた国防総省職員は、ガーディアン紙にこう語った。
「彼の頭の中では、最も適任なのは10年間自分のために働いてきた人間なんだ」

将官と経営者が予測可能なパターンで回転ドアを行き来する組織にあっても、この集中は異例だという。国防総省と仕事をする退役軍人はこう述べた。
「回転ドアは前にもあった。頻繁に。だが一社の手にこれだけ集中したことはない。これは違う。ひとつの組織のコアチームだ」

従来の国防総省では、軍人、官僚、主要防衛企業、議会スタッフなどが複雑に交差してきた。そこに、企業買収、資本政策、経営再建を手がけてきたPE業界の人材が加わり、国防総省の意思決定そのものに、金融の論理が入り込む余地が広がっている。

兵器を買う官庁から、生産能力に投資する官庁へ

ファインバーグ体制の変化を象徴するのが、Office of Strategic Capital(OSC)だ。

OSCを設置したのは、バイデン政権のオースティン国防長官である。もともとの目的は、先端材料、次世代バイオテクノロジー、量子科学などの重要技術について、研究室から量産に移行する際の資金不足を埋めることだった。

業界で「死の谷」と呼ばれるこの区間では、技術が実用化に近づいていても、工場建設や設備投資に必要な資金を民間だけで調達することが難しい。そこでOSCは、政府が補助金や調達契約を直接配分するのではなく、融資や融資保証を使って民間資本を「呼び込む」ことを目指した。公式の投資戦略も、重要技術を初期段階から量産段階まで拡大するため、民間資本との連携を重視している。

ファインバーグ体制の下では、この機能の重心がさらに移りつつある。民間資本を呼び込むだけでなく、政府自身が優先株、ワラント、融資などを通じて、企業の資本構成や生産能力に直接関与する方向である。

それは実際の案件に象徴されている。

  • MP Materials ― 約4億ドルの優先株とワラントで持分約15%、これに1億5,000万ドルの融資と長期の引き取り契約を組み合わせた
  • Vulcan Elements ― 戦略資本室が6億2,000万ドルの融資。同社はドナルド・トランプ・ジュニア氏が関わるVCが一部を保有する
  • Kopin Corp ― 別の基金から1,500万ドル。トランプ・ジュニア氏が一部保有するUnusual Machinesと関連する
  • L3Harris ― 10億ドルの転換優先株とワラント。固体ロケットモーターを製造する新会社の設立に伴い、米政府はその一部所有者になった

規模も拡大している。2027年度予算案で、国防総省は戦略資本融資プログラムに200億ドル超を要求している。2025年初めの9億8,400万ドルの、20倍以上である。

米政府の出資企業一覧はこちら

「整合せよ、さもなくば消える」

2025年11月の調達改革に関するイベントで、ファインバーグ副長官は防衛産業に対し、国防総省とともに変わる意思のある請負業者は成長し、変化に抵抗する企業は消えるという趣旨の警告を発したと報じられている

この発言だけなら、納期、コスト、生産性を改善せよという督励とも読める。しかし、経済防衛ユニットのコリティデス氏がLinkedInで拡散した鉱山会社幹部の投稿は、この言葉に別の意味を与えた。

投稿は、ワシントンを「有限責任組合員としての国家」と呼び、主権的な後ろ盾そのものが競争変数になったと述べていた。連邦政府の出資や債務保証を受けた企業は、オフテイク契約、許認可支援、後続の機関投資家資金を得やすくなる。一方、国家との整合性を欠くプロジェクトは、鉱床の品位や法域にかかわらず、より高いハードルに直面するという。

これは国防総省の公式方針ではなく、政府支援を受ける側の企業幹部による評価である。

しかし、その投稿を投資判断に関わる政府高官が拡散したことには意味がある。国家との整合性が、技術力、コスト競争力、資源の品位と並ぶ競争変数になる可能性を、政府側の人物が認めたように受け取られるからだ。

「死の谷」を埋めるために民間資本を呼び込むという2022年の設計思想は、政府が企業の資本構成や市場アクセスを直接左右する仕組みへと拡張されつつある。

3年で2,000億ドル、ウォール街から30人

国防総省の「投資機関化」を象徴するもう一つの事例は、ウォール街からの人材採用である。

セマフォーは3月、国防総省がプライベートエクイティに詳しい投資銀行家らを集め、3年間で2,000億ドル規模の防衛関連案件を扱うチームを構築していると報じた。ロイターによれば、チームは30人規模で、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、JPモルガン、バンク・オブ・アメリカが主要な採用候補とされている。

このチームは、政府資金を直接投資するだけの部門ではない。採用資料によれば、プライベートエクイティに防衛関連案件を紹介し、国家安全保障上重要な取引について助言し、融資を組成する「スポンサー・カバレッジ」部門として設計されている。

一方、同資料では、候補者に対して「国に貢献する」機会や、「多くの投資家がキャリア全体で動かすよりも多くの資本を扱える」機会、さらには政府高官への特別なアクセスや、特権的な情報の流れも採用の魅力として示されていたという。

採用は恒久的な公務員への転職ではなく、2〜3年程度の出向型プログラムとして設計されているとされる。

もしこの内容が正確であれば、回転ドアは単なる副作用ではない。政府で得た人脈、情報、案件形成の経験を、退職後の民間投資活動につなげる構造が、採用段階から組み込まれていることになる。

ファインバーグ体制が市場に示すもの

国防総省は、兵器を買う官庁から、企業に資本を配分する官庁へと変わろうとしている。これは、どの企業を成長させ、どの生産能力を残すかを、政府自身が決める立場になることを意味する。

そこには合理性がある。民間資本だけでは工場を建設できない企業に政府が資金を入れ、さらに長期の需要を保証すれば、防衛産業の生産能力を中長期的に引き上げられる可能性がある。

一方で、市場競争を歪めるリスクもある。

政府の出資や融資を受けた企業は、資金調達でも受注でも有利になる。技術力や価格だけでなく、「国家との距離」が競争力を左右する市場になりかねない。

上院軍事委員会の2027年度国防権限法案には、OSCに一定の企業の株式を取得する権限を与える内容が盛り込まれている。一方、同委員会の報告書は、こうした手段について市場を歪めたり、腐敗を招いたりする可能性があると認め、国防総省が過去の株式取得について議会に十分な説明をしてこなかったと指摘している。

利益相反への懸念も消えない。サーベラス出身者が、国防総省の資本配分に関わる部門や国防副長官室に集中し、ファインバーグ氏がかつて率いたサーベラスが保有、または過去に関与した企業の受注も報じられている。コリティデス氏は就任前後に特別買収目的会社(SPAC)の取締役に就任しており、その兼務も一部で問題視されている。

さらに、ファインバーグ体制の成否は、目下の弾薬不足を解消できるかどうかにもかかっている。

報道では、イランでの作戦によってトマホーク、パトリオット、THAAD、ATACMSなどの弾薬が大量に使用され、特定の兵器の備蓄が大幅に減少したとされている。ホワイトハウスは不足を否定しているが、弾薬の生産能力と補充期間が米国の軍事作戦を制約する可能性は、以前から指摘されてきた。

政府が企業の株式を取得しても、工場はすぐには完成しない。熟練労働者、原材料、認証、生産設備、サプライヤーが一夜にして増えるわけでもない。重要な弾薬の生産には、契約締結後も数年を要する場合がある。

株式を取得しても、弾はすぐには増えない。国家の資金と権限を使って、必要な兵器を、必要な時期までに、必要な数量で生産できるのか。そして、それを市場の競争原理を損なわずに達成できるのか。ファインバーグ体制の真価が問われようとしている。