月曜日, 4月 6, 2026

「帝国の終焉」と退役軍人——MAGA内部で起きている変化

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Eric Rosenwald/shutterstock

今週、右派YouTubeで最も際立った伸びを示したのは、元Navy SEALでCIA契約工作員の経歴を持つショーン・ライアンだ。

ライアンのチャンネルは登録者数を4万人増やし607万人に達し、週間視聴数は3,500万回を記録した。タッカー・カールソン(週間視聴数1,800万回、登録者+3万人)やメーガン・ケリー(週間視聴数1,200万回)を上回る今週最大の数字だ。

ショーン・ライアン——退役軍人コミュニティの「声」

ライアンは2024年大統領選でトランプを支持したが、エプスタイン関連資料の扱いをめぐりトランプ批判に転じ、投票を後悔していると公言している。

イラン戦に関しては、今月国家対テロセンター長官を辞任したジョー・ケントをゲストに招き(SRS #291、3月26日)、イラン戦開戦の背景にイスラエルの圧力があったとする見方を共有した。ケントは番組内で「我々がイランを攻撃したのはイスラエルが攻撃するからであり、ルビオ国務長官自身もそう述べている」と語り、ライアンも理解を示した。

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今週はイースター(復活祭)を前に、新約聖書研究者のジェレマイア・ジョンストン博士を招き、聖骸布およびイエス・キリストの復活の真偽について論じる回も配信した。幅広いトピックを扱いながら、退役軍人コミュニティへのリーチを着実に広げている。

カールソン——「アメリカ帝国の終焉」

タッカー・カールソンは前週から登録者数を3万人増やし553万人に。週間視聴数は1,800万回を数えた。

直近の配信では、米国はホルムズ海峡を力で開放できるという「誤った信念」とともに開戦に踏み切ったと批判。イランの攻撃にさらされたGCC諸国を含む世界は、米国が中東の問題を解決し秩序を回復する能力を持たないことを認識したと主張した。

4月1日のトランプ大統領のテレビ演説については、ホルムズ海峡をコントロールできないという能力の限界を認めたものだと解釈し、イラン戦で目の当たりにしているのは「われわれの知るアメリカ帝国の終焉だ」と断言。その上で米国は西半球にのみ目を向けるべきとの論を展開した。

ケリー——イスラエル責任論を継続

メーガン・ケリーは登録者数419万人で横ばいだったが、週間視聴数1,200万回の高水準を維持した。

NBC司会サバンナ・ガスリーの母親失踪事件、今月解任されたノーム国土安全保障長官の夫をめぐるスキャンダルなど幅広いトピックを扱った。ボンディ司法長官の解任を「レジームチェンジ」と皮肉り、一部で憶測が流れたガバード国家情報長官の解任には反対の姿勢を示すなど、政権に苦言を呈した。

元CIA工作員ジョン・キリアコウをゲストに招き、イスラエルがCIA工作員をリクルートする方法や米議会への影響力について踏み込んだ議論を展開した。会話の中でケリーは、イスラエルのロビー活動や、メディアのイスラエル支持・反ムスリムの既定路線を「マニピュレーション」と呼び、「我々にはそれがわかりはじめている」と語った。

オーウェンズ——陰謀論的コンテンツで高エンゲージメント継続

キャンディス・オーウェンズは前週から登録者数を1万人増やし595万人に。視聴数は1,150万回を超えた。

今週配信の回ではチャーリー・カーク暗殺をめぐるイスラエルまたは他国の関与説を継続した。また、カークが生前、妻エリカに対してターニングポイントUSAのCEOの座を引き継ぐと語ったとされるビデオの存在について疑問を呈した。陰謀論的な内容が批判を集める一方で、高いエンゲージメントは続いている。

シャピーロ——下降トレンド続く

親イスラエルの立場からトランプおよびイラン戦を擁護するベン・シャピーロは、下降傾向が続いている。前週比1万人減の707万人となり、週間視聴数は445万回にとどまった。

ローガン——登録者横ばいも視聴数は1,000万回

ジョー・ローガンは登録者2,080万人で前週から変化なしだったが、週間視聴数は約1,000万回を記録した。シャピーロの445万回を大きく上回り、オーウェンズの1,150万回に迫る水準だ。登録者の伸びは止まっているものの、コンテンツへの関与度は依然として高い。彼も2024年でトランプ支持に回ったが、その後距離を置き始め、前週はMAGAスローガンを強く批判(「最悪だ。結局はバカの集まりに」)し、ネットの議論を招いた。

【今週の主要チャンネル動向(4月第1週)】

チャンネル名    登録者数  前週比  週間視聴数
──────────────────────────────────────────
ショーン・ライアン  607万人  +4万人  3,500万回
タッカー・カールソン 553万人  +3万人  1,800万回
メーガン・ケリー    419万人  ±0   1,200万回
キャンディス・オーウェンズ 595万人  +1万人  1,150万回
ジョー・ローガン   2,080万人 ±0   1,000万回
ベン・シャピーロ   707万人  −1万人 445万回

ライアンの台頭が示すもの

右派言論空間は、テレビコメンテーター出身や政治論客を中心に語られることが多い。ライアンは退役軍人であり、現場経験を持つ人物だ。非介入のスタンスを明確にする彼の声に、退役軍人・現役軍人コミュニティというもう一つの基盤が共鳴している可能性がある。

一方で、カールソンおよびケリーの高水準の視聴数、シャピーロの低迷は、ここ最近のトレンドが一過性でないことを示唆する。戦闘の長期化や地上軍投入の観測が高まれば、こうした論調の影響力はさらに強まる可能性がある。

これらのインフルエンサーは、トランプ2.0の当選を支えた「MAGAのメディアエコシステム」を構成してきた。彼らはこれまで、フォロワーにトランプ支持の正当性を補強し、懐疑心を吸収する「調整弁」として機能していた。

しかし今週の動きが示すのは、その機能に変化が生じつつあるという点だ。

一部はトランプと距離を取り、イラン戦をめぐる解釈も分かれ始めている。結果として、政権のメッセージはこれまでのように一方向には収束せず、受け手側で再解釈される余地が広がっている。

この変化が一時的なノイズにとどまるのか、それともMAGAの重心移動につながるのか。今週はトランプがイランに突きつけた「火曜日午後8時の期限」——ホルムズ海峡を開放しなければ発電所と橋を攻撃するという最後通牒(月曜日から延長)——の行方と、それを受けた各インフルエンサーの解釈の分岐に注目だ。

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