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「民主主義を損なう右翼組織」AOC 親イスラエルロビーAIPACを批判――NJ特別選で左派躍進

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Ron Adar/shutterstock

左派の有力議員、アレクサンドリア・オカシオ・コルテス(AOC)下院議員(民主党、ニューヨーク)は、5日に行われたニュージャージー州の下院特別選・民主党予備選をめぐり、親イスラエルロビーAIPAC(米イスラエル公共問題委員会)を「民主主義を損なう右翼組織」と厳しく非難した。穏健派、進歩派を問わず、民主党員は「AIPACは民主党の味方ではない」ことに気づくべきだと訴えている。

AOCはX(旧ツイッター)への投稿で次のように述べた。

「民主党員は気づき始めるべきだ。穏健派であれ進歩派であれ、AIPACは我々の味方ではない。彼らは1月6日の議事堂襲撃者を支持する一方、自国のLeahy法を守るべきだとほのめかした議員を、どれほど実績があろうと敵視する。AIPACは民主主義を弱体化させる右翼組織だ。思想的多様性を一切許容せず、当選者を圧力によって、有権者代表としての責任や多数のアメリカ人の見解に反する立場へと追い込む。多くのアメリカ人は、ガザで起きている事態を米国の価値観への侮辱と捉え、納税者の資金でそれを永続させる武器供与を望んでいない。AIPACもそれを理解している。だからこそ、政治広告では本題に触れず、曖昧な名称のスーパーPACを使って自らの政治的使命を隠しているのだ」


AIPACはワシントンで最も影響力のある親イスラエル・ロビー団体の一つで、数百万人規模の支持者を抱え、議会へのロビー活動や政治献金を通じて米イスラエル関係の強化を推進している。毎年300〜400億ドル規模の対イスラエル軍事援助を支持し、2024年選挙では関連PACが1億ドル超を投じたとされる。

AOCの発言の背景には、ニュージャージー州第11区で行われた下院特別選挙の予備選(5日投開票)で起きた”大番狂わせ”がある。11人が立候補した同選挙では、最有力と目されていたトム・マリノウスキー元下院議員が僅差で2位となり、ほぼ無名だった進歩派活動家アナリリア・メヒアが首位に躍り出た(結果は未確定で、郵便投票の集計が続いている)。

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この結果については、AIPACと関係の深いスーパーPAC「Unite Democracy Project(UDP)」が支出戦略を誤り、自滅を招いたとの見方が出ている。

穏健派と位置づけられてきたマリノウスキーは、長年イスラエル支持の立場を取ってきたが、イスラエルへの軍事支援に条件を付ける可能性を示唆したことで、イスラエルロビーの反発を招いた。UDPは数百万ドルを投じ、反マリノウスキー広告を大量に展開した。

AOCが指摘するように、これらの広告ではイスラエル問題にはほとんど触れられず、代わりにマリノウスキーが在任中にトランプによる移民・関税執行局(ICE)への予算増額を支持した点や、パンデミック期に「COVID関連株で利益を得た」とする疑惑を強調し、「腐敗した政治家」と描く内容が前面に出された。

一方、メヒアについて、地元メディアは「誰のビンゴカードにも載っていなかった無名の存在が、突然現れて地域の政治を揺さぶった」と驚きをもって報じている。ニューヨーク・タイムズによれば、予備選の初期段階で彼女の名前を知っていた有権者は約5%に過ぎなかったという。

外部団体による広告支出は21万5,000ドルにとどまり、反マリノウスキー広告の190万ドル、親イスラエル系候補タヘシャ・ウェイを支援する260万ドルとは大きな差があった。メヒアは選挙戦でICEの解体、国民皆保険、超富裕層への課税強化などを掲げ、バーニー・サンダース、AOCといった全国的な進歩派政治家や、地元ニューアーク市長らの支持を得た。

結果はなお確定しておらず、マリノウスキー陣営では郵便投票の署名確認など再評価を求める考えも浮上しているという。

今回の選挙については、「親イスラエル・ロビーの自滅」と皮肉る見方がある一方、NBCニュースは、民主党有権者の間でイスラエル政策への批判が強まっている点に注目する。

AP-NORCが昨年9月に実施した世論調査では、民主党支持者の71%が、2023年10月7日のハマスによる攻撃後のイスラエルのガザ対応を「行き過ぎ」と評価しており、前年の63%から上昇した。イスラエルへの軍事援助を米外交政策上「極めて重要」または「非常に重要」と答えた民主党員はわずか15%にとどまっている。

イスラエルの行動を「ジェノサイド」と呼ぶ表現が広がるなど、民主党内でも認識の変化が進む。現在、61人の民主党議員が、バンカーバスター爆弾など特定兵器の対イスラエル供与を禁じる法案「Block the Bombs」の共同提案者に名を連ねている。

一方で、フェアリー・ディキンソン大学の政治学者ダン・カシーノ教授は地元紙の取材に対し、反ICEのセンチメントが民主党支持層にとって重要な投票動機になっていると指摘。「今回の選挙では、大統領選並みの投票率が見られる。共和党はこの熱量に追いつけていない」と語った。

SNS上や一部インフルエンサーの間では、同選挙区の人口構成(高学歴・高所得層が多い郊外地区)を踏まえ、「民主党版ティーパーティーの始まり」を期待するも上がっている。