『法の支配』終わりの始まり?トランプの政敵、元FBI長官の起訴に衝撃走る

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mark reinstein / Shutterstock.com

トランプの宿敵、ジェームズ・コミー元FBI長官の起訴されたことで、かつてホワイトハウスのリーガルチームに加わっていた弁護士タイ・コブが、「法の支配の終焉」になるかどうかの帰路に立たされていると警告した。

CNNのインタビューに応じたコブは、米政府による「報復的訴追、恣意的な訴追であることは明らか」と断言。「大統領が史上初めて、敵対者を起訴するよう司法長官に命じた」と非難した。

一方、訴訟はコミーに有利であると指摘。「公に知られていること、この事件が異例であることを踏まえると、非常に根拠の弱い訴訟だと思う」と語った。

「これは国家全体に問題をもたらす」と改めて懸念を示し、「アメリカにおける法の支配の終焉か、あるいは現大統領と司法長官による権威主義的な行動に抵抗する転換点になるかのどちらかだ」と警鐘を鳴らした。

司法省によれば、コミーは2016年大統領選でのロシア介入を調べた「クロスファイア・ハリケーン」捜査をめぐり、情報漏洩を承認したにもかかわらず、2020年の上院公聴会で事実を否定したとされ、大陪審によって虚偽陳述と議会妨害で起訴が認められた。起訴のタイミングについては、時効が迫っていたことが影響した可能性がある。

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クロスファイア・ハリケーンは、2016年大統領選のロシアの介入およびトランプ陣営とのつながりに関する捜査で、2016年7月から翌年5月にかけて実施された。トランプはコミーを2017年5月に解任するが、この背景にはコミーがトランプ個人が捜査対象ではないと公に明言しなかったこと、個人的な忠誠を誓わず、当時国家安全保障問題担当大統領補佐官だったマイケル・フリンの捜査中止を拒否したことへの不満があったとされる。コミーの解任はロシアの大統領選介入疑惑を一層深める結果となり、ロバート・モラー特別検察官率いるロシア捜査へと発展した。

時効が迫る中で、トランプは公に訴追を促していた。

先週、ボンディ司法長官に宛てたTruth Socialの投稿で、政敵3人(コミー、アダム・シフ下院議員、ニューヨークのレティシア・ジェームズ司法長官)の名を挙げ、「彼らはとんでもなく罪深いにも関わらず何もなされない」と不満を爆発。「彼らは私を二度も弾劾し、何の理由もなく起訴した。今こそ正義が執行されなければならない」と訴えた。

これと並行して、ホワイトハウスはコミーの件を担当していたバージニア州東部地区のエリック・S・シーバート暫定連邦検事を解任、代わりにトランプの元個人弁護士、リンジー・ハリガンを後任に据えた。

ワシントンポスト紙によるとシーバートは起訴には証拠不十分だと結論づけており、検事の交代劇の裏に、政権によるシーハートに対する強い辞任の圧力と、ハリガンなら「物事をスムーズに進められる」というトランプの一声があったと報じている。

ハリガンは36歳で、経歴もやや異色。英紙インディペンデントによると、2010年にミス・コロラド・コンテストで3位入賞を果たしている。マイアミ大ロースクールで法務博士号を取得した後、南フロリダの法律事務所で保険会社がらみの訴訟を主に担当した。2021年にトランプとゴルフ場で出会い、そのまま弁護団に招かれたという。シーバートが過去675件の連邦訴訟を手がけたのに対し、彼女の経験はわずか3件。経験の差は大きい。

トランプの周囲には高身長でブロンドのFOXニュースタイプの女性が多いとされるが、ハリガンもその一人。伝記作家マイケル・ウォルフによれば、トランプはハリガンを含む女性スタッフを「チャーリーズ・エンジェル」と呼んでいたこともあったという。